【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵

文字の大きさ
56 / 56
おまけ

閑話〜グロリエッテにて、マリーテレーズとゼムクの第二部への序章〜

しおりを挟む
夜風が石造りの回廊を抜け、グロリエッテのランプを揺らした。
 眼下には、月明かりに照らされた花壇と噴水が静かに浮かんでいる。

「……今日ね、母上から新しい縁談をいただいたの」
 マリーテレーズは手すりに身を預け、涼やかな声で言う。

「左様でしたか。お嬢様も休まる暇がありませんね」

そこに付き従うゼムクが彼女の肩に薄いショールをかける

「辺境伯様ですって。いかにも武勇自慢のワイルド系。悪いけれど、私の好みじゃないわ。アーベル様たち会いにいく算段も作らなければならないし、お断りするつもりだったのよ…でも」
「でも?」

彼女の瞳がきらりと光る。
「でも――その方には、ずっとそばに付き従う幼馴染みの従者がいるのでしょう?」

 ゼムクは眉を上げた。辺境伯の縁談の話は知っており、その身辺を二週間ほど間者をつけて探らせていた。報告書のメモの中に18回の外出の中で16回付き従っているマシューという長身の青年がいたはずだ。幼い頃からの付き合いで身分差にも関わらず砕けた口調で話しているという。

マシューの方が年上らしいのだが少し童顔で可愛らしい顔立ちをしていると言う情報を報告すべきか悩むがあまり暴走されても困るので言わないでおくことにした。

「流石お嬢様。我々が間者を使って数週間かけて調べるものを野性の勘ですっぱ抜いてしまうとは。」
「ふふ・・・これはあくまで私の推測ですが…」
 マリーテレーズが白檀のセンスで口元を隠す。

「辺境伯と幼馴染みの従者。片や武勇の華、片や陰に寄り添う影。主従でありながら絆は誰よりも深くて――これはもう、尊い以外に言葉がないわ!」

マシューと辺境伯は、(疑問も持たなかったので調べてすらいないが)普通の友人同士だと思うがーー

「辺境伯にお会いになりますか?」
「そうねえ……」

 両手を胸の前で組み、彼女は夢見るように微笑んだ。
「ふふ……お母様の顔を立てるためにも、お会いしてみようかしら。ええ、決して二人を並べて見たいとか、そのようなやましい話ではないのよ?」

 ゼムクはアルカイックスマイルを浮かべながら夜風に吹かれていた。
 彼女の嗅覚――いや執念は、時に現実すらねじ曲げるのかもしれない。

ーーー
お読みいただきありがとうございます!「転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい!」に続きます!

https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668

いいね、エール、お気に入りいただけますと幸いです。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】

瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。 そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた! ……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。 ウィル様のおまけにて完結致しました。 長い間お付き合い頂きありがとうございました!

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり
BL
 帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。  着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。  凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。  撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。  帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。  独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。  甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。  ※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。 ★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!

転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~

トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。 突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。 有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。 約束の10年後。 俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。 どこからでもかかってこいや! と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。 そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変? 急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。 慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし! このまま、俺は、絆されてしまうのか!? カイタ、エブリスタにも掲載しています。

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。

処理中です...