ラジオコントロール飛行機物語。

ゆみすけ

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無線機の試作を先行するのだ。

飛行機ではないのだが・・・

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 「斉藤技師さん。」と、新人の大学出の技師がいう。
「さんは、やめてくれ。」と、「仲間うちは呼び捨てがイイ。」
 「なら、サイトウ。」
「ん、なんだよイヌズカ。」
 どうも、まだ慣れない犬塚君だ。
「入りたてで、こんなこと言いにくいのだが。」
 「いいから、言ってみろよ。」と、急かす。
「この電池仕様の真空管で携帯無線機を先に造ろう。」
 「おのなぁ、ここは模型飛行機製造会社だぞ。」と、苦言をいう斎藤君だ。
「しかし、現場の兵隊さんには、無線機が先にいるのだ。」と、いう犬塚君だ。
 「この電池管(勝手にデンチカンと名付けた犬塚君)があれば、偵察隊が苦労しなくて済む。」と、言うのだ。
「ここは、軍事兵器開発の会社だと思ってるのだ。」と、犬塚君だ。
 「いや、模型ひこうき・・・」
「飛行爆弾だぞ。」と、結論をいう犬塚君だ。
 「サイトウは無線操縦の飛行爆弾を計画してるのだろ。」「そうだ。」
「なら、先に無線機を完成させるべきだ。」と、犬塚君だ。
 「まだ、無線機はクルマへ載せて運ばないと無理な大きさだ。」
「だから、電池管を考えたのだ。」
 「現場は無線機が必要なんだよ。」と、繰り返す犬塚君だ。
斉藤は、「は、はぁ~ん。」と、思う。
 犬塚君は航空力学科ではない、電子工学科だ。
つまり、飛行機より無線機なのだ。
 しかし、無線操縦には電池管の受信機が不可欠だ。
ここは、学士の犬塚君に華をもたせるか・・・
 「そうか、わかったよ。」と、無線機開発を優先させることに賛同する斎藤君だ。

 「しかし、受信機は小型にするのだぞ。」「飛行爆弾へ使うからね。」
「あ、あ、わかってるよ。」と、回路図を設計する犬塚君だ。
 送信機は電波を出す大型の真空管が不可欠だ。
それで、どうしても送信機は大きさが限られるのだ。
 受信機は電波を受信できればイイから、それなりに小型化が可能なのである。
「電波の周波数は、どうすんだ。」と、斎藤君だ。
 「それだ、そこが肝心なのだ。」と、犬塚君だ。
「まだ、一般には使われていない電波帯を使うんだ。」と、偉そうな話だ。
 まあ、帝大で電波研究室に居たらしいから・・・だが。
「150キロサイクル帯だぞ。」
 「じゃあ、普通のラジオの10倍以上の周波数じゃないか。」
「そうだ、送信機のコイルや電解コンデンサーは造らないとならない。」
 「そして、出力真空管もだ。」
「この、オレが試作につかった807のナスビ真空管でも無理か。」と、斎藤君だ。
 「そうだよ、いまのヤツでは発振電波がつくれない。」
「つまり、送信管だな。」「そうだ。」
 「オレも少しは真空管を知ってるからね。」と、斎藤君だ。
なんせ、電池管は斉藤君の考案だ。
 「ううむ、やはり水晶発振子しか無理だな。」と、悩む犬塚君だ。
「水晶とは、周波数を安させる切れ端か。」「そうだよ。」
 水晶は電圧を掛けると一定の周波で振動する性質がある。
その振動を電波に応用するのだ。
 すると、周波数が狂わない送信機が出来上がるのだ。

 斎藤君は電池真空管をガラスで試作する。
そこは、模型エンジンを手作りするほどの技術はあるから・・・出来て当然である。
 「まあ、模型エンジンのキャブレターよりはカンタンだな。」と、上から目線で・・・
工作技術はワンコなんかには負けないぞ・・・ワンコとは、犬塚君のあだ名だ。
 「いかん、蓄電池が重すぎる。」と、10キロ近い重さの試作無線機だ。
「これを、5キロにすればランドセルにできそうだな。」
 ランドセルはオランダ軍の背嚢のことだ。
なぜ、重い鉛蓄電池なのか・・・それは、乾電池では起電力が少ないからだ。
 つまり、電池真空管を6本使っている。
その真空管のヌクロム線を温める電流が乾電池では、10分くらいなのだ。
 「10分しか使えない無線機ではな・・・」と、いうことだ。
「そうだ、受信機と送信機の真空管を切り替え式にして真空管を減らせばいいんじゃないか。」と、アイデアを出す斉藤君だ。
 そこは、電池真空管などの発明や改造を思い付くことには斎藤君は長けてるのである。
そこは、ワンコには負けない斉藤君だ。(学士が、なんぼのもんじゃい。)
 真空管は3個に、とても少なくなったのだ。
電池管も内部の電極を2か所へ増やして、1個で2個の役をさせるのだ。
 そう、複合電池真空管と命名したのである。
8キロの造電池が、4キロになる。
 そうなのだ、携帯無線機は蓄電池の重さが9割なのである。
鉛は重いのだ。
 蓄電池のケースも電解液が希硫酸だ。
それで、ガラスを金属へかぶせた特殊ケースだ。
 ガラスだけよりは軽いし、割れないからだ。
合成樹脂はアクリルかエボナイトくらいしか・・・
 プラスチックやナイロンは戦後からである。
「希硫酸は危険だな。」と、犬塚君だ。
 「しかし、なんともできないぞ。」と、いうが。
「そうだ、ゼリー状に半分固めれば・・・」「つまり、ゲル状ということか。」
 いろいろな物質を試したが・・・なかなか、うまくいかない。
希硫酸は鉄と結合して水素を発生させるのだ。
 その水素は爆発する危険があるのだ。
なんせ、蓄電池だ。 電気火花で、爆発の危険があるのだ。
 背中に無線機を・・・それが、爆発したら・・・通信兵なぞ、誰もやらなくなる。
「やはり鉛造電池はダメだな。」と、確信した斎藤、犬塚の両技師である。

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