僕からのあなたへの想いはどこからやってきてどこへいくのか。

勇黄

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誰なんだろう。

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匠洋たくみー!!!
匠洋たくみ匠洋たくみ……たくみ……!』

僕が目の前にいることも
忘れてしまっているのか
スマホを耳にあて大きな声で
誰かの名前を呼ぶその人は
一瞬にして冷や汗をたらたらと
流し顔面蒼白で震えている。

匠洋たくみなのか?おい!なにか言え!匠洋たくみ!!!』

あまりの震えに膝から頽れて
しばらく声の限りに
名前を叫んでいたが
ふっ、と静かになった。

メモを引っ掴んで何かを書き
ゼェゼェと息をする。

『……………………………………はい。
……………………………………はい。
すみません。はい………………。
すぐ伺います。』

そう言ってスマホがその手から
離れてガタガタン!と
床に転がっていった。

そして茫然自失で涙を流している
その人に僕はおそるおそる
声をかける。


「……あの、だいじょ…っえ…!」

グッ、と腕の中に抱きしめられて
汗が涙が僕のグレーのスエットに
染み込んであちこちに模様を
作っていき嗚咽だけが
静かな部屋に響く。

『…………っ……一緒に、来て………
くれないか?俺、行かな……いと』

「どっ、どこへ………………?」

『た……くみのスマホが……
スマ、ホ……見つかっ、て……。』

「それを取りに行くんですか?」

『あぁ……そう………だ……。

なん、で匠洋たくみのス、マホ……が
そん、なところ、から……
なんで……?匠洋たくみ匠洋たくみ……。
匠洋たくみ……たくみ…………。』

「……場所はどこ、ですか?
車は……ありますか?」

『……隣、町……のこうば、ん……。 
く、るまは……あ、る……。』

「そのメモですね?
……………………………………。
この場所ならわかります。
………………僕、運転、しますから。
……うっ!」

しがみつくように強くきつく
抱きしめられて思わず呻き声を
あげるがそれにも構わずに
ぎゅうぎゅうと締めつける腕を
強くするその人は息も絶え絶えで
うまく呼吸ができずにはくはくと
唇を動かしている。

「うぅっ!……と、りあえず……。
交番へ行きましょう。ね?」

『怖い……こわい……………………
匠洋たくみ……がもしっ。
そんな……。そんなこと……。』

「………………あのっ。スマホの
着信音のメロディーって……
《タレー》っていう
タイトル……です、か?」

『!!!!……な、んで…………
なん、でそれ、を……。』

「……今日。その歌がこの海で
歌われてる、動画、を……
偶然、観て……それで…………。
ここ、に来た……んで、す。」

『どう……が?』

「あの、これ………………。」

僕はスマホを操作して差し出した。



『とめ、て……くれ……………。
やめ、て………………。ああああ!
匠洋たくみっ!たくみぃぃぃ……』

腕の中で突然暴れだしたその人を
僕は必死で抱きとめる。

「ごめ、なさいっ!
とめますっ!」

動画を止めてスマホをふせて
テーブルに置くと
僕の腕から逃れたその人は
床に突っ伏して泣き続けた。









結局、そのあと無言のまま
身支度をして
僕の運転で一緒に隣町の
交番まで行き
その 《たくみさん》のスマホを
受け取って帰ってきた。

近くにある森の中に
落ちていたのを散歩中のかたが
拾って届けてくれたらしい。

ずっと無言のその人は
まだ喋る気配もなく
うつむいたままだった。
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