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第三部
傷跡
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尋ねていいのかとのためらいもあったけれど、聞かずにはいられなかった。
「ああ、すまない」
「……え?」
どうして謝られるの? まだ何も言っていないのに……
「見苦しかっただろう?」
言われた言葉を理解するのに三呼吸ほどかかった。見苦しい、って……
「そんなわけでは……」
「以前、身の回りの世話をした侍女に悲鳴をあげられた。だからなるべく目につかないようにしていたのだが」
「そ、そうだったんですね」
どうして今まで気付かなかったのかと思ったけれど、ヴォルフ様が隠していたのなら納得だわ。部屋がいつも暗かったのもそのせいだった?
「どこでそんな傷を……」
「騎士見習いをしていた話を覚えているか?」
「ええ」
「半分はその夜盗討伐で部隊が全滅した時に、残りは影になってからだ」
夜盗に裏をかかれてヴォルフ様以外の騎士が亡くなったあの事件で……淡々と語られるヴォルフ様の壮絶な過去。比類なき強さをお持ちだけど、生まれた時からそうだったわけじゃないのだ。
「すまなかった。これからは控える」
「ま、待ってください!」
立ち上がろうとする気配を感じて思わず腕に抱きついてしまった。でも、そうしないとヴォルフ様との間に壁が出来てしまいそうな気がしたから。私はどんなヴォルフ様も、影として人に言えないことをしていたヴォルフ様も受け入れたい。傷があってもなくても想いは変わらないわ。
「傷なんて気になりませんわ」
「だが、気持ちのいいものではないだろう? 今は服で隠れているが大きいものもある。不快になるものをわざわざ目にすることはない」
「いいえ、ヴォルフ様に不快なところなんてありません。見せてください」
思わず大きな声が出てしまったけれど、ヴォルフ様を不快に思うなんてあり得ないわ。
「やめておけ」
「嫌です」
気遣って下さるのだろうけれど、傷なんかに壁を作られたくないわ。そんな想いを込めてじっとヴォルフ様を見上げた。根比べになってもここで引く気はないわ。
「……わかった」
折れたのはヴォルフ様だった。こういう時、ヴォルフ様は折れてくださる。私の望むようにと。優しさに付け込む形になるけれど、それでも傷なんか気にして欲しくないのよ。私はそのままのヴォルフ様を受け入れたいから。立ち上がって浴槽の縁に腰を下ろし、服をはだけて上半身を晒した。
晒された身体は想像以上に筋肉が付いていて、勇猛な軍馬を思い出させた。肩幅は服で盛られているのかと思ったけれどしっかり筋肉がついているし、胸板も厚くてお腹には幾重にも線が通っている。私なんかとは全く違う身体は別の生き物のよう。男性の裸なんて、十にもならない頃の兄しか知らないから驚きしかないわ。でも、それ以上に……
「こんなに……」
驚くのは傷跡の数だった。小さなものが多いけれど、残ったのならそれなりの傷だったはず。大きなものだったらどれくらい痛くて辛かったことか……左胸と右の脇に長く走る傷跡がある。これって相当なものだったんじゃ……
「痛かった、ですよね……」
肌の上で存在を主張する傷跡をじっと見つめた。脇腹の傷は塞がっているけれど、その痕は周りの肌よりも黒っぽくなっている。
「色が……」
「毒によるものだ」
「ど、毒?」
「刃に毒が塗られていたせいで肌が変色してしまった。気持ちのいいものではない。見なくていい」
命を狙われ続けていたと聞いたけれど、そんなことが……毒なら傷の痛みだけでなく毒の苦しみもあったでしょうに……どれほどお辛かったかなんて想像も出来ない。
「痛みは?」
「今はない」
「触れても?」
「気持ち悪いだろう? 触れなくていい」
「そんなことはありませんわ」
ダメだと言われていないならいいわよね。そっと傷跡を指で触れる。本当に痛くないのかと見上げた。目が合ったけれど表情は変わらない。痛みを感じていないと思っていいのかしら? 傷口はみみず腫れのように盛り上がり、妙な固さがある。結構深かったのよね? 少し切ったくらいではこんな痕は残らないもの……
「イルーゼ、何を?」
顔を近づけるとヴォルフ様が身体を強張らせたけれど、私は構わずに傷跡に唇を落とした。私にとって不快ではないとの気持ちを表すためにはこれが一番だと思ったから。どんなヴォルフ様もお慕いしているし、傷だろうと否定するなんてとんでもないわ。綺麗事と言われるかもしれないけれど、お前に何が分かると思われるかもしれないけれど、こんな傷でヴォルフ様の価値が損なわれることはないし、私の気持ちも揺るがない。
「この傷はヴォルフ様が生きて来た証です。それを否定するなんて烏滸がましいことは出来ません」
そう言って今度は心臓の側にある傷に口付けた。唇が触れる瞬間、僅かにヴォルフ様の肌が湧きたった。こそばかったかしら?
「変な奴だな、お前は」
「そんなことはありませんわ」
「傷跡に口を付けるなど……、いや、お前はそういう奴だったな」
「それって、どういう意味ですの?」
ヴォルフ様の中で私はどんな風にみられているのかしら? 普通の令嬢や夫人とは違うと、変わっている奴だと思われているのは知っているわ。何度か言われたから。だけど、具体的にどう思っているのかを聞いたことはないのよね。
「気遣うべきだと思うことも、お前にかかると大したことではなくなる」
「それはきっと相手がヴォルフ様だからですわ」
思わず笑みが浮かんでしまったわ。だけど、好きだからヴォルフ様のことは何でも知りたいしどんなことも受け入れたい。些細なことでもヴォルフ様にとっての一番でいたいと思ってしまう。
「お前は、何でも受け入れすぎる」
珍しく声に力がないように感じた。どうなさったのかしら?
「あら、誰にでもそんなわけじゃありませんわ。ヴォルフ様だけです」
努めて明るく告げた。なんだかヴォルフ様が不安に感じているように感じたから。いえ、あのお強いヴォルフ様に限ってそんなことはないと思うけれど、誰だって気弱になることだってあるはずだから。
「毒を、受けたのですね? その影響は……」
毒によっては長い年月をかけて身体を蝕むものもあるとマルガから教わったわ。子どもの頃に受けた傷ならもう二十年くらい経っているけれど大丈夫なのかしら? 不安が急速に心を冷やして鳥肌が立った。
「解毒したから問題はない」
「この先もですか?」
「ああ」
その言葉に安堵が一気に広がった。共に曾孫が生まれるまでと約束したもの。
「よかったです」
心臓の側にある傷は綺麗だから毒は受けていないのね。他にも火傷らしい痕も見える。きっと背中や足にもあるのでしょうね。背中を見せてほしいと言うと身体をずらして見えるようにして下さった。
「これは……」
筋肉がはっきりとわかる大きな背中にも目立つ傷が二つと、無数の傷があった。背中の傷は毒を受けていないようだけど、親指と人差し指の間くらいの傷がくっきりと残っている。強すぎると思うほどに強いヴォルフ様だけど、そうなるのは簡単ではなかったのだ。それでも生きるためには戦い続けるしかなくて……
「イルーゼ?」
気が付いたら後ろからヴォルフ様の背中を抱きしめていた。ヴォルフ様が戸惑ったように私の名を呼ぶ。滑らかに見えた筋肉が頬に触れる。思ったよりもずっと柔らかかった。
「ヴォルフ様、ありがとうございます」
出てきた言葉は自分でも思いもしないものだったけれど、今の私にはこれ以上しっくりくる言葉は思い浮かばなかった。
「どうした?」
「生きていて下さって、ありがとうございます」
そのことに感謝した。誰に? 神様でもなく先王ご夫妻でもお義父様でもない、ヴォルフ様に。
「諦めず、逃げ出さず、生きることを選び続けてくださってありがとうございます」
ヴォルフ様は何も返さない。きっと私の言葉の真意を測りかねているのかもしれない。唐突だから当然よね。私も何を言っているのかと思っているし、急にこんなことを言われたら返事に困るわ。
「俺は人殺しだぞ?」
「ああ、すまない」
「……え?」
どうして謝られるの? まだ何も言っていないのに……
「見苦しかっただろう?」
言われた言葉を理解するのに三呼吸ほどかかった。見苦しい、って……
「そんなわけでは……」
「以前、身の回りの世話をした侍女に悲鳴をあげられた。だからなるべく目につかないようにしていたのだが」
「そ、そうだったんですね」
どうして今まで気付かなかったのかと思ったけれど、ヴォルフ様が隠していたのなら納得だわ。部屋がいつも暗かったのもそのせいだった?
「どこでそんな傷を……」
「騎士見習いをしていた話を覚えているか?」
「ええ」
「半分はその夜盗討伐で部隊が全滅した時に、残りは影になってからだ」
夜盗に裏をかかれてヴォルフ様以外の騎士が亡くなったあの事件で……淡々と語られるヴォルフ様の壮絶な過去。比類なき強さをお持ちだけど、生まれた時からそうだったわけじゃないのだ。
「すまなかった。これからは控える」
「ま、待ってください!」
立ち上がろうとする気配を感じて思わず腕に抱きついてしまった。でも、そうしないとヴォルフ様との間に壁が出来てしまいそうな気がしたから。私はどんなヴォルフ様も、影として人に言えないことをしていたヴォルフ様も受け入れたい。傷があってもなくても想いは変わらないわ。
「傷なんて気になりませんわ」
「だが、気持ちのいいものではないだろう? 今は服で隠れているが大きいものもある。不快になるものをわざわざ目にすることはない」
「いいえ、ヴォルフ様に不快なところなんてありません。見せてください」
思わず大きな声が出てしまったけれど、ヴォルフ様を不快に思うなんてあり得ないわ。
「やめておけ」
「嫌です」
気遣って下さるのだろうけれど、傷なんかに壁を作られたくないわ。そんな想いを込めてじっとヴォルフ様を見上げた。根比べになってもここで引く気はないわ。
「……わかった」
折れたのはヴォルフ様だった。こういう時、ヴォルフ様は折れてくださる。私の望むようにと。優しさに付け込む形になるけれど、それでも傷なんか気にして欲しくないのよ。私はそのままのヴォルフ様を受け入れたいから。立ち上がって浴槽の縁に腰を下ろし、服をはだけて上半身を晒した。
晒された身体は想像以上に筋肉が付いていて、勇猛な軍馬を思い出させた。肩幅は服で盛られているのかと思ったけれどしっかり筋肉がついているし、胸板も厚くてお腹には幾重にも線が通っている。私なんかとは全く違う身体は別の生き物のよう。男性の裸なんて、十にもならない頃の兄しか知らないから驚きしかないわ。でも、それ以上に……
「こんなに……」
驚くのは傷跡の数だった。小さなものが多いけれど、残ったのならそれなりの傷だったはず。大きなものだったらどれくらい痛くて辛かったことか……左胸と右の脇に長く走る傷跡がある。これって相当なものだったんじゃ……
「痛かった、ですよね……」
肌の上で存在を主張する傷跡をじっと見つめた。脇腹の傷は塞がっているけれど、その痕は周りの肌よりも黒っぽくなっている。
「色が……」
「毒によるものだ」
「ど、毒?」
「刃に毒が塗られていたせいで肌が変色してしまった。気持ちのいいものではない。見なくていい」
命を狙われ続けていたと聞いたけれど、そんなことが……毒なら傷の痛みだけでなく毒の苦しみもあったでしょうに……どれほどお辛かったかなんて想像も出来ない。
「痛みは?」
「今はない」
「触れても?」
「気持ち悪いだろう? 触れなくていい」
「そんなことはありませんわ」
ダメだと言われていないならいいわよね。そっと傷跡を指で触れる。本当に痛くないのかと見上げた。目が合ったけれど表情は変わらない。痛みを感じていないと思っていいのかしら? 傷口はみみず腫れのように盛り上がり、妙な固さがある。結構深かったのよね? 少し切ったくらいではこんな痕は残らないもの……
「イルーゼ、何を?」
顔を近づけるとヴォルフ様が身体を強張らせたけれど、私は構わずに傷跡に唇を落とした。私にとって不快ではないとの気持ちを表すためにはこれが一番だと思ったから。どんなヴォルフ様もお慕いしているし、傷だろうと否定するなんてとんでもないわ。綺麗事と言われるかもしれないけれど、お前に何が分かると思われるかもしれないけれど、こんな傷でヴォルフ様の価値が損なわれることはないし、私の気持ちも揺るがない。
「この傷はヴォルフ様が生きて来た証です。それを否定するなんて烏滸がましいことは出来ません」
そう言って今度は心臓の側にある傷に口付けた。唇が触れる瞬間、僅かにヴォルフ様の肌が湧きたった。こそばかったかしら?
「変な奴だな、お前は」
「そんなことはありませんわ」
「傷跡に口を付けるなど……、いや、お前はそういう奴だったな」
「それって、どういう意味ですの?」
ヴォルフ様の中で私はどんな風にみられているのかしら? 普通の令嬢や夫人とは違うと、変わっている奴だと思われているのは知っているわ。何度か言われたから。だけど、具体的にどう思っているのかを聞いたことはないのよね。
「気遣うべきだと思うことも、お前にかかると大したことではなくなる」
「それはきっと相手がヴォルフ様だからですわ」
思わず笑みが浮かんでしまったわ。だけど、好きだからヴォルフ様のことは何でも知りたいしどんなことも受け入れたい。些細なことでもヴォルフ様にとっての一番でいたいと思ってしまう。
「お前は、何でも受け入れすぎる」
珍しく声に力がないように感じた。どうなさったのかしら?
「あら、誰にでもそんなわけじゃありませんわ。ヴォルフ様だけです」
努めて明るく告げた。なんだかヴォルフ様が不安に感じているように感じたから。いえ、あのお強いヴォルフ様に限ってそんなことはないと思うけれど、誰だって気弱になることだってあるはずだから。
「毒を、受けたのですね? その影響は……」
毒によっては長い年月をかけて身体を蝕むものもあるとマルガから教わったわ。子どもの頃に受けた傷ならもう二十年くらい経っているけれど大丈夫なのかしら? 不安が急速に心を冷やして鳥肌が立った。
「解毒したから問題はない」
「この先もですか?」
「ああ」
その言葉に安堵が一気に広がった。共に曾孫が生まれるまでと約束したもの。
「よかったです」
心臓の側にある傷は綺麗だから毒は受けていないのね。他にも火傷らしい痕も見える。きっと背中や足にもあるのでしょうね。背中を見せてほしいと言うと身体をずらして見えるようにして下さった。
「これは……」
筋肉がはっきりとわかる大きな背中にも目立つ傷が二つと、無数の傷があった。背中の傷は毒を受けていないようだけど、親指と人差し指の間くらいの傷がくっきりと残っている。強すぎると思うほどに強いヴォルフ様だけど、そうなるのは簡単ではなかったのだ。それでも生きるためには戦い続けるしかなくて……
「イルーゼ?」
気が付いたら後ろからヴォルフ様の背中を抱きしめていた。ヴォルフ様が戸惑ったように私の名を呼ぶ。滑らかに見えた筋肉が頬に触れる。思ったよりもずっと柔らかかった。
「ヴォルフ様、ありがとうございます」
出てきた言葉は自分でも思いもしないものだったけれど、今の私にはこれ以上しっくりくる言葉は思い浮かばなかった。
「どうした?」
「生きていて下さって、ありがとうございます」
そのことに感謝した。誰に? 神様でもなく先王ご夫妻でもお義父様でもない、ヴォルフ様に。
「諦めず、逃げ出さず、生きることを選び続けてくださってありがとうございます」
ヴォルフ様は何も返さない。きっと私の言葉の真意を測りかねているのかもしれない。唐突だから当然よね。私も何を言っているのかと思っているし、急にこんなことを言われたら返事に困るわ。
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