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かみ合わない会話
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迎えられた彼の家の応接室。久しぶりに会った彼女は…少し痩せたように見えたし、心なしか顔色が悪く見えた。強い光を放った瞳に今は力もなく、目の下に隈が出来ていて、何がこんなに彼女を焦燥させたのかと驚きを隠せなかった。
そんな彼女を前にして、どう話を切り出したものか…彼女も何かを感じているのか先ほどから俯きがちで何も言って来ないのも不安になった。それでも、手を伸ばさなければ何も手に入らないのだと自分を奮い立たせた。さすがに人生を大きく変える局面なのだと思うと、これまでにない緊張を感じた。
「…私は爵位も何もない身でございますが、それでもよろしければ、謹んでお受けいたします」
「…は、はい。非常に残念ですが…承りました。これまで…ありがとうございました」
(…な、何を、言って…?)
返事に対して返ってきた言葉は想定外のものだった。答えを告げる前から、思いつめたような表情だったのも気になった。痛々しいという表現そのままの笑顔を浮かべた彼女の、返してきた言葉をどう受け止めるべきなのかがわからず、戸惑いが増した。
「求婚を、お受けすると申し上げたのですが…」
彼女の真意を確かめるために尋ねた声に、自分も動揺しているのを自覚したが…幸いにも声が震える事はなかった。
「きゅ、求婚を、お受け、する?」
「はい」
呆けたような表情で自分の言葉を繰り返した彼女は、暫く茫然と私を見上げていたが、不意に横にいた侍女に顔を向けた。一体どうしたというのか…
「…コ、コレット、どうしよう…私、耳がおかしくなってしまったのかしら?」
出てきた言葉の意味が分からず、私だけでなくその侍女も困惑を隠しきれない様子だった。侍女が彼女に言い聞かせるように、言葉を区切りながら言い直すと、彼女の驚きの表情が徐々に増していくのがわかった。どうやら驚きで声も出ない様子が、喜びゆえなのかその逆なのか、咄嗟に判断がつかなかった。だから…
「ラフォン侯爵令嬢」
「…ひゃ、ひゃいっ!」
「不束な身ではございますが、お嬢様の足かせにならぬよう、精一杯務めさせて頂きます」
ここはもう一度はっきり言うべきだろう思い、彼女の前で跪いて手を取り、もう一度求婚を受ける旨を告げた。何か大きな勘違いを、早とちりをしていると感じたからだ。求婚された時も焦って噛みまくっていたから、今も混乱しているのかもしれない。どうやらそれは正解だったようだったが…手の甲に親愛の意味を込めてキスをしたら…彼女はそのまま倒れこんでしまった。
「ラ、ラフォン嬢?!」
「きゃぁ、お嬢様?どうしたんですか!」
咄嗟に支えた身体は、思いがけず熱かった。
そんな彼女を前にして、どう話を切り出したものか…彼女も何かを感じているのか先ほどから俯きがちで何も言って来ないのも不安になった。それでも、手を伸ばさなければ何も手に入らないのだと自分を奮い立たせた。さすがに人生を大きく変える局面なのだと思うと、これまでにない緊張を感じた。
「…私は爵位も何もない身でございますが、それでもよろしければ、謹んでお受けいたします」
「…は、はい。非常に残念ですが…承りました。これまで…ありがとうございました」
(…な、何を、言って…?)
返事に対して返ってきた言葉は想定外のものだった。答えを告げる前から、思いつめたような表情だったのも気になった。痛々しいという表現そのままの笑顔を浮かべた彼女の、返してきた言葉をどう受け止めるべきなのかがわからず、戸惑いが増した。
「求婚を、お受けすると申し上げたのですが…」
彼女の真意を確かめるために尋ねた声に、自分も動揺しているのを自覚したが…幸いにも声が震える事はなかった。
「きゅ、求婚を、お受け、する?」
「はい」
呆けたような表情で自分の言葉を繰り返した彼女は、暫く茫然と私を見上げていたが、不意に横にいた侍女に顔を向けた。一体どうしたというのか…
「…コ、コレット、どうしよう…私、耳がおかしくなってしまったのかしら?」
出てきた言葉の意味が分からず、私だけでなくその侍女も困惑を隠しきれない様子だった。侍女が彼女に言い聞かせるように、言葉を区切りながら言い直すと、彼女の驚きの表情が徐々に増していくのがわかった。どうやら驚きで声も出ない様子が、喜びゆえなのかその逆なのか、咄嗟に判断がつかなかった。だから…
「ラフォン侯爵令嬢」
「…ひゃ、ひゃいっ!」
「不束な身ではございますが、お嬢様の足かせにならぬよう、精一杯務めさせて頂きます」
ここはもう一度はっきり言うべきだろう思い、彼女の前で跪いて手を取り、もう一度求婚を受ける旨を告げた。何か大きな勘違いを、早とちりをしていると感じたからだ。求婚された時も焦って噛みまくっていたから、今も混乱しているのかもしれない。どうやらそれは正解だったようだったが…手の甲に親愛の意味を込めてキスをしたら…彼女はそのまま倒れこんでしまった。
「ラ、ラフォン嬢?!」
「きゃぁ、お嬢様?どうしたんですか!」
咄嗟に支えた身体は、思いがけず熱かった。
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