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エストレ国の王太子妃?
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(エ、エストレ国の王太子妃?私に…?)
お母様の発言に、私は暫くの間固まってしまいました。
「それって…」
「あの時は既にエルネスト様の婚約者だったから、表面化する前に話は消えたのよ。本当に内々の打診だったから…」
「な、何年も前の話ですよね?」
「ええ」
そうですよね、エルネスト様の婚約者になったのは昔の事ですし、だったら私に打診があったのも随分前の筈…ですよね?
「でも…エストレの王太子殿下は確か…まだ婚約者もいなかった筈ですわ」
「ええっ?」
セレスティーヌ様が言い難そうにそう仰いましたが、それって…
「エストレの王太子殿下は、もう三十歳近かったのでは…」
「ええ。色々と癖がおありの方で、中々相手が決まらないと聞いておりますわ。私も王太子に選ばれるかどうか、という頃に打診がありましたの」
何とセレスティーヌ様にまで打診があったのですか…私に打診があったとは思いもしませんでしたが、我が国には王女殿下はいらっしゃらなかったので、国内の有力貴族の私を…との話だったのでしょうね。でも、既にエルネスト様の婚約者だった、と。
「じょ、冗談ではありませんわ、エストレ国の王太子殿下だなんて。しかもアドリエンヌ様を溺愛している方だなんて、話になりませんわ」
そんなシスコンで三十近くになっても妃が決まらない王太子殿下なんて、絶対に訳あり難ありでしょう。そんな方の妃だなんて絶対に嫌ですわ。そんな事になったらもれなくアドリエンヌ様のお守も付いてきそうですし、事ある毎に兄王子に泣きついて私を悪者にする未来が目に見えています。それに比べたらエルネスト様の方がずっとマシですわ。
それに…お兄様への仕打ちを思えば、あの王女を野放しにしていた王族なんて絶対に許せません。あの王女のせいで、我が家はどれほど苦労し、心配して来た事か…しかも後継者だったお兄様がリスナール国の王配になる事にしたのも、あの王女のせいなのです。
それに私には、リシャール様と言う最愛で何よりも大切な方がいるのです。王太子だろうが何だろうが、私には芋やカボチャと同じです。いえ、それでは芋やカボチャに失礼ですわね、どちらも私は好きですから。
「まさか…王太子殿下が自ら来たのって…」
「レティに求婚…の可能性は低いとは思うけど…」
「でも、あのアドリエンヌ様の兄君なのが不安の種ですわね」
セレスティーヌ様も私と同じ不安を感じていらっしゃるようですが…あの国の王族は大丈夫なのでしょうか。どうせ来るならアドリエンヌ様に厳しいと噂の王妃様がよかったですわ…
「心配しないで、レティ。何があっても私もお父様も貴女を守るわ」
「そうよ、レティ。それに私がリスナール国に行くのだから、この家の後継はレティよ。今更他国に嫁ぐなんて事はあり得ないわ」
「そ、そうですよね…」
そうです、既にお兄様はセレスティーヌ様の王配になると決まっていますし、そうなれば私しか跡取りはいませんわね。だったら私がエストレ国に嫁ぐなどあり得ないですわ。
アドリエンヌ様に関する報告が終わると、リシャール様はまた王宮に戻ると言われました。せっかくお会い出来ましたのに…残念ですわ。それでも、馬車の用意が出来るまで私の部屋でお茶を頂く時間を作って下さいました。わずかな時間ですが、二人で過ごせる時間が持てて嬉しいですわね。二人掛けのソファに並んで座るとそれだけでドキドキしてしまいますわ…
「リシャール様、お父様は無茶を仰っていませんか?」
「大丈夫ですよ。確かにお厳しい方ですが、これも将来レティを支えるために必要な事ですから」
リシャール様は柔らかい笑みと共にそう言って下さいました。そんな風に言って貰えるなんて…中々お会い出来なくて寂しく感じますが、こうして将来を見据えて下さる姿を見ると胸が温かくなります。
(やっぱり、リシャール様でなければ嫌ですわ…)
そんな風に思っていると、リシャール様の視線を感じました。
「どうか、されましたか?」
「…レティは…エストレ国の王太子殿下を、どう思っていますか?」
「え?」
いきなり思いもよらない人の名前が出てきて、私はまじまじとリシャール様のお顔を眺めてしまいました。
お母様の発言に、私は暫くの間固まってしまいました。
「それって…」
「あの時は既にエルネスト様の婚約者だったから、表面化する前に話は消えたのよ。本当に内々の打診だったから…」
「な、何年も前の話ですよね?」
「ええ」
そうですよね、エルネスト様の婚約者になったのは昔の事ですし、だったら私に打診があったのも随分前の筈…ですよね?
「でも…エストレの王太子殿下は確か…まだ婚約者もいなかった筈ですわ」
「ええっ?」
セレスティーヌ様が言い難そうにそう仰いましたが、それって…
「エストレの王太子殿下は、もう三十歳近かったのでは…」
「ええ。色々と癖がおありの方で、中々相手が決まらないと聞いておりますわ。私も王太子に選ばれるかどうか、という頃に打診がありましたの」
何とセレスティーヌ様にまで打診があったのですか…私に打診があったとは思いもしませんでしたが、我が国には王女殿下はいらっしゃらなかったので、国内の有力貴族の私を…との話だったのでしょうね。でも、既にエルネスト様の婚約者だった、と。
「じょ、冗談ではありませんわ、エストレ国の王太子殿下だなんて。しかもアドリエンヌ様を溺愛している方だなんて、話になりませんわ」
そんなシスコンで三十近くになっても妃が決まらない王太子殿下なんて、絶対に訳あり難ありでしょう。そんな方の妃だなんて絶対に嫌ですわ。そんな事になったらもれなくアドリエンヌ様のお守も付いてきそうですし、事ある毎に兄王子に泣きついて私を悪者にする未来が目に見えています。それに比べたらエルネスト様の方がずっとマシですわ。
それに…お兄様への仕打ちを思えば、あの王女を野放しにしていた王族なんて絶対に許せません。あの王女のせいで、我が家はどれほど苦労し、心配して来た事か…しかも後継者だったお兄様がリスナール国の王配になる事にしたのも、あの王女のせいなのです。
それに私には、リシャール様と言う最愛で何よりも大切な方がいるのです。王太子だろうが何だろうが、私には芋やカボチャと同じです。いえ、それでは芋やカボチャに失礼ですわね、どちらも私は好きですから。
「まさか…王太子殿下が自ら来たのって…」
「レティに求婚…の可能性は低いとは思うけど…」
「でも、あのアドリエンヌ様の兄君なのが不安の種ですわね」
セレスティーヌ様も私と同じ不安を感じていらっしゃるようですが…あの国の王族は大丈夫なのでしょうか。どうせ来るならアドリエンヌ様に厳しいと噂の王妃様がよかったですわ…
「心配しないで、レティ。何があっても私もお父様も貴女を守るわ」
「そうよ、レティ。それに私がリスナール国に行くのだから、この家の後継はレティよ。今更他国に嫁ぐなんて事はあり得ないわ」
「そ、そうですよね…」
そうです、既にお兄様はセレスティーヌ様の王配になると決まっていますし、そうなれば私しか跡取りはいませんわね。だったら私がエストレ国に嫁ぐなどあり得ないですわ。
アドリエンヌ様に関する報告が終わると、リシャール様はまた王宮に戻ると言われました。せっかくお会い出来ましたのに…残念ですわ。それでも、馬車の用意が出来るまで私の部屋でお茶を頂く時間を作って下さいました。わずかな時間ですが、二人で過ごせる時間が持てて嬉しいですわね。二人掛けのソファに並んで座るとそれだけでドキドキしてしまいますわ…
「リシャール様、お父様は無茶を仰っていませんか?」
「大丈夫ですよ。確かにお厳しい方ですが、これも将来レティを支えるために必要な事ですから」
リシャール様は柔らかい笑みと共にそう言って下さいました。そんな風に言って貰えるなんて…中々お会い出来なくて寂しく感じますが、こうして将来を見据えて下さる姿を見ると胸が温かくなります。
(やっぱり、リシャール様でなければ嫌ですわ…)
そんな風に思っていると、リシャール様の視線を感じました。
「どうか、されましたか?」
「…レティは…エストレ国の王太子殿下を、どう思っていますか?」
「え?」
いきなり思いもよらない人の名前が出てきて、私はまじまじとリシャール様のお顔を眺めてしまいました。
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