あの夜、あなたがくれた大切な宝物～御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く～

花火が咲いた夜、君と見た景色～慶都side～

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淀みの無い、空気の澄んだ夕刻。


昼過ぎまでは少し暑かったが、今は気温も下がって過ごしやすい。


『すみません、お待たせして』


『あっ、いや』


待ち合わせ場所にやってきた彩葉はとても美しかった。


艶やかで、女性らしい姿に自然に心拍数が上がる。


『来てくれてありがとう』


『こちらこそ…お誘いありがとうございます』


『素敵な浴衣だ。わざわざ悪かったな、浴衣姿を見たいなんて言って』


薄い緑地に、青と黒の小さめの朝顔がいくつも描かれたレトロ感溢れる浴衣。 


深い緑の平帯や小物も上手く使い、全体的に上品なイメージで、彩葉の可愛らしさを更に際立たせていた。


とても良く似合っていると心から思った。


アップにした髪型、その首すじからはしっとりとした大人の艶っぽさも感じられる。


見入っては失礼だと思いながらも、あまりにも魅力的な姿に、どうしようもなく惹き付けられる自分がいた。


『いえ。それより慶都さんの浴衣姿、本当に素敵ですね。本麻ですか？風合いが上品でとても良くお似合いですね。その信玄袋も京扇子もオシャレで可愛いです』


『和装、詳しいな』


『実は父も浴衣が大好きなんです。子どもの頃からよく着てましたから。もちろん、慶都さん程洗練されてませんけど』


ニコっと笑う彩葉、浴衣にその笑顔は…何ともチャーミングだ。


『君は一堂社長のことが好きなんだな』


『…はい。本当の親子ではないですが、私にはたった1人の大切な父です』


『…良くわかる。子どもにとって、親というのは誰よりも尊敬出来る存在だ』


俺も…1から仕事を教えてくれた父と、優しく包みこんでくれる母をいつも尊敬している。


だから俺も、子どもに尊敬されるような父親になりたいとずっと思ってきた。


『さあ、花火まではまだ少し時間があるから、屋台でも回ろうか』


『嬉しいです』


彩葉と2人きりで過ごす時間。