文字の大きさ
大
中
小
12 / 35
第三章 1
土曜の夕方。引っ越しのトラックが来たかと思うと、テンポよく荷物を運び入れた。
「では、失礼します」
男性スタッフ二人は藤宮に挨拶してから車に乗り込んで去っていく。
手際がいい。さすがプロ。藤宮のアパートの荷物をすべてこっちに運び込んだのだろうか。でも、大きな冷蔵庫などは必要ないような気もする。
里歌は自分の部屋のベランダから、その様子を見つめていたけれど、そろそろ、いいだろう。藤宮の片付けが落ち着いたのを見計らい、里歌はみーたんを手渡すことにした。すっかり、里歌には懐いていたので腕に抱えた状態でお隣に向かい、藤宮に手渡す。
「はい。どうぞ」
預かり部ランティア、終了。
「高山さん、どうもありがとう」
みーたんのお世話も今日限り。
みーたんは隣の家の敷地で放し飼いにされているので、里歌に会いたければ、いつでも会える。その翌週の月曜の朝、高校までの一本道を進んでいると、後ろから声がかかった。
「おはよう。高山さん」
やはり、藤宮は少女漫画の中のイケメンみたいにキラキラしている。こうやって話しているのが夢みたいだ。
「引っ越しの挨拶に、また後で行くから。ここら辺って何を配るの?」
「そんなの構いませんよ」
というか、今時、そんなことする若者なんていない……。案外、藤宮は古風だ。
「みーたん、新しい場所を気に入ってますか?」
「そうだね。相変わらず、オレに対してはツンデレだけど、普通に眠っているよ。ふふっ、押し入れがみーたんの秘密基地なんだ」
「藤宮さんも気に入りましたか?」
「うん。ちゃんと最新のエアコンもあってホッとしたよ」
藤宮は嬉しそうにしている。
「あの家の二階、前にいた女子大生が自力でリフォームしたらしくて、そこだけカフェみたいにお洒落だった。カーテンもオレ好みだ。なんか、オレ、得したかも、敏子ばぁちゃんの夕飯、まじ、美味いわ。昨日は、引っ越し祝いで鯛めしだった。それがまじで美味いんだ」
「それは良かったですね」
気になる事を聞いてみた。
「アパートにあった冷蔵庫とか洗濯機も持って来たんですか?」
「いや、敏子さんの家のを使わせてもらえるから、冷蔵庫と洗濯機はリサイクル業者に売った」
「そうなんですね」
里歌は、テクテクと歩きながら藤宮の為に敏子について教えてあげることにした。
敏子の娘の知代は九州にいて息子の一哉一家はインドにいる。一哉は商社マンで英語が堪能で見るからに紳士という感じ。敏子の夫が裕福だったので、敏子は都内に不動産を所有している。その家賃収入があるので生活には余裕がある。
困ったことに、敏子は、最近、物忘れが多いし世間知らずだ。夫が生きている間はお金の管理は夫がしていたと聞いている。
子供の頃から世話になっている里歌としては、敏子の財産を狙って詐欺師などが来て敏子を騙そうとしないか心配だ。
「先月だったかなぁ、振り込め詐欺の若い男の子が警官の恰好で、敏子さんの家に来たんです。あの時、たまたま、あたしの母がいたんで騙されずに済んだけど……。藤宮さんも気をつけて下さいね」
多分、詐欺師どもは貯金の多い老人のリストを持っているのだろう。
敏子のような一人暮らしの老人はカモにされ易い。
敏子は、まだボケてはいないけれど、それでも、しっかりしているとは言い難い。こないだなんて、夜に、風呂場で悲鳴が聞こえたから、何かと思って駆け付けてみたら、滑って転んでいたのである。
まだまだ他にもある。老眼鏡を無くしたと言って困り果てていたので探したところ、なぜか、老眼鏡が冷蔵庫の卵入れのところに入っていたりする。
『あら、なんで、こんなところに?』
敏子は驚いていたが、その後も、似たようなことをやっている。アルツハイマーとか、そういうのではないと思いたいけれど、どうも、敏子は危なっかしい。
その事を説明すると藤宮は頷いた。
「うん、分かった。敏子ばぁちゃんを守ると誓うよ。今朝、ばぁちゃんが弁当を作ってくれたんだ。オレ、まじでラッキー」
「敏子さん、話し相手が出来て喜んでいるみたい。藤宮さんが来てくれて張り合いができたのね。きっと、息子さんも安心してると思います」
そんな会話をしながら昇降口まで来ると藤宮は笑顔で去って行った。
しかし、その様子を見たメイが顔をしかめてしまう。
教室に入ろうとした時、背後から来たメイに言われた。
「邪魔だから、どいて」
「……」
反射的に先を譲る。
里歌は、うっすらと漂う悪意のようなものに気付いていたけれど、あえて感じないふりをしたのである。
☆
最近、学内ですれ違うと、藤宮は向こうから笑いかけてくるようになっている。
年下の里歌に対して、彼は常にさんづけで呼んでくれている。藤宮は何か分からないことがあると里歌に聞いてくるようになっていた。
お昼休み。たまたま、学生食堂で顔を合わせた時、向こうから聞いてきた。
「昨日、回覧板が来たんだよ。あれ、君の家にも来たよね。あれ、何の会費?」
世帯主だけが払えばいいものだと答えた後で里歌は付け加えておいた。
「でも、町内で行う夏祭りとかに参加したい人は払う方がいいみたいですよ。それと、ゴミ出しに関してなんですけど……」
これまた、ちよっとした規約がある。何しろ、敏子の家のゴミは藤宮が捨てる約束になっている。猫と同居するからには、猫の砂をどう廃棄するのかという問題もある。
それに、まだまだ藤宮に教えたいこともある。
「実は、うちの近所を点々と訪問する野良猫がいるんですよ。その猫は、もう去勢されています。いわゆる地域猫なので、ブラッと遊びに来た時は、撫でてやってください。その猫は全身が真っ黒で名前はトムです。獣医さんが名付けました」
「へーえ。そうなんだ?」
「トムは、敏子おばぁちゃんの庭でウンコをすると思います。その時は、よろしく頼みます」
「えっ、どういうこてと?」
「プランターにウンコをするので、そのウンコをスコップですくって、別のプランターに埋めて下さい。敏子おばぁちゃんはそうやって肥料として後で使ってるみたいです」
果たして、それが正しい処置なのかどうか。
里歌も分からないけれど、敏子はそうしてきたのだ。
「なるほど、さすらい猫のトムのウンコの処理もしろということか」
「トムは外をうろついてるので、蚤には気を付けてくださいね。噛まれたらものすごく痒いですよ」
「うわっ、それはちょっと困るな」
これは、ご近所さん同士のたわいもない会話である。
それでも、その様子を見た安西メイは気に食わないのか、横目で里歌を睨んでいたのだ。
☆
放課後、メイはいつもの三人組でカフェに集まり鬱憤を晴らそうとした。メイの取り巻き達も、メイと同じ気持ちなのか露骨に顔をしかめている。
「何なの。ありえなーい。なんで、あんな地味な高山と藤宮さんが親しそうにしてんのよ」
「聞いた話だけど、高山さんが猫のベビーシッターをしたらしいよ。藤宮さん、猫が飼える古民家を高山さんに紹介してもらったみたい」
「ゲッ。高山、あざといわぁ~」
葉奈子が言うと、メイも吐き捨てるように言い放つ。
「山形のこけしみたいな顔して、藤宮さんに媚びを売るなんてさ、百万年、早いっつーの。バーカ」
このところ、藤宮と里歌が話す様子をやけに見かけるものだから気に入らない。今朝も、二人は並んで語り合いながら登校していた。同じ時間に家を出て、同じ電車に乗るので、当然のように顔を合わせることになる。
(何なの。高山、調子に乗ってるよ)
メイの苛立ちと嫉妬は日に日に高まっていく。メイとしては、里歌が目障りでしょうがない。そのせいか、メイクのノリも悪い。
(こんなに可愛いあたしをフッておきながら、なんで、貧乏くさいこけしなんかと喋ってるのよ?)
里歌のような地味な女が藤宮と話をするなんて。マジでムカムカする。あの女、何とか懲らしめてやりたい。思い知らせてやりたい。とまあ、こんなふうにして黒い感情が渦巻いていく。
「では、失礼します」
男性スタッフ二人は藤宮に挨拶してから車に乗り込んで去っていく。
手際がいい。さすがプロ。藤宮のアパートの荷物をすべてこっちに運び込んだのだろうか。でも、大きな冷蔵庫などは必要ないような気もする。
里歌は自分の部屋のベランダから、その様子を見つめていたけれど、そろそろ、いいだろう。藤宮の片付けが落ち着いたのを見計らい、里歌はみーたんを手渡すことにした。すっかり、里歌には懐いていたので腕に抱えた状態でお隣に向かい、藤宮に手渡す。
「はい。どうぞ」
預かり部ランティア、終了。
「高山さん、どうもありがとう」
みーたんのお世話も今日限り。
みーたんは隣の家の敷地で放し飼いにされているので、里歌に会いたければ、いつでも会える。その翌週の月曜の朝、高校までの一本道を進んでいると、後ろから声がかかった。
「おはよう。高山さん」
やはり、藤宮は少女漫画の中のイケメンみたいにキラキラしている。こうやって話しているのが夢みたいだ。
「引っ越しの挨拶に、また後で行くから。ここら辺って何を配るの?」
「そんなの構いませんよ」
というか、今時、そんなことする若者なんていない……。案外、藤宮は古風だ。
「みーたん、新しい場所を気に入ってますか?」
「そうだね。相変わらず、オレに対してはツンデレだけど、普通に眠っているよ。ふふっ、押し入れがみーたんの秘密基地なんだ」
「藤宮さんも気に入りましたか?」
「うん。ちゃんと最新のエアコンもあってホッとしたよ」
藤宮は嬉しそうにしている。
「あの家の二階、前にいた女子大生が自力でリフォームしたらしくて、そこだけカフェみたいにお洒落だった。カーテンもオレ好みだ。なんか、オレ、得したかも、敏子ばぁちゃんの夕飯、まじ、美味いわ。昨日は、引っ越し祝いで鯛めしだった。それがまじで美味いんだ」
「それは良かったですね」
気になる事を聞いてみた。
「アパートにあった冷蔵庫とか洗濯機も持って来たんですか?」
「いや、敏子さんの家のを使わせてもらえるから、冷蔵庫と洗濯機はリサイクル業者に売った」
「そうなんですね」
里歌は、テクテクと歩きながら藤宮の為に敏子について教えてあげることにした。
敏子の娘の知代は九州にいて息子の一哉一家はインドにいる。一哉は商社マンで英語が堪能で見るからに紳士という感じ。敏子の夫が裕福だったので、敏子は都内に不動産を所有している。その家賃収入があるので生活には余裕がある。
困ったことに、敏子は、最近、物忘れが多いし世間知らずだ。夫が生きている間はお金の管理は夫がしていたと聞いている。
子供の頃から世話になっている里歌としては、敏子の財産を狙って詐欺師などが来て敏子を騙そうとしないか心配だ。
「先月だったかなぁ、振り込め詐欺の若い男の子が警官の恰好で、敏子さんの家に来たんです。あの時、たまたま、あたしの母がいたんで騙されずに済んだけど……。藤宮さんも気をつけて下さいね」
多分、詐欺師どもは貯金の多い老人のリストを持っているのだろう。
敏子のような一人暮らしの老人はカモにされ易い。
敏子は、まだボケてはいないけれど、それでも、しっかりしているとは言い難い。こないだなんて、夜に、風呂場で悲鳴が聞こえたから、何かと思って駆け付けてみたら、滑って転んでいたのである。
まだまだ他にもある。老眼鏡を無くしたと言って困り果てていたので探したところ、なぜか、老眼鏡が冷蔵庫の卵入れのところに入っていたりする。
『あら、なんで、こんなところに?』
敏子は驚いていたが、その後も、似たようなことをやっている。アルツハイマーとか、そういうのではないと思いたいけれど、どうも、敏子は危なっかしい。
その事を説明すると藤宮は頷いた。
「うん、分かった。敏子ばぁちゃんを守ると誓うよ。今朝、ばぁちゃんが弁当を作ってくれたんだ。オレ、まじでラッキー」
「敏子さん、話し相手が出来て喜んでいるみたい。藤宮さんが来てくれて張り合いができたのね。きっと、息子さんも安心してると思います」
そんな会話をしながら昇降口まで来ると藤宮は笑顔で去って行った。
しかし、その様子を見たメイが顔をしかめてしまう。
教室に入ろうとした時、背後から来たメイに言われた。
「邪魔だから、どいて」
「……」
反射的に先を譲る。
里歌は、うっすらと漂う悪意のようなものに気付いていたけれど、あえて感じないふりをしたのである。
☆
最近、学内ですれ違うと、藤宮は向こうから笑いかけてくるようになっている。
年下の里歌に対して、彼は常にさんづけで呼んでくれている。藤宮は何か分からないことがあると里歌に聞いてくるようになっていた。
お昼休み。たまたま、学生食堂で顔を合わせた時、向こうから聞いてきた。
「昨日、回覧板が来たんだよ。あれ、君の家にも来たよね。あれ、何の会費?」
世帯主だけが払えばいいものだと答えた後で里歌は付け加えておいた。
「でも、町内で行う夏祭りとかに参加したい人は払う方がいいみたいですよ。それと、ゴミ出しに関してなんですけど……」
これまた、ちよっとした規約がある。何しろ、敏子の家のゴミは藤宮が捨てる約束になっている。猫と同居するからには、猫の砂をどう廃棄するのかという問題もある。
それに、まだまだ藤宮に教えたいこともある。
「実は、うちの近所を点々と訪問する野良猫がいるんですよ。その猫は、もう去勢されています。いわゆる地域猫なので、ブラッと遊びに来た時は、撫でてやってください。その猫は全身が真っ黒で名前はトムです。獣医さんが名付けました」
「へーえ。そうなんだ?」
「トムは、敏子おばぁちゃんの庭でウンコをすると思います。その時は、よろしく頼みます」
「えっ、どういうこてと?」
「プランターにウンコをするので、そのウンコをスコップですくって、別のプランターに埋めて下さい。敏子おばぁちゃんはそうやって肥料として後で使ってるみたいです」
果たして、それが正しい処置なのかどうか。
里歌も分からないけれど、敏子はそうしてきたのだ。
「なるほど、さすらい猫のトムのウンコの処理もしろということか」
「トムは外をうろついてるので、蚤には気を付けてくださいね。噛まれたらものすごく痒いですよ」
「うわっ、それはちょっと困るな」
これは、ご近所さん同士のたわいもない会話である。
それでも、その様子を見た安西メイは気に食わないのか、横目で里歌を睨んでいたのだ。
☆
放課後、メイはいつもの三人組でカフェに集まり鬱憤を晴らそうとした。メイの取り巻き達も、メイと同じ気持ちなのか露骨に顔をしかめている。
「何なの。ありえなーい。なんで、あんな地味な高山と藤宮さんが親しそうにしてんのよ」
「聞いた話だけど、高山さんが猫のベビーシッターをしたらしいよ。藤宮さん、猫が飼える古民家を高山さんに紹介してもらったみたい」
「ゲッ。高山、あざといわぁ~」
葉奈子が言うと、メイも吐き捨てるように言い放つ。
「山形のこけしみたいな顔して、藤宮さんに媚びを売るなんてさ、百万年、早いっつーの。バーカ」
このところ、藤宮と里歌が話す様子をやけに見かけるものだから気に入らない。今朝も、二人は並んで語り合いながら登校していた。同じ時間に家を出て、同じ電車に乗るので、当然のように顔を合わせることになる。
(何なの。高山、調子に乗ってるよ)
メイの苛立ちと嫉妬は日に日に高まっていく。メイとしては、里歌が目障りでしょうがない。そのせいか、メイクのノリも悪い。
(こんなに可愛いあたしをフッておきながら、なんで、貧乏くさいこけしなんかと喋ってるのよ?)
里歌のような地味な女が藤宮と話をするなんて。マジでムカムカする。あの女、何とか懲らしめてやりたい。思い知らせてやりたい。とまあ、こんなふうにして黒い感情が渦巻いていく。
感想 0
あなたにおすすめの小説
マイ・フェア・キャット☆
美緒ある夜、御曹司の朱里とトラ猫のジュリの魂が入れ替わってしまう。
飼い主である由布子は、魂が、コロコロと入れ替わるジュリと朱里に翻弄されながらも、御曹司の朱里のことを理解するようになる。
コメディです。
ベータだった俺が後天性オメガになったら、幼馴染アルファがもっと過保護になりました
一ノ瀬麻紀ごく普通のベータとして生きてきた村井圭太(むらいけいた)は、ある日突然、希少な「後天性オメガ」に転化してしまう。
不安な日々が始まる……かと思いきや、幼馴染アルファの白河泰雅(しらかわたいが)とはまさかの両思い。早々に『番(つがい)』となり、幸せな日々を送っていた。
「オメガになっても俺は俺」と持ち前のポジティブさで新しい生活に向き合っていく圭太。だが、晴れて番となった泰雅は、今まで以上に過保護になっていく。
どんなトラブルも二人なら大丈夫! ポジティブで男前な元ベータ受けと、過保護で執着強めなスパダリ幼馴染攻め。明るくて幸せいっぱいオメガバース!
初日(6/2)は、7:00に2話、21:00に2話の、計4話更新
月〜木は1日2回 7:00 21:00
金〜日は1日3回 7:00 12:00 21:00
6/19(金)の21:00完結です。
全45話。約11万文字です。
私の大好きなオメガバース。
愛をたくさん詰め込んだので、みなさまにも楽しんでいただけますように🥰
痛いのは、歯だけじゃない
moaその子は、痛いと言わなかった。
我慢することに慣れてしまった子どもたちが、
ひとり、またひとりと訪れる歯科クリニック。
そこにいるのは、
容赦なく現実を突きつける歯科医・鬼崎。
「逃げるな。」
その言葉の先で、
彼は“本当の痛み”に向き合う。
ーーー痛いのは、歯だけじゃない。
これは、見過ごされてきた痛みを、
ひとつずつ拾い上げていく物語。
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
合鍵を断った夜、彼は転勤を決めた
ちょこまろ合鍵を差し出された夜、私は笑って断った。
「重くない?」
本当は嬉しかった。
彼の生活に入れることが、泣きたいほど嬉しかった。
けれど、愛されるほど怖くなる。
大事にされるほど、失う日のことを考えてしまう。
だから私は、平気なふりをした。
重くない女のふりをした。
寂しいとも、会いたいとも言えなかった。
その三日後。
私は彼の転勤を、本人ではなく職場の人から聞く。
大阪へ行く彼。
受け取れなかった合鍵。
言えなかった本音。
このまま物分かりのいい顔で見送れば、きっと彼は本当に遠くなる。
「行かないで」とは言えない。
でも、「別れたくない」は、言わなきゃいけない。
愛されるのが怖かった大人の女性が、
差し出された鍵と想いを、もう一度受け取るまでの
切なくて温かい、すれ違い再生ラブストーリー。
一妻多夫の獣人世界でマッチングアプリします♡
具なっしー前世の記憶を持つソフィアは、綿菓子のような虹色の髪を持つオコジョ獣人の令嬢。
この世界では男女比が極端に偏っており、女性が複数の夫を持つ「一妻多夫制」が当たり前。でも、前世日本人だったソフィアには、一人の人を愛する感覚しかなくて……。
そんな私に、20人の父様たちは「施設(強制繁殖システム)送り」を避けるため、マッチングアプリを始めさせた。
最初は戸惑いながらも、出会った男性たちはみんな魅力的で、優しくて、一途で――。
■ 大人の余裕とちょっと意地悪な研究者
■ 不器用だけど一途な騎士
■ ぶっきらぼうだけど優しい元義賊
■ 完璧主義だけど私にだけ甘えん坊な商人
■ 超ピュアなジムインストラクター
■ コミュ力高めで超甘々なパティシエ
■ 私に一生懸命な天才年下魔法学者
気づけば7人全員と婚約していた!?
「私達はきっと良い家族になれます!」
これは、一人の少女と七人(…)の婚約者たちが、愛と絆を育んでいく、ちょっと甘くて笑える逆ハーレム・ラブコメディ。
という異世界×獣人×一妻多夫×マッチングアプリの、設定盛りだくさんな話。超ご都合主義なので苦手な人は注意!
※表紙はAIです
推しの旦那様に心の声が筒抜けでした!?〜バレた瞬間、毎回キスで黙らされます〜
由香推しに似ているという理由で政略結婚した相手は、冷酷と噂の公爵様。
――のはずが。
(無理、顔が良すぎるんだけど!?尊い!!)
心の声が、なぜか全部本人に聞こえていた。
必死に取り繕うも時すでに遅し。
暴走する脳内実況を止めるたび、旦那様はなぜか――キスしてくる。
「黙らせるのにちょうどいい」
いや全然よくないです!!むしろ悪化してます!!
無表情公爵様 × 心の声だだ漏れ令嬢
甘くて騒がしい新婚生活、開幕。
なないろクロスロード
小桜 凜子――ごめんね、菜々子先輩。結局ずるいのは、わたしの方だった
四月。同じ放送部に入った二年生の一ノ瀬 菜々子と一年生の伊吹 日奈。人間関係において表面上のつきあいしかしてこなかった菜々子の心が、日奈との出会いを通して大きく変わっていく。
菜々子のクラスメートで日奈の幼馴染でもある岩隈 隼はそんな二人をほほえましく見ていたが、ある日、クリスマスイブの夜に菜々子と日奈が「決定的な行き違い」を起こしていたことに気づく。
町を最強寒波がつつんだ一月下旬。ふたたび閉ざされた心で菜々子が発した言葉と日奈の必死の叫びは交錯し、雪が降り続ける幹線道路に響いた。
なにもない「いま、このとき」を生きる放送部員七人がつむぐ、なないろの物語。
切なくも輝きに満ちた日常にこそ、人間が生きる意味があるにちがいない。
※第9回ライト文芸大賞 参加作品 投票・応援ありがとうございました!
※本作は第一部・第二部からなる二部構成です。
※本作はフィクションです。実在の人物・団体・施設・出来事とは関係ありません。なお、作中には神戸市や横浜市などの実在の地名や、それらをモチーフにした場所が登場しますが、描写・設定はすべて物語上の創作によるものです。