初夜での暗殺に失敗した私ですが、今宵も冷徹皇帝から甘く抱き尽くされております

葛和蛙蘭

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困惑の初夜⑤

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 それまでのエリシアを気遣うような動きとはまったく違っていた。クロヴィスが己の願望に任せて行うそれだった。

 しかし、従順に慣らされた内部は、それをやわやわと受け入れることができた。
 むしろ腰回りが蕩けるような気持ちよさを感じる。しかも相手が思うままに動くことで与えられる刺激は、冷静ではいられないような強さがあった。

「っあ、あ! っん、ああ……!」

 まさに体の中を侵略されるような感覚だった。突かれるたびに、望んでいないのに声が出てしまう。
 もしかしたら肉体がより深く交われば、さすがのこの男も異能力に屈するのではないか――当初はそんな淡い期待を持っていた。しかし甘かった。
 クロヴィスは精気を失うどころか、より雄々しく力強くなって、エリシアの中を蹂躙していく。

(屈服するのは、私だわ……)

 肉壁いっぱいにすり込まれるような刺激に、エリシアは陶然とする。指だけでは味わえなかった快感が全身を駆けめぐり、高揚した。

「……つらくないか?」

 一度、動きを止めてクロヴィスが問うた。気遣うようにエリシアの頬を優しく撫でる。
 エリシアは首を横に振った。刺激を失った体は、せがむように内側からきゅうきゅうと締め付ける。

 漆黒の瞳がエリシアを真っ直ぐに見つめていた。
 わずかな反応も逃したくない。もっと深い快楽を与えたい――そんな執着めいた意志を感じさせる熱を帯びている。

「……では、もっと早めるぞ」

 クロヴィスは両腕をついて深く沈み込むように体勢を変えた。
 一気に深く突かれ、エリシアの口から声が上がる。
 本格的な律動が始まった。
 快楽を貪る動きが、エリシアを本格的に抉る。

「あっ、ああっ、んあっ、あああ……!」

 打ち付けられるたびに、耳を疑うような甘たるい声が出る。抑えられない。
 咄嗟に口に手を押し当てるものの、クロヴィスに取られてベッドに押さえ付けられる。

「聞かせてくれ。可愛い声だ」

 ズクンと胸が疼き、刺激をもっと強く感じた。
 ぐちゅ、ぐちゅと淫らな水の音まで聞こえる。それもクロヴィスを楽しませるものになるのかと思うと、胸がきゅうと締めつけられた。

(私は、どうなってしまうの……)

 閨の教育では、ここまで来たら「あとはなすがままになれ」と教えられていた。
 このまま快楽に溺れ、暗殺対象に蹂躙されてしまってもいいということなのか――いや、そんなことは許されない。エルヴァランの未来と国民はどうなるのか。

(私はなんて愚かなの……)

 快楽と罪悪感に苛まれ、目尻に涙がにじむ。

「エリシア……」

 名を呼ぶその声は、エリシアの心にしっとりと切なく染み込んだ。
 容赦なく雄で体内を抉られる一方で、優しく抱き締め口づけされる。
 どうしようもなく気持ちよくて、何もかもが甘くて――いっそ蕩けて消えてしまいたかった。

(せめて、冷酷に抱いてくれればよかったのに……)

 こんなに深く肉体が繋がっても、クロヴィスという男のことが何ひとつ理解できなかった。
 いくら望んでいたとはいえ、自分に殺意を抱く女をこれほど丁寧に抱くだろうか。
 そもそも、エリシアの異能力が通じないのも不可思議だった。
 謎に包まれた男に翻弄され堕とされる。
 終わるはずだった運命が、ふたたび暗闇に投げ出されたような気がした。

「なぜ、そんな顔をする……」

 クロヴィスは動きを止めると、目に涙を溜めて苦悩の表情を浮かべているエリシアを見つめた。

「屈辱か。殺そうとした男に抱かれるのが」

 そう問う顔はやはり無表情だった。

「ぞんざいには扱わない。皇妃として接しよう――きみをけして不幸にはしない」
「……んっ……んん」

 クロヴィスは動きを再開させた。
 再び押し寄せてきた快感に、エリシアは首を仰け反らせて喘いだ。
 その首筋に男の唇が吸い付き、そのまま耳朶に移動する。

「もう離せない。もっと貪りあいたい。――きみはどうだ?」

 ぐりぐり、と陰部の突起を親指の腹で転がされた。

「あぁあッ……!」

 強い刺激を感じてエリシアは身をよじる。それでも執拗になぶられて、びくりびくりと腰が跳ねる。
 内部からさらに愛液が湧いてくるのを感じた。
 その間にもクロヴィスは律動を続ける。ぐちゅぐちゅと淫らな水の音がエリシアの嬌声に絡まる。

「エリシア……きみを俺だけのものにしたい」

 ドキンと胸が跳ねた。
 低く囁かれたその声は、欲望がにじみでていた。
 だが理性を必死に働かせて思いめぐらす。
 たとえ今は真心だとしても、出会って一日しか経っていないのだ。それがずっと続くとは限らない。

 ほんの一時の感情だ。
 飽きたら捨てられる。
 そうなれば、エルヴァランの未来も保障できない。

 ふいにクロヴィスがエリシアの両脚を持ち上げたかと思うと、身を乗り出してもっと深くうずめた。

「ああっ!」

 奥を穿つ強い刺激に思考が止まる。
 何も考えず俺だけ感じていろ――と強制するかのごとく、ぐりぐりと奥を抉られ、びくびくと体が仰け反る。
 痛いような気持ちいいようなどうしようもない感覚に、エリシアはたまらず首を振る。

「もうっ、それ以上、っああ……!」

 言わせないとばかりに突き上げられ、頭が真っ白になった。
 間髪入れず早い律動が始まり、もう何も考える余裕がなくなる。

「陛下っ、アああ、や、んっ、っああ……!」

「これから毎夜抱く。俺無しではいられなくなるくらいに染めてやる」

 クロヴィスは冷酷に告げた。
 体内を蹂躙され、口内を貪られ、嗚咽するように喘ぎながら、彼が巻き起こす波に溺れていく。

 それは、逃れられぬ運命と愛に呑み込まれていくようでもあった。


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