5 / 56
転生、そして
5
しおりを挟む
俺は目を覚ました後、しばらく考え込んでいた。
朝の光が窓から差し込み、うっすらと青く部屋の中のものの輪郭を浮かび上がらせていた。調度品は数は少なかったが凝った装飾がされており、木材もいいものを使ってあるのがわかる。
白い寝巻き姿のまま、広いベットの上に胡座をかいて考える
俺の処刑の原因、第二王子アーベル。キャラクターの原案や経歴をまとめたのは俺だったのでその性質はよくわかっている。
表向きは社交的で明るく、誰にでも優しい理想の王子だった。宮廷の誰もが彼を「美しく才能にも恵まれているのに気さくで親しみやすい」と評し、実際、その笑顔と軽妙な会話で人を惹きつける才能を持っていた。
だが、それは表向きの顔に過ぎない。
本当の彼は、王と王妃に愛されず、欠乏感を抱えたまま育った人間だ。第一王子ばかりが後継者として大事にされ、どれだけ努力しても、彼の存在は軽んじられた。
だからこそ、彼は周囲の人間の愛情を渇望し、自分のことを好きになってくれる人にはとことん依存する。一方で、
彼に愛を向けない者、少しでも彼を軽んじる者は容赦なく切り捨てる。
——友人の一人であるリュシアン、つまり現在の俺も、切り捨てられたうちの一人だった。
悪役令嬢である隣国の王女マリーテレーズに王子の情報を流していたという罪で捉えられたはずだ。王子の周りにさえいなければおそらく情報を入手することもそれを流すことも考えられないだろう。
(このまま学園に入るのを拒否するって手もあるが……。両親の意向を考えれば難しいよな)
貴族の子息たちが通う王立学園——俺もリュシアンとして、そこに通うことになる。もともとリュシアンの両親は海沿いに小さな土地を持っているため魔法道具の貿易を営んではいるが、貴族としての位は高くない。学園はいわば位は低い人材と王族を近づけるためのもので、低位の貴族にとっては子供をそこに入れることは王族へのルートを開拓するために欠かせない。
学園に入るために家庭教師をつけるのだってとんでもない金がかかる。転生先の両親の感情を考えると拒否すれば騒ぎになることは必至だ。昼間見た両親は穏やかそうな人たちだったが、息子の反乱とあらばどんな反応をしてくるかわからない。
おかしな死亡フラグに繋がらないためにも、ここで一悶着起こすのは避けたかった。
(しかし…学園に入って接点を持たないってのは無理だよな……いや、待てよ)
不意に閃いた
(そもそもこっちから声をかけなければお近づきになれるような立場ではないよな?)
ゲームの中で、俺——リュシアンは、彼の前で何気なく発した一言が原因で処刑されることになった。アーベルに権力を目的にすり寄ってきた太鼓持ちで、学生時代からアーベルを否定したことはなかったという。声をかけたのもおそらくリュシアンからだろう。中の上くらいの貴族の息子と友情を結ぶメリットは少なくとも王族であればなさそうだ。
おそらくは必死に媚びて関係を作り、仲良くなったと考えるのが妥当だ。
つまり、関わらなければ、彼の前に立つこともなく、そんな未来は訪れない。
(そうだ、できるだけ目立たず、アーベルと距離を取ればいい)
王族と接点のないモブであり続ければ、安全に卒業できるはずだ。俺はそう決意し、極力目立たないよう振る舞うことにした。
朝の光が窓から差し込み、うっすらと青く部屋の中のものの輪郭を浮かび上がらせていた。調度品は数は少なかったが凝った装飾がされており、木材もいいものを使ってあるのがわかる。
白い寝巻き姿のまま、広いベットの上に胡座をかいて考える
俺の処刑の原因、第二王子アーベル。キャラクターの原案や経歴をまとめたのは俺だったのでその性質はよくわかっている。
表向きは社交的で明るく、誰にでも優しい理想の王子だった。宮廷の誰もが彼を「美しく才能にも恵まれているのに気さくで親しみやすい」と評し、実際、その笑顔と軽妙な会話で人を惹きつける才能を持っていた。
だが、それは表向きの顔に過ぎない。
本当の彼は、王と王妃に愛されず、欠乏感を抱えたまま育った人間だ。第一王子ばかりが後継者として大事にされ、どれだけ努力しても、彼の存在は軽んじられた。
だからこそ、彼は周囲の人間の愛情を渇望し、自分のことを好きになってくれる人にはとことん依存する。一方で、
彼に愛を向けない者、少しでも彼を軽んじる者は容赦なく切り捨てる。
——友人の一人であるリュシアン、つまり現在の俺も、切り捨てられたうちの一人だった。
悪役令嬢である隣国の王女マリーテレーズに王子の情報を流していたという罪で捉えられたはずだ。王子の周りにさえいなければおそらく情報を入手することもそれを流すことも考えられないだろう。
(このまま学園に入るのを拒否するって手もあるが……。両親の意向を考えれば難しいよな)
貴族の子息たちが通う王立学園——俺もリュシアンとして、そこに通うことになる。もともとリュシアンの両親は海沿いに小さな土地を持っているため魔法道具の貿易を営んではいるが、貴族としての位は高くない。学園はいわば位は低い人材と王族を近づけるためのもので、低位の貴族にとっては子供をそこに入れることは王族へのルートを開拓するために欠かせない。
学園に入るために家庭教師をつけるのだってとんでもない金がかかる。転生先の両親の感情を考えると拒否すれば騒ぎになることは必至だ。昼間見た両親は穏やかそうな人たちだったが、息子の反乱とあらばどんな反応をしてくるかわからない。
おかしな死亡フラグに繋がらないためにも、ここで一悶着起こすのは避けたかった。
(しかし…学園に入って接点を持たないってのは無理だよな……いや、待てよ)
不意に閃いた
(そもそもこっちから声をかけなければお近づきになれるような立場ではないよな?)
ゲームの中で、俺——リュシアンは、彼の前で何気なく発した一言が原因で処刑されることになった。アーベルに権力を目的にすり寄ってきた太鼓持ちで、学生時代からアーベルを否定したことはなかったという。声をかけたのもおそらくリュシアンからだろう。中の上くらいの貴族の息子と友情を結ぶメリットは少なくとも王族であればなさそうだ。
おそらくは必死に媚びて関係を作り、仲良くなったと考えるのが妥当だ。
つまり、関わらなければ、彼の前に立つこともなく、そんな未来は訪れない。
(そうだ、できるだけ目立たず、アーベルと距離を取ればいい)
王族と接点のないモブであり続ければ、安全に卒業できるはずだ。俺はそう決意し、極力目立たないよう振る舞うことにした。
610
あなたにおすすめの小説
【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。
明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。
新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。
しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…?
冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】
ゆらり
BL
帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。
着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。
凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。
撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。
帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。
独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。
甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。
※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。
★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!
転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~
トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。
突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。
有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。
約束の10年後。
俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。
どこからでもかかってこいや!
と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。
そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変?
急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。
慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし!
このまま、俺は、絆されてしまうのか!?
カイタ、エブリスタにも掲載しています。
無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~
紫鶴
BL
早く退職させられたい!!
俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない!
はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!!
なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。
「ベルちゃん、大好き」
「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」
でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。
ーーー
ムーンライトノベルズでも連載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる