大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

文字の大きさ
上 下
1,097 / 2,021
本編

魔法と炎

しおりを挟む
シエルから聞いた話だと、彼女が今使える魔法は四種類。
ひとつは炎を起こす火炎の魔法、これが今回は必須。
他はこの火炎の強化馬にあたる炎柱を起こす魔法。さらに強烈な突風を起こす風の魔法に、これの強化版にあたる風渦の魔法。他はメッセージとかが使えるらしいが、まぁ今回はいらないから省略。
シエル曰く「………ひ、より…かぜ、が、すき」との事だが、今回はこの森を焼き払うという事なので、どうしても火を使わせてもらおう。
手順は簡単。まずはシエルが使う魔法の魔法陣を描き、それに俺が血を流し込む。俺の血には魔力がこもっているので、魔石を使った魔法陣と同等の効果を発揮、これで魔法の威力が増加される。
あとはシエルが魔法を起動すれば──
「………ん」
シエルがひと睨みするだけで魔法陣が起動。
ボン!!と軽い爆発音がして、炎が波のように広がる。
「うおっ、凄ぇ!」
上手く動かない身体の代わりに、伸ばした髪で地面を這うように移動する。
「………んっ、ん。……んー、ん!」
枯木や枯葉のようなものはひとつも無いのに、炎はとんでもない勢いで広がっていく。一度広がり始めたそれは、今なお生い茂っている生木であるにも関わらず焼き尽くし、燃え広がり、己の糧としてさらに広がる。
一瞬こちらも呑み込まれるかと思ったが、シエルがコントロールしているらしく、俺の方には煙すら来ない。魔法って便利だな。
『……この火ってユーリアを焼かないのか?』
シャルがそんな心配をするが、問題は無い。
だってこれ、ユーリアが提案してきた方法だし。向こうは向こうで何か対策があるんだろうよ。
ちなみにデューラは俺達の後ろに転がしてある。まだ起きないから起こしてない。
「シエル、燃やした範囲からどのぐらいこの森が広いかわからないか?」
そう聞いてみるが、首を横に振ってわからないと答える。
最初シエルが戻ってきた時、森を出ることどころか森の外が見えすらしなかったと言うようなニュアンスのことを言っていた。
つまりそれは三つの可能性があるという事だ。
一つ目、単純にバカ広くって端が見えなかった。
二つ目、そもそもこの森に終わりが無い。
そして最後、森の外に出ようとすると、何かしらの力が働いて森の内側に押し込まれる。
言っておいてなんだが、まぁ一つ目は無いだろうと思っている。理由は単純に無駄だから。
魔法の話、それも聞きかじった話だが、誰も来ない誰も居ない領域にまで魔法を展開するより、初めから「終わりのない箱庭」として生成したり内側に押し戻されるように作ってしまった方が魔力の消費量的には少ないらしい。
まぁ海魔は、魔力を使いはするがそもそも魔法は使っていないとのことだから、この話がどこまで当たるのか。
そもそも魔獣なんだから圧倒的に魔力の蓄積量がヒトより多いから実は出来ました、なんてことがありそうと言えばありそうだから困るのだが。
だが今回の海魔は「地形を操る」みたいな能力じゃなくて、「幻影を見せる」能力だから、惑わせる能力に特化しているはず。
なら、二番三番の方が可能性としては高い。
そうだ、これは幻術なんだから──
「………んー、?」
「どうした、シエル」
「………いま、へん、なかんじ、がし、た」
「変な感じ?」
「………ひが、ぬるっとした」
………ぬるっとした?
「どういう事だ?」
「………ひが、うそつい、た?」
首を捻るシエル。何を言いたいかさっぱりわからんが、何が起きたかはなんとなく把握した。
「アタリだシエル、そこ行くぞ」
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

エリザベート・ディッペルは悪役令嬢になれない

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:3,522pt お気に入り:1,653

貴方達から離れたら思った以上に幸せです!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:204,234pt お気に入り:12,099

継母の心得

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:66,996pt お気に入り:23,305

食いしんぼうエルフ姫と巡る、日本一周ほのぼの旅!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:184pt お気に入り:223

おっさん探訪記

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:235pt お気に入り:1

かっぱかっぱらった

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:207pt お気に入り:0

処理中です...