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花火が咲いた夜、君と見た景色~慶都side~

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それから、ゆっくりと歩いて目的の場所までやってきた。


河岸に、感覚をあけて、いくつもある石段。


その石段の1番上にハンカチを敷いた。


『ここ、座って』


『すみません、ありがとうございます』


まだ辺りはまばらで、これから人が増えてくるんだろう。


少し薄暗くなったこの空に、大輪の花火が上がったら、どんなに綺麗に見えるだろうか。


うっすらと浮かぶ月も、今か今かと美しい花が咲くのを待ち構えているように見えた。


俺は、今、彩葉に伝えておこうと思った。


『彩葉』


『はい』


『花火、楽しみだな』


『すごくワクワクしてます』


『雪都も見てるんだよな?』


『はい、違う場所でおじいちゃんと。最近はもうおじいちゃんが大好きで』


『良いことだ。一堂社長の喜ぶ顔が目に浮かぶよ』


『お父さん、雪都にメロメロですから』


『時々、父と一緒に一堂社長の自宅を尋ねていた頃が懐かしい』


『そうでしたね。お仕事のことで、たまに来て下さってましたもんね。お父さん、九条社長と慶都さんが来られる日はとても嬉しそうにしてましたから』


きっと嬉しかったのは…一堂社長以上に僕の方だっただろう。


『一堂社長から学ぶものはとても多かった。だから、いつも楽しみにしてた。それに…』


『それに?』


首を傾げながら俺を見る彩葉。


その純真で可憐な瞳に吸い込まれそうになる。


『君がいたからね』


『えっ…』


『一堂家に行って、彩葉に会えることが、俺の楽しみになってたんだ。いつも、気づいたら君を探してた』


君がいると本当に嬉しくて、でも…


ずっと見つめていることは出来なかった。


『慶都さんは、麗華とばかり話してましたから。私はあまり会話した記憶がありません。もちろん、姉妹ですから、麗華が慶都さんと話していても、私は2人を微笑ましく見ていましたけど…』
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