大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

訓練とタッグ 終

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一合、二合、三合。
四合まではギリギリもったか?
だが、五合はもたなかった。
男子くんの長剣が繰り出す、威力が高い攻撃を、俺は金剣と銀剣、交互に使って弾いていた。
だが、一瞬の気の緩み──そう、二つ名持ちと互角に戦えている、という気の緩み──それは立場を逆転させるに足る一瞬だった。
斬り合う本人ですら気付けないような小さな隙。
それを俺は待っていた。
俺の大剣とは違い、年季の感じさせられる長剣の扱いはまさに熟練といったものだったが、本人そのものがやや力量不足だったらしい。
加えて言うなら、武器が悪かった。
いや、男子くんの武器が粗悪品だったという訳ではなく、単純に俺の武器が優れ過ぎていただけなのだが。
銀剣の一撃は重く、金剣の一撃は鋭い。
そんな一撃と打ち合えば、手に残るのは痺れ。
無視出来ない大きさの痺れが、二合、三合も打ち合えばその痺れは蓄積され、手に力が入らなくなる。
それでも四合は根性で持っていたが──五合目で俺の銀剣が男子くんの長剣を綺麗に弾き飛ばした。
「降参は?」
「……参りました」
両手を上げ、降参のポーズを取る男子くん。
同時に周りからの割れんばかりの歓声と拍手。
よし、これで終わ──ってねぇな!
ほぼ勘で金剣で背中を守る。
と同時に、確かな衝撃。
「──よく分かったね」
「まぁな」
…あぁ、戦技アーツは盾で受けて致命傷を避けたのか。どおりで。
盾は…歪んではいるが、壊れてはいないらしい。頑丈な事で。
一瞬で女子ちゃんは俺から離れ、距離を取る。
「何で分かったの?」
「別に?男子く──あー、えー、そこの彼の目が俺を見てなかったから」
危な、危うく男子くんって言いかけた。流石にいい気はしねぇだろうからそう言っちゃ不味いよな?
「あの馬鹿!」
「いや、いい奇襲だったぞ?」
もっとも。
「たかがそれぐらいで俺を取れるなんて思われたのは少しばかり業腹だがな」
ちゃり、と剣を構える。
銀剣を逆手に、金剣はそのままに。
「先攻どうぞ」
「………いや、《緋眼騎士》様からどーぞ」
…む、俺の剣が後の先みたいな剣だと思われたか?
別にそんな訳じゃ無いんだが…。
「じゃ、お言葉に甘えて」
言ったと同時に地面を蹴る。
「ぇ」
響いた音は一つ。
しかし、起きた結果は三つ。
女子ちゃんの剣が弾かれ、盾が落とされ、首元に銀剣が添えられている。
「な、何が──」
「別に難しくはないぞ?金剣で盾を叩き落とすと同時に銀剣で剣を吹っ飛ばして、そのまま首元に銀剣を持ってくるだけ」
ただ、速度と威力は金剣と銀剣でブーストされ、俺のスキルで無駄は省かれ、見えなかったかもしれなかったけど。
「どうする?まだやる?」
「…ギブギブ。勝てるわけないじゃん」
よし、勝ったはいいが…。
『残りは今代のが所属してる班だろ?手の内バレてるよな?』
そこなんだよなぁ…。
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