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ソ連軍、戦車隊員。
戦車はダメだが・・・オレは生きてる。
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「う、う、うっ。」「セルゲーノフ大丈夫か?」
「あ、あ、ルィチェンコか、生きてるよ。」
もう、動かなくなったT26B型から・・・這い出す二人だ。
車長は・・・とっくに逃げ出して・・・操縦手もハッチが開いたままだ。
砲手と装填手の二人が・・・やっと、戦車の砲塔から這い出る。
周りには数両のT26B型がエンコしていた。
そのエンコした車台から、取り残された戦車兵らが・・・這い出てきたようだ。
敵の日本軍は、なぜか履帯や車輪を狙って砲撃をかましたようだ。
装甲部分はあえて避けて、戦車をエンコさせるのが作戦だったようである。
たしかに、効果的な作戦だ。
しかし、履帯や車輪を狙うのは・・・はずれやすいのだが・・・
確実に戦車を停めることができるのだ。
その、おかげで助かった二人だった。
すでに、戦線は移動して・・・あたりには戦う戦車はいない。
砲塔の主砲は撃てなくも無いが・・・敵がいないんじゃあ意味がないのだ。
動かなくなった戦車は・・・クズ鉄にしか使えないのだ。
「どうする。」「ここは、満州だ。」
「馬賊に見つかると、やばいぞ。」「しかし、どう逃げればいいんだ。」
自然と、ソ連兵らは集団をつくっていく。
満州馬賊が襲ってきたら、一人では戦えないからだ。
ピストルは各自持参してるから、馬賊くらいなら・・・なんとか防げそうだ。
コンパスを持ってるヤツがいたので、ソ連国境を全員で目指すこととなる。
しかし、見渡す限りの草原だ。
180度の地平線のパノラマである。
各自の足で歩かなければならないのである。
シベリア基地へ左遷されて・・・もう、これ以上の悲劇は無いと・・・
いや、満州からの逃避行があったのである。
車長などは、最初に逃げ出して・・・現在、ここには幹部がいなかった。
逃避行してる兵らの中では、伍長が1人で、あとは上等兵から2等兵までであった。
「セルゲーノフ、おまえは伍長だから指揮しろよ。」と、ルイチェンコが・・・
「くそっ、伍長なんて糞のフタにもなんないんだぞ。」と、悪たれるセルゲーノフだ。
指揮といっても、ソ連領目指して歩くだけだ。
ところで、いの一番に逃げ出した車長らは・・・まだ、付近に日本軍がいたから・・・
捕虜となったが・・・勝敗が決していない。
それで、工兵らのトラックに拿捕されて乗せられていたのだった。
まあ、トラックでソ連領へポイだろうと・・・踏んでいたソ連戦車兵らである。
なんせ、以前の加藤戦車隊が苦労してソ連領まで運んだことは記憶にあるのである。
捕虜の中に数人いたケガ人は、軽傷ばかりなので消毒に包帯で・・・トラックへである。
治療はソ連軍でやってもらいたい日本軍なのである。
重傷なら・・別なのだが。
そして、今回の紛争は・・・ソ連軍の隊長が敗北を認めて投降してきたため・・・終了となったのである。
ほとんどの戦車が動かなくなれば・・・投降するしかないからだ。
それに、日本軍が国際法を順守することも投降を速めた理由であった。
単なる紛争事案だから・・・命を賭けるほどの気概はソ連軍側も日本軍も無いのである。
満州国の騎馬隊は・・・そうでもないが・・・
全滅した騎馬隊の恨みはカンタンには消えない。
「もう、そろそろ河が見えてきても。」「いや、地面ばかりしか見えないぞ。」と、歩きで逃避行してるソ連兵らである。
中には、足を引きずるモノも多い。
水筒の水も少なくなって・・・このままでは、野垂れ死にか・・・っ!
兵らが・・・あきらめを・・・
「おい、なんか聞こえるぞ。」「待て、静かにしろっ。」
「おい、エンジンの音だぞ。」
「南からだな。」「まさか、日本軍の追撃か。」
もう、歩きたくも無い兵らは、地面へしゃがんで・・・「殺すなり、煮るなり、どうでもしろ。」と、屁垂れた兵らである。
「おい、トラックが3台くるぞ。」
「どうやら、追撃部隊ではないようだな。」
トラックに武装なんてない時代である。
やがて、トラックは逃避行の一行を見つけて近づいてきた。
なんと、荷台にはソ連兵が・・・包帯をした兵も居るようだ。
トラックの運転席から武装した日本兵が降りてきた。
「武器を捨てろ。」と、ロシア語で叫ぶ。
あわてて、ピストルを地面へ捨てる。
そして、両手を挙げた。
降伏した兵を日本兵は撃たないはずだ。
やがて、3台のトラックへ逃避行の一行は・・・加わったのである。
もちろん、階級と氏名は日本軍へ伝えてある。
それが、ハーグ陸戦条約の約束事なのである。
捕虜交換で確認する事項だからだ。
荷台にはイワン司令官から・・・最初に遁走した車長らの面々が・・・
まあ、罰の悪そうな顔だが・・・
セルゲーノフの車長のアレクサンドルが、「伍長、まさか生きてたなんて、よかった。」と、言い訳を・・・
まあ、お互いに日本軍の虜囚である。
言い訳しても始まらないのだ。
しかし、ヤケに多いぞ・・・寿司詰めだ。
おそらく、日本軍が給油のタンクを降ろしてカラにしたトラックだろうが・・・
やがて、国境の河へ・・・そこには、日本軍の渡しフネが・・・平底のフネだ。
おそらく、戦車を載せて河を渡るためのヤツだろう・・・
でかい平底フネだから、1艘で全員が乗れたのだ。
フネの後部に動力があり、ジーゼルエンジンが載っているようだ。
「全員、ダイハツへ乗り込め。」と、ロシア語で叫ぶ日本兵だ。
この渡しフネはダイハツというらしい。
日本軍が上陸用舟艇を考案してるとは・・・
たしか、英軍が試作したと聞いたが・・・
このダイハツは・・・すばらしいフネだ。(平底で、前部が渡り板として開くのだ。)
ソ連軍にも・・・欲しいフネだ。
やがて、捕虜を乗せたダイハツはソ連側へと、捕虜を運んでいくのである。
「あ、あ、ルィチェンコか、生きてるよ。」
もう、動かなくなったT26B型から・・・這い出す二人だ。
車長は・・・とっくに逃げ出して・・・操縦手もハッチが開いたままだ。
砲手と装填手の二人が・・・やっと、戦車の砲塔から這い出る。
周りには数両のT26B型がエンコしていた。
そのエンコした車台から、取り残された戦車兵らが・・・這い出てきたようだ。
敵の日本軍は、なぜか履帯や車輪を狙って砲撃をかましたようだ。
装甲部分はあえて避けて、戦車をエンコさせるのが作戦だったようである。
たしかに、効果的な作戦だ。
しかし、履帯や車輪を狙うのは・・・はずれやすいのだが・・・
確実に戦車を停めることができるのだ。
その、おかげで助かった二人だった。
すでに、戦線は移動して・・・あたりには戦う戦車はいない。
砲塔の主砲は撃てなくも無いが・・・敵がいないんじゃあ意味がないのだ。
動かなくなった戦車は・・・クズ鉄にしか使えないのだ。
「どうする。」「ここは、満州だ。」
「馬賊に見つかると、やばいぞ。」「しかし、どう逃げればいいんだ。」
自然と、ソ連兵らは集団をつくっていく。
満州馬賊が襲ってきたら、一人では戦えないからだ。
ピストルは各自持参してるから、馬賊くらいなら・・・なんとか防げそうだ。
コンパスを持ってるヤツがいたので、ソ連国境を全員で目指すこととなる。
しかし、見渡す限りの草原だ。
180度の地平線のパノラマである。
各自の足で歩かなければならないのである。
シベリア基地へ左遷されて・・・もう、これ以上の悲劇は無いと・・・
いや、満州からの逃避行があったのである。
車長などは、最初に逃げ出して・・・現在、ここには幹部がいなかった。
逃避行してる兵らの中では、伍長が1人で、あとは上等兵から2等兵までであった。
「セルゲーノフ、おまえは伍長だから指揮しろよ。」と、ルイチェンコが・・・
「くそっ、伍長なんて糞のフタにもなんないんだぞ。」と、悪たれるセルゲーノフだ。
指揮といっても、ソ連領目指して歩くだけだ。
ところで、いの一番に逃げ出した車長らは・・・まだ、付近に日本軍がいたから・・・
捕虜となったが・・・勝敗が決していない。
それで、工兵らのトラックに拿捕されて乗せられていたのだった。
まあ、トラックでソ連領へポイだろうと・・・踏んでいたソ連戦車兵らである。
なんせ、以前の加藤戦車隊が苦労してソ連領まで運んだことは記憶にあるのである。
捕虜の中に数人いたケガ人は、軽傷ばかりなので消毒に包帯で・・・トラックへである。
治療はソ連軍でやってもらいたい日本軍なのである。
重傷なら・・別なのだが。
そして、今回の紛争は・・・ソ連軍の隊長が敗北を認めて投降してきたため・・・終了となったのである。
ほとんどの戦車が動かなくなれば・・・投降するしかないからだ。
それに、日本軍が国際法を順守することも投降を速めた理由であった。
単なる紛争事案だから・・・命を賭けるほどの気概はソ連軍側も日本軍も無いのである。
満州国の騎馬隊は・・・そうでもないが・・・
全滅した騎馬隊の恨みはカンタンには消えない。
「もう、そろそろ河が見えてきても。」「いや、地面ばかりしか見えないぞ。」と、歩きで逃避行してるソ連兵らである。
中には、足を引きずるモノも多い。
水筒の水も少なくなって・・・このままでは、野垂れ死にか・・・っ!
兵らが・・・あきらめを・・・
「おい、なんか聞こえるぞ。」「待て、静かにしろっ。」
「おい、エンジンの音だぞ。」
「南からだな。」「まさか、日本軍の追撃か。」
もう、歩きたくも無い兵らは、地面へしゃがんで・・・「殺すなり、煮るなり、どうでもしろ。」と、屁垂れた兵らである。
「おい、トラックが3台くるぞ。」
「どうやら、追撃部隊ではないようだな。」
トラックに武装なんてない時代である。
やがて、トラックは逃避行の一行を見つけて近づいてきた。
なんと、荷台にはソ連兵が・・・包帯をした兵も居るようだ。
トラックの運転席から武装した日本兵が降りてきた。
「武器を捨てろ。」と、ロシア語で叫ぶ。
あわてて、ピストルを地面へ捨てる。
そして、両手を挙げた。
降伏した兵を日本兵は撃たないはずだ。
やがて、3台のトラックへ逃避行の一行は・・・加わったのである。
もちろん、階級と氏名は日本軍へ伝えてある。
それが、ハーグ陸戦条約の約束事なのである。
捕虜交換で確認する事項だからだ。
荷台にはイワン司令官から・・・最初に遁走した車長らの面々が・・・
まあ、罰の悪そうな顔だが・・・
セルゲーノフの車長のアレクサンドルが、「伍長、まさか生きてたなんて、よかった。」と、言い訳を・・・
まあ、お互いに日本軍の虜囚である。
言い訳しても始まらないのだ。
しかし、ヤケに多いぞ・・・寿司詰めだ。
おそらく、日本軍が給油のタンクを降ろしてカラにしたトラックだろうが・・・
やがて、国境の河へ・・・そこには、日本軍の渡しフネが・・・平底のフネだ。
おそらく、戦車を載せて河を渡るためのヤツだろう・・・
でかい平底フネだから、1艘で全員が乗れたのだ。
フネの後部に動力があり、ジーゼルエンジンが載っているようだ。
「全員、ダイハツへ乗り込め。」と、ロシア語で叫ぶ日本兵だ。
この渡しフネはダイハツというらしい。
日本軍が上陸用舟艇を考案してるとは・・・
たしか、英軍が試作したと聞いたが・・・
このダイハツは・・・すばらしいフネだ。(平底で、前部が渡り板として開くのだ。)
ソ連軍にも・・・欲しいフネだ。
やがて、捕虜を乗せたダイハツはソ連側へと、捕虜を運んでいくのである。
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