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二人を呼び出した理由

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「いやぁ、すまなかった。まさかベルがラフォン家の令嬢と懇意にするとは思わなくて」

 あれからお互いに自己紹介をし合った私達は、今、一緒に食後のお茶を頂いていました。三人は幼馴染で、ロイク様はベルティーユ様の婚約者で、クレマン様はそのロイク様の親友なのだそうです。私とは派閥が違ったのもあり、殆ど交流がなかったので知りませんでしたわ。ロイク様は随分砕けた物言いをされる方のようですが、クレマン様は物静かな方のようです。

「それで、何で俺たちを呼び出したんだ?」

 人心地着くと、ロイク様がそう切り出しました。確かにどうしてベルティーユ様がお二人を呼んだのか、まだ聞いていませんでしたわね。

「ああ、二人にお願いしたい事があったのよ」
「はぁ、お願い?お前がか?珍しい事もあるもんだな」
「うるさいわねぇ!私だけなら頼まないわよ」
「だったら…ラフォン嬢の事か?」
「察しがいいわね。そうなの。彼女、殿下に付きまとわれそうなのよ」
「はぁ?あんだけ派手に婚約破棄したのにか?」
「そう思うのだけど、今朝教室に押しかけてきたのよ」

 ベルティーユ様はお二人に、今朝の経緯と殿下が考えていそうな事を話しました。それは殿下が婚約破棄を後悔して、私に復縁を迫る可能性がある事も、でした。

「まぁ、真っ当な神経をお持ちなら普通はあり得ないけど…」
「真っ当な神経の持ち主は、あんな婚約破棄はしないわな。その前に浮気も」
「そういう事。ああ、あとバルト公爵家の嫡男もね」
「ああ?バルト公爵家って…ラザールか?」
「そう。婚約の申し入れを断ったのに、諦めないらしくて…」
「あ、あ~…」

 ロイク様達は一学年上らしく、バルト公爵の嫡男の事をご存じでした。どこか困ったような表情からすると、いい印象はないようですわね。

「あいつかぁ…最近女といるのを見かけなくなったと思ったら…そういう事か」
「ああ、そうなのね。それでね、出来れば昼休みとかは一緒に過ごして欲しいの」
「はぁ、なるほど、虫除けって事か」

 今さらっと、当然のようにロイク様が殿下とバルト公爵の嫡男を虫扱いされましたが…いいのでしょうか…

「そういう事。私だけじゃレティシア様を守れないもの。学園内には護衛は連れて来れないでしょ?…って、何よ?」

 ベルティーユ様の話を聞いたロイク様が、意外だと言わんばかりの表情でベルティーユ様を見ていて、それにベルティーユ様が気付いたようです。

「いや、お前が他人にそんな風に気遣うの、初めて見たなぁと思って」
「な、何よ、それ」

 ロイク様の言葉に、ベルティーユ様が不服そうにロイク様を見上げました。それでわかりましたが、ベルティーユ様がこんな風に私に構うのは珍しいのですね。一体どうしてでしょうか…

「嫌だってお前、自分の事は自分でするべきだって、必要以上に誰かを構う事なんてしなかったじゃないか」
「そっ、それは…だって、こうなったのは殿下の婚約者になったせいで…も、もしかしたら私が婚約者に指名されていたかもしれないもの…そうなっていたら…」
「ああ、お前って、そういうところ、可愛いよな」
「な…!」

 ロイク様のベルティーユ様の顔が、その髪色と同じく真っ赤になってしまいました。ロイク様ったら…意外にも女性の、いえ、ベルティーユ様の扱いが上手ですのね。
 仲が悪いのかと思っていましたが…実際はとても仲がよかったみたいです。私の両親も仲がいいけれど、このお二人の場合はまた一味違いますわね。

(私もリシャール様とこんな風に…)

 なれるかしら?と思ったけれど、自分がリシャール様にあんな風に話せる姿が想像出来ませんでした。


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