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予想外の展開に…
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私への誕生日プレゼントだと言って高額な商品をツケ払いで持って行った、グラネ伯爵家の若夫人。影の報告から、彼女が帰る先はとある貴族の屋敷だと判明しました。そこは数年前に持ち主の貴族が財政難で手放したものですが、最近その屋敷に引っ越してきたそうです。
(最近という事は…ルクレールから?)
ルクレール国にはグラネ伯爵家という家名がありますし、最近彼の国との関係が強化されたのもあって王都に屋敷を構える貴族が増えているので可能性はあるのですよね。今のところ支払いの滞納も値切る事もないし、横柄なのは貴族にはよくある事で、こうなると怪しいのは私の紹介と言っている点だけです。念のため商会の協会に対して、勝手に我が家の紹介を騙る者が出ているので注意するようにとの通達を出したので、店側も警戒してくれるでしょう。これと言った決定的な決め手がないので、罪に問うのも難しいところです。直接その若夫人と話せると話は早いのですが…
(それで正体がバレたら…目も当てられないのよね…)
リシャール様の店に来る日の凡その見当は付きますが、そうした場合、私だとバレない可能性は皆無ではありません。勿論リシャール様はご存じですからそこはいいとしても、ダニエルさん達は接客業なので意外と目が聡いような気がします。見た目は誤魔化せても…さすがに声までは変えられませんし…
「ちょっとあなた」
「え?」
「え?じゃないわよ、さっきから呼んでいるのに…」
「ご、ごめんなさい」
そうでした、今は学園でランチタイムです。リシャール様のお店の事を考えていて、すっかりトリップしていましたわ…ベルティーユ様が呆れ半分怒り半分で睨んできますが…美人なだけに怖いですわね。
「ええっと…何でしたっけ?」
「もう、やっぱり聞いていなかったのね!」
「ご、ごめんなさい…」
「まぁ、いいわ。お詫びに今日付き合いなさいな」
「付き合いなさいって…」
「近々、姉の誕生日なのよ。だからそのプレゼントを見に行きたいの。それに付き合ってちょうだい」
「今日?」
「ええ?何か予定でも?」
今日は…出勤日ではありませんし、特に問題はないですわね。こうして友達と放課後に出掛ける事も初めてです。
「いえ、特には…」
「じゃあ、決まりね!「ヴァン ダンジュ」に行くわよ!」
「…え?ええっ?そ、それって…」
「そうよ。あなたがご執心の相手の店よ。一度顔を拝んでみたかったのよね」
「そ、それはちょっと…」
「なによ?何かまずい事でも?」
「え、えっと…」
まずいというか、あそこで働いているので出来れば行きたくないのですが…でも、その事はベルティーユ様にも内緒なので、言うに言えないのですよね…
「じゃ、いいじゃないの。それにお姉さまもあのお店を気にしているのよ」
「ええっ?!」
ベルティーユ様のお姉さまって、第二王子殿下の…それはそれで大変光栄な事ですわ。さすがです、リシャール様!じゃなくて…
「そういうわけだから、よろしくね」
にっこりと笑みを浮かべたベルティーユ様でしたが…私は否やと答える事も出来ず、背中に嫌な汗が流れるのをただ耐えるしかありませんでした。
(どうか何事もなく終わりますように…)
いつかはリシャール様のお店にお客様として…と思ってはいましたが、こんな、クビをかけた綱渡り状態での訪問になるとは思いもしませんでした。
(最近という事は…ルクレールから?)
ルクレール国にはグラネ伯爵家という家名がありますし、最近彼の国との関係が強化されたのもあって王都に屋敷を構える貴族が増えているので可能性はあるのですよね。今のところ支払いの滞納も値切る事もないし、横柄なのは貴族にはよくある事で、こうなると怪しいのは私の紹介と言っている点だけです。念のため商会の協会に対して、勝手に我が家の紹介を騙る者が出ているので注意するようにとの通達を出したので、店側も警戒してくれるでしょう。これと言った決定的な決め手がないので、罪に問うのも難しいところです。直接その若夫人と話せると話は早いのですが…
(それで正体がバレたら…目も当てられないのよね…)
リシャール様の店に来る日の凡その見当は付きますが、そうした場合、私だとバレない可能性は皆無ではありません。勿論リシャール様はご存じですからそこはいいとしても、ダニエルさん達は接客業なので意外と目が聡いような気がします。見た目は誤魔化せても…さすがに声までは変えられませんし…
「ちょっとあなた」
「え?」
「え?じゃないわよ、さっきから呼んでいるのに…」
「ご、ごめんなさい」
そうでした、今は学園でランチタイムです。リシャール様のお店の事を考えていて、すっかりトリップしていましたわ…ベルティーユ様が呆れ半分怒り半分で睨んできますが…美人なだけに怖いですわね。
「ええっと…何でしたっけ?」
「もう、やっぱり聞いていなかったのね!」
「ご、ごめんなさい…」
「まぁ、いいわ。お詫びに今日付き合いなさいな」
「付き合いなさいって…」
「近々、姉の誕生日なのよ。だからそのプレゼントを見に行きたいの。それに付き合ってちょうだい」
「今日?」
「ええ?何か予定でも?」
今日は…出勤日ではありませんし、特に問題はないですわね。こうして友達と放課後に出掛ける事も初めてです。
「いえ、特には…」
「じゃあ、決まりね!「ヴァン ダンジュ」に行くわよ!」
「…え?ええっ?そ、それって…」
「そうよ。あなたがご執心の相手の店よ。一度顔を拝んでみたかったのよね」
「そ、それはちょっと…」
「なによ?何かまずい事でも?」
「え、えっと…」
まずいというか、あそこで働いているので出来れば行きたくないのですが…でも、その事はベルティーユ様にも内緒なので、言うに言えないのですよね…
「じゃ、いいじゃないの。それにお姉さまもあのお店を気にしているのよ」
「ええっ?!」
ベルティーユ様のお姉さまって、第二王子殿下の…それはそれで大変光栄な事ですわ。さすがです、リシャール様!じゃなくて…
「そういうわけだから、よろしくね」
にっこりと笑みを浮かべたベルティーユ様でしたが…私は否やと答える事も出来ず、背中に嫌な汗が流れるのをただ耐えるしかありませんでした。
(どうか何事もなく終わりますように…)
いつかはリシャール様のお店にお客様として…と思ってはいましたが、こんな、クビをかけた綱渡り状態での訪問になるとは思いもしませんでした。
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