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妊娠

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朝から気持ち悪くて、回復魔法をかけるが治らない。

「シア、どうしたの? 顔色が悪いよ」
「気持ち悪くて。回復魔法も効かないのです」

ディー様の顔色がサッと変わる。わたくしを横抱きにして執務室を出た。

「王宮医師を呼んでくれ」

ディー様が側近にそう言って、部屋までわたくしを運びベッドの上に寝かされる。

暫くすると王宮医師がやってきた。

魔法で体の検査をされる。

「おめでとうございます。ご懐妊です」

懐妊?……妊娠したってこと?

「シア!」

ディー様に抱きしめられる。

半年で懐妊できたことにホッと胸を撫で下ろす。

「体を大事にするんだぞ」
「はい」
「執務はもう手伝わなくていいからな」
「それではディー様が大変になります」
「大丈夫だ。今なら寝なくても平気だ」
「寝てくださいませ」

本当に寝ないで仕事しそうな勢いだわ。初めてのお子でないのに、ここまで喜ばれるなんて嬉しいわ。

「殿下、国王陛下や王妃殿下にもお知らせしますか?」
「安定期に入るまでは内密で頼む。特に王太子妃宮のものには耳に入れさせるな」

そうね。それがいいわ。

「シアは安定期に入るまでは絶対安静だ」

いいな?と念を押され頷いてしまった。ディー様の勢いに負けてしまったわ。何度も何度もベッドから出ないことを約束させられ、侍女にまで言いつけてからディー様は政務に戻った。

子供か……。王色だといいな。

ううん。わたくしの色でも大切にするわ。

それからの日々は退屈だった。

ベッドにいるのに本を読んでるだけで、心配される有様でしたわ。それでも本を読み続けたり刺繍をして過ごした。

「ディー様、刺繍したので良かったらお持ちください」

出来上がった刺繍をお渡ししたら感激された。

「初めてもらった。嬉しいよ」

こんなに喜んでくれるならば、もっと早く刺繍すれば良かったわ。でも初めてとはどういうことなんだろうか。婚約者がいれば渡すのは当然だし、王太子妃殿下だっていらっしゃるのに。セレスティア・ランナフ公爵夫人は刺繍すらお渡ししてなかったの?王太子妃殿下だって婚姻して6年よ? 何をしていらっしゃるのかしら?

女性が殿方に刺繍を渡すのはお慕いしてますという意味がある。

セレスティア・ランナフ公爵夫人は本当にディー様のことを少しも思ってなかったのね。それどころか侮っておいでだわ。

刺繍を貰えない殿方がどれほど情けないと思うのか知らないのね。

これからは、わたくしが沢山の刺繍をしてお渡しするわ。

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