Eternal Rain ~僕と彼の場合~

勇黄

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小夜時雨

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栄醐えいご星斗せいとの頭を撫でながら
考えを巡らせていた。









(この子を幸せにできるのは
俺だけだ…。絶対に幸せにする。)








眠っている星斗せいと
抱き寄せてからそっと横に寝かせ
栄醐えいごは部屋の外に出た。









肩の傷の手当てをしてから
急いで仕事を調整し
売店で食料と本などを調達して
部屋へ戻ると星斗せいとはまた
ソファのすみでタオルケットに
くるまっていた。








星斗せいと。お腹すいてないか?』








首をふる星斗せいと








『プリン、食べない?ほら、美味しいよ?』








ソファに腰かけて栄醐えいご
プリンを食べ始める。









ずりずり、とタオルケットに
くるまったまますり寄り
栄醐えいごの背中に頭を
もたせかけた星斗せいと










『起きたとき俺いなかったから
怒ってるの?』








「………別に。」









ぐりぐり、と頭をすり付け首をふる星斗せいと









『ほら、プリン。』







栄醐えいごはプリンを口に
放り込んで星斗せいとにキスをした。









「んくっ…ぅぅん…あま………。」









『あはは!美味いだろう?』








ゴクン、と飲み込みまた口を開ける星斗せいと









『ふふふ。食べるならちゃんと
スプーンで食べろよ。』
 









ぶんぶん、と首をふりまた口をあける。








『もう~しかたないな…ふふふ。』








またキスをしてプリンを食べさせる
栄醐えいごに何度も強請る星斗せいと










星斗せいとはキスが好きなんだな。』










「…気持ちいい。安心、する………。」









『そっか。いっぱいしような。』









「ん…。んん……。んぅ……ん…。」









繰り返しキスをして蕩ける表情を
みせる星斗せいと









「ねぇ、星斗せいと。勉強、しようか。」








栄醐えいごの胸にぎゅっと
抱きつき首もとに顔を寄せる。
みじろぎもせずに星斗せいと
抱きしめる栄醐えいご
少し意外そうな顔をし
星斗せいとは体を離した。








「や…る。」








『ふふ。漢字をやろうか。』









「漢字きらいだ…。」









『だから勉強するんだよ。
勉強してわかったり覚えたりすると
嫌いじゃなくなるよ。
そして、勉強してわかった、って
実感が大切なんだ。

知識なんて最低限でいいんだよ。

生きてくには困らないから。
今はスマホで何でも調べられるしね。

ただ理解することだったり
覚えるということだったりは
人間の基本を作るから。

だから星斗せいとには
勉強して欲しいんだ。』









「………。僕、なおれる?」








『!ふふふ…。ああ。
俺がいるから大丈夫だ。』









「ドリル、やる。」









椅子に座りドリルを捲る星斗せいと
横に座り見守る栄醐えいご










集中力を見せ一心不乱に
ドリルをやりほんのり汗を
かきながら漢字を書いていく
星斗せいと。半分ほど進んだときだった。










トントントン!
栄醐えいごの部屋のドアが
ノックされる。













咲鞍さきくら先生!先生!
こちらにいらっしゃるんでしょう?
携帯にも出てくださらないし!
どうしてもマスコミ対応を
お願いしたい件があるんです!
先生!先生!】

女性の甲高い声がした。








チッ…栄醐えいごは舌打ちしてドアへ向かおうと立ち上がった。
そんな栄醐えいご星斗せいと
タックルするようにすがりついた。











「行か、ないで…。」









『ぐっ!せ、星斗せいと…。
すぐ戻る、から…。』









「やだ…やだ………。」










星斗せいと…。』










「いて…。いてくれないなら………」










星斗せいとは持っていた
シャーペンで自分の右手の甲を
思いきり突き刺した。









「ぐぅぅぅ!」








もう一度刺そうと引き抜くと
血が飛び散る。









星斗せいと!やめろ!』









「ぐわあぁぁぁぁあ!」









もう一度右手にシャーペンを
突き立てようとしたところを
なんとか栄醐えいごは止めた。









星斗せいと。やめるんだ!』










「わぁぁぁあ!」









咲鞍さきくら先生?
どうかされたんですか?先生?】









栄醐えいごは片手で星斗せいと
手を押さえながらドアの向こうに
いるであろう相手に電話した。









『看護師長。少しだけ副院長室で
待っててください…すぐ行きますので…』










【本当にすぐ、お願いしますよ!】










そう言われて切られたスマホを
放り投げ星斗せいとを抱きしめた。








『どうして!星斗せいと
なんでこんなこと…
傷を手当てするから見せなさい!』











「いやぁ…!あああああ!」









『わかった。わかったから。
どこにも行かないよ。信じて…。』










星斗せいとはかぶりつくように
栄醐えいごにキスをして
舌に吸いつく。








『うぐっ…んっ………んん…っ…。
う、んん!』









突然舌を甘噛みし目を見てくる
星斗せいと









栄醐えいごはしっかりと見つめかえした。








星斗せいとの目が泳ぐ。








「っ、は………。な、んで?
僕が舌噛んじゃったら死んじゃうよ?」









『…言ったでしょ。俺、星斗せいとになら
殺されてもいい、って。
それに星斗せいとはそんなこと
しないって信じてる。
…先に手の手当てさせて?』










「…っく………。なんでだよぉ!
なんで僕なんかを信じるんだ…。」








『愛してる。星斗せいと。手、出して。』











栄醐えいご星斗せいとの傷の手当てをした。









「………行かなくて、いい、の?」









『行かない。ただ、電話を一本
かけさせて?』









頷く星斗せいと










栄醐えいごはソファに座り電話をかけた。










『もしもし、院長…いや、お父さん。
栄醐えいごです。仕事をしばらく
休ませてくれませんか?
………理由は…その…またいずれ話します。
………そんなようなものです。
………すみません。………はい。
副院長室で看護師長が………はい。
………はい。お願いします。』









電話をかけ終わり星斗せいと
駆け寄り抱きしめる栄醐えいご









星斗せいと。ここを出て
俺のマンションに行こう。
ずっと一緒にいるから。ね。』









「ほ、んと、に?ほんとにずっと
いてくれるの?」









『ああ。手、痛くないか?』








「いたくない…」








『よし。行こうか。』








栄醐えいごはさっと着替えて
荷物をまとめてから
クルマのキーを持ち
星斗せいとの体を頭から
タオルケットで包み横抱きにした。









『ほら、行くよ。』









栄醐えいごの首に手を回し
しがみつく星斗せいと









外は弱い雨だった。
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