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戻ってきた理由
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「リシャール様、お戻りだったんですね」
今朝、朝食の時にお会いしましたが、その後直ぐにお父様と王宮に行ってしまわれましたし、ここ数日はお帰りも遅く、最後に夕食を共にしたのはあの夜会の前夜でした。アドリエンヌ様の一件でお父様は宰相として対処する事が山積みで、新年をゆっくり過ごすつもりでしたのに、それどころではありません。今はお兄様やテオドール様がいらっしゃるのでお父様とリシャール様も一緒に…と思いますのに残念に思っていましたが、こんな時間にお戻りとは、どうしたのでしょうか。
「ええ、実はお話がありまして戻ってきたのです。侯爵が皆様をお呼びしています」
「え?お父様が?」
お父様もお戻りだった上、話があるとはどうした事でしょうか。私は思わずお兄様と顔を見合わせてしまいました。
その後、我が家のサロンに私やお兄様、リシャール様にテオドール様、セレスティーヌ様達が呼ばれました。セレスティーヌ様達を呼びに行ってサロンに向かうと、既にお父様がお母様と一緒に私達を待っていました。
「父上、何かよくない事でも?」
お兄様がそう尋ねましたが、皆さんも同じ思いだったのでしょうか。その表情は固く感じられます。
「ああ、実は…アドリエンヌ王女が…いなくなった」
「え?」
「えええっ?」
「まぁ…」
皆様、それぞれの反応で驚いていますが…暫くはそれ以上の言葉を発する事が出来ませんでした。冷静そうなセレスティーヌ様ですらも驚いて口元に手を当てています。
「あなた…いなくなったって…まさか…」
最初に言葉を発したのは、意外にもお母様でした。
「いなくなったと言っても…アドリエンヌ様には見張りが付いていた筈では…」
「ああ」
私が尋ねると、お父様が苦々しい表情でそう答えられました。実際、王宮の一角で我が国の騎士の監視の下、エストレ国の者全員が軟禁状態だったと聞いています。
「では…誰かが、手引きをしたと?」
「そう言う事になりますな」
セレスティーヌ様が僅かに眉を潜めてそう仰ると、お父様が苦々しい表情でお答えになりました。セレスティーヌ様はアドリエンヌ様のお兄様への執着を私達よりもご存じなので余計に心配なのでしょう。それにお兄様に何かあればセレスティーヌ様自身にも大きな影響が出ます。セレスティーヌ様も本当の恋人と結ばれる事が難しくなるからです。
「一体誰が…そのような事を…」
「今調査中だ。だが…エストレ国から連れてきた男も一緒にいなくなっている」
「一緒に来たというと…」
「あの王女の純潔を散らしたと言われた男だ」
それはあの夜会でアドリエンヌ様が暴露した相手の男性で、エストレ国からついてきたお目付け役的な存在でした。
「あの男もこの件を暴露されて、国に帰れなくなったのだろう。王女を攫ったのか、王女に命じられて逃亡の手伝いをさせられたかはまだわからぬのだ」
お父様の言葉に、その場にいた皆様が表情を曇らせました。どちらにしてもいい話ではないのは確かです。
「レオがいるからここに来る可能性もある。警備を強化したし、王宮からも騎士の増員を手配した。だが…」
お父様はそう仰ると、セレスティーヌ様の方に身体を向けました。
「セレスティーヌ殿下、どうか御身の周りにはご注意下さい」
この家にいる者の中で最も尊い方はセレスティーヌ様です。アドリエンヌ様が何を計画しようとも、セレスティーヌ様とお兄様は私達がお守りしますわ。
今朝、朝食の時にお会いしましたが、その後直ぐにお父様と王宮に行ってしまわれましたし、ここ数日はお帰りも遅く、最後に夕食を共にしたのはあの夜会の前夜でした。アドリエンヌ様の一件でお父様は宰相として対処する事が山積みで、新年をゆっくり過ごすつもりでしたのに、それどころではありません。今はお兄様やテオドール様がいらっしゃるのでお父様とリシャール様も一緒に…と思いますのに残念に思っていましたが、こんな時間にお戻りとは、どうしたのでしょうか。
「ええ、実はお話がありまして戻ってきたのです。侯爵が皆様をお呼びしています」
「え?お父様が?」
お父様もお戻りだった上、話があるとはどうした事でしょうか。私は思わずお兄様と顔を見合わせてしまいました。
その後、我が家のサロンに私やお兄様、リシャール様にテオドール様、セレスティーヌ様達が呼ばれました。セレスティーヌ様達を呼びに行ってサロンに向かうと、既にお父様がお母様と一緒に私達を待っていました。
「父上、何かよくない事でも?」
お兄様がそう尋ねましたが、皆さんも同じ思いだったのでしょうか。その表情は固く感じられます。
「ああ、実は…アドリエンヌ王女が…いなくなった」
「え?」
「えええっ?」
「まぁ…」
皆様、それぞれの反応で驚いていますが…暫くはそれ以上の言葉を発する事が出来ませんでした。冷静そうなセレスティーヌ様ですらも驚いて口元に手を当てています。
「あなた…いなくなったって…まさか…」
最初に言葉を発したのは、意外にもお母様でした。
「いなくなったと言っても…アドリエンヌ様には見張りが付いていた筈では…」
「ああ」
私が尋ねると、お父様が苦々しい表情でそう答えられました。実際、王宮の一角で我が国の騎士の監視の下、エストレ国の者全員が軟禁状態だったと聞いています。
「では…誰かが、手引きをしたと?」
「そう言う事になりますな」
セレスティーヌ様が僅かに眉を潜めてそう仰ると、お父様が苦々しい表情でお答えになりました。セレスティーヌ様はアドリエンヌ様のお兄様への執着を私達よりもご存じなので余計に心配なのでしょう。それにお兄様に何かあればセレスティーヌ様自身にも大きな影響が出ます。セレスティーヌ様も本当の恋人と結ばれる事が難しくなるからです。
「一体誰が…そのような事を…」
「今調査中だ。だが…エストレ国から連れてきた男も一緒にいなくなっている」
「一緒に来たというと…」
「あの王女の純潔を散らしたと言われた男だ」
それはあの夜会でアドリエンヌ様が暴露した相手の男性で、エストレ国からついてきたお目付け役的な存在でした。
「あの男もこの件を暴露されて、国に帰れなくなったのだろう。王女を攫ったのか、王女に命じられて逃亡の手伝いをさせられたかはまだわからぬのだ」
お父様の言葉に、その場にいた皆様が表情を曇らせました。どちらにしてもいい話ではないのは確かです。
「レオがいるからここに来る可能性もある。警備を強化したし、王宮からも騎士の増員を手配した。だが…」
お父様はそう仰ると、セレスティーヌ様の方に身体を向けました。
「セレスティーヌ殿下、どうか御身の周りにはご注意下さい」
この家にいる者の中で最も尊い方はセレスティーヌ様です。アドリエンヌ様が何を計画しようとも、セレスティーヌ様とお兄様は私達がお守りしますわ。
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