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自分でもわからない気持ち。
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もう夜も遅くなり
さすがに冷えてきた海辺は
波の音は聴こえるものの
なにか濃い黒の闇に
飲み込まれていってしまうような
気がして僕はまだ涙を流しながら
身震いした。
ずっと泣いている僕を
抱きしめていてくれたその人は
心配そうに言う。
『体が冷えてる…。
風邪をひくといけないな…。
俺の家は夏の間だけ
民宿になるから部屋もあるし…。
うちへ行ってとりあえず
あたたまるといい。
……おなかもすいたろう?』
僕を立ち上がらせてくれ
歩けるか?と顔を覗き込まれて
力なく首を縦にふる。
パタパタと僕の服につく砂を
はたいてくれてから微笑んで
こっち、と手を取られた。
僕は引かれるがままに
足を前へと踏み出す。
しばらく歩くと建物に着き
鍵を開ける音がして
ギッ、と扉が開かれた。
外観は暗くてあまり見えない。
『電気つける、よ。』
あまりの強い明かりに僕は頭が
クラクラして壁に手をついた。
「……ん!あ!えっ?」
気づけば抱き上げられて
運ばれている気配に
心が追いつかずに
目を白黒させる。
『2階の客間のひとつに
連れてゆくから。そこで
ちょっと落ち着くまでゆっくり
して。シャワーもできるから。』
「あ、りがとっ…ござ、います…。
あっ、あのぉ……歩けます…。」
『もう、着く。』
ガチャ、と扉をあけて
部屋の中にあった椅子にそっと
降ろされた僕はそのぬくもりが
離れてしまったことに
さみしいと思ってしまってから
そんな自分自身に驚きを隠せずに
ただただおろおろしていた。
『ちょっと待ってて。着替えと
タオルを持ってくるから。』
そういって立ち去っていく背中を
目で追い、閉まってしまった
ドアを見つめる。
またガチャリとドアが開き
目が合った。
やわり、と微笑むその人に
なぜか心臓が早鐘を打つ。
『はい。これ。着替えと下着。
それからこっちがタオルと
洗面用具。スエットは
ちょっと大きいかもだけど
我慢してね。俺は1階で
食事の支度してるから……
ゆっくりシャワーして一息ついて
落ち着いたら降りといで。』
そう優しく言いまたドアを閉めて
出ていった。
しばらく呆然と佇んでいた僕は
冷えた身体に気づきそろり、と
シャワールームへと入る。
熱い湯を浴びると
いかに自分の身体が冷えているか
実感してしばらくじっとその
恵みのもとで立ち尽くしていた。
着替えを済ませ髪を乾かしてから
僕はおっかなびっくりで
階下へと足を運ぶ。
広いダイニングキッチンからは
カレーのよい香りがしていた。
おそるおそるドアを開け
中を覗くとキッチンから
声がする。
『ちょうど今、できたとこだよ。
食べる?』
「……なんかいろいろ…………
申し訳ありません……。
ご迷惑をおかけし……」
『いや。迷惑なんてないよ。
ほら、食べよう?』
「………ありがとうございます。」
そこ、と椅子に座るように
促されてストンと腰を下ろすと
目の前に2人分のカレーライスと
サラダが置かれた。
『いただきます。
誰かと食べるなんて
とても久しぶりで嬉しいよ。』
「……………いただきます。
…………………………………うま!」
嬉しそうに目じりに皺を寄せ
よかった、とつぶやく
目の前の人が急に驚愕の表情に
変わったのは横に置いてあった
スマホが鳴った時で……。
『な、なんでっ!!!』
その着信音のメロディーに
僕は聞き覚えがあった。
さすがに冷えてきた海辺は
波の音は聴こえるものの
なにか濃い黒の闇に
飲み込まれていってしまうような
気がして僕はまだ涙を流しながら
身震いした。
ずっと泣いている僕を
抱きしめていてくれたその人は
心配そうに言う。
『体が冷えてる…。
風邪をひくといけないな…。
俺の家は夏の間だけ
民宿になるから部屋もあるし…。
うちへ行ってとりあえず
あたたまるといい。
……おなかもすいたろう?』
僕を立ち上がらせてくれ
歩けるか?と顔を覗き込まれて
力なく首を縦にふる。
パタパタと僕の服につく砂を
はたいてくれてから微笑んで
こっち、と手を取られた。
僕は引かれるがままに
足を前へと踏み出す。
しばらく歩くと建物に着き
鍵を開ける音がして
ギッ、と扉が開かれた。
外観は暗くてあまり見えない。
『電気つける、よ。』
あまりの強い明かりに僕は頭が
クラクラして壁に手をついた。
「……ん!あ!えっ?」
気づけば抱き上げられて
運ばれている気配に
心が追いつかずに
目を白黒させる。
『2階の客間のひとつに
連れてゆくから。そこで
ちょっと落ち着くまでゆっくり
して。シャワーもできるから。』
「あ、りがとっ…ござ、います…。
あっ、あのぉ……歩けます…。」
『もう、着く。』
ガチャ、と扉をあけて
部屋の中にあった椅子にそっと
降ろされた僕はそのぬくもりが
離れてしまったことに
さみしいと思ってしまってから
そんな自分自身に驚きを隠せずに
ただただおろおろしていた。
『ちょっと待ってて。着替えと
タオルを持ってくるから。』
そういって立ち去っていく背中を
目で追い、閉まってしまった
ドアを見つめる。
またガチャリとドアが開き
目が合った。
やわり、と微笑むその人に
なぜか心臓が早鐘を打つ。
『はい。これ。着替えと下着。
それからこっちがタオルと
洗面用具。スエットは
ちょっと大きいかもだけど
我慢してね。俺は1階で
食事の支度してるから……
ゆっくりシャワーして一息ついて
落ち着いたら降りといで。』
そう優しく言いまたドアを閉めて
出ていった。
しばらく呆然と佇んでいた僕は
冷えた身体に気づきそろり、と
シャワールームへと入る。
熱い湯を浴びると
いかに自分の身体が冷えているか
実感してしばらくじっとその
恵みのもとで立ち尽くしていた。
着替えを済ませ髪を乾かしてから
僕はおっかなびっくりで
階下へと足を運ぶ。
広いダイニングキッチンからは
カレーのよい香りがしていた。
おそるおそるドアを開け
中を覗くとキッチンから
声がする。
『ちょうど今、できたとこだよ。
食べる?』
「……なんかいろいろ…………
申し訳ありません……。
ご迷惑をおかけし……」
『いや。迷惑なんてないよ。
ほら、食べよう?』
「………ありがとうございます。」
そこ、と椅子に座るように
促されてストンと腰を下ろすと
目の前に2人分のカレーライスと
サラダが置かれた。
『いただきます。
誰かと食べるなんて
とても久しぶりで嬉しいよ。』
「……………いただきます。
…………………………………うま!」
嬉しそうに目じりに皺を寄せ
よかった、とつぶやく
目の前の人が急に驚愕の表情に
変わったのは横に置いてあった
スマホが鳴った時で……。
『な、なんでっ!!!』
その着信音のメロディーに
僕は聞き覚えがあった。
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