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話し合いの場が持たれるそうです

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 あの後、リシャール様は王宮に戻られました。もう少し一緒にいたかったのですが、エストレ国から来るのが王太子殿下だと判明した事で、王宮はその準備で大変な状態だそうです。あのアドリエンヌ様に甘いとなれば、我が国としても最大級に警戒するのは仕方のない事でしょう。
 リシャール様もお父様の秘書として駆け回っていらっしゃるそうで、また暫くはお会い出来ないのでしょうね…仕方ありませんわ、その間はお兄様に相手をして頂きましょうか…気分転換くらいにはなるでしょう。



 それから五日後、お父様がお戻りになりました。勿論リシャール様も一緒です。何やらお話があるとかで、今度もセレスティーヌ様のサロンに呼ばれました。今回も話題は、案の定アドリエンヌ様に関するものでした。

「明後日の午後、陛下に呼ばれました。我が家の四人と、セレスティーヌ様、貴女様もご出席願いますか?」
「まぁ、私も?」
「はい。エストレの王女殿下の件で話し合いをなさりたいと陛下が仰せです。つきましてはセレスティーヌ様にも同席頂きたいと」

 とうとうアドリエンヌ様の件で話し合いの場が持たれるのですね。アドリエンヌ様は王宮から逃げ出した後、兄王子と合流してまた戻ってきたと聞いております。あのまま帰国なさればよかったのに…と思いますが…

「陛下はどのようなご意向で?」

 セレスティーヌ様も陛下がどうお考えなのか確証が持てないのでしょう。私も同感ですが。

「陛下はアドリエンヌ王女殿下の行動に憤りをお感じです。そして、その片棒を担いだと思われる王妃にも…」
「王妃様も、ですか?」
「はい。王妃がアドリエンヌ王女に唆されてレオに王女殿下を、セレスティーヌ様にエルネスト様を宛がおうと計画した事をお知りになりました。さすがにこの件は看過できぬと…」

 それはそうでしょうね。我が国よりも力のあるリスナール国の次期女王を襲おうとしたのです。未遂で終わったからと言って許される事ではないでしょう。

「それで、王妃様は?」
「王妃にはまだ何も告げておられない」
「それでは…」
「ええ、明後日の話し合いの場で追及するつもりです」
「では…」
「はい。陛下は王妃を断罪して廃妃に、エルネスト殿下も廃籍すると。その後は北の離宮で終身幽閉の方針です」
「そうですか…」

 とうとう陛下も決断されたようですわね。陛下には前王妃様が産んだ王太子殿下と第二王子殿下がいらっしゃって、お二人とも優秀でいらっしゃいます。王太子殿下には既にお子もいらっしゃいますし、第二王子殿下ご夫妻も仲がよくて御子の誕生も遠くないと言われています。この状況でエルネスト様の存在価値は極めて低いのです。その上で今回の騒動ですから、不要とされても仕方がありませんわね。

「そう言えばあなた。エストレの王太子殿下は?以前レティを妃にと打診がありましたけど…」

 その言葉に緊張が走りました。チラとリシャール様を見ると目が合ってしまいましたが…リシャール様も心なしか表情が冴えないような気がします。

「あの話ははっきり断ったし、妹姫がやった事を思えば口にする事もないだろう」
「そうだといいのですけれど…」
「レティは我が家の跡継ぎ。いくら他国の王家と言えど嫁に出すなどあり得ん。そんな事を陛下が受け入れたら、我が家はこの国を見限る」

 お父様がきっぱりとそう言いきって下さって、私はホッと息を吐きました。お父様が良しとする筈はありませんが、はっきりそう言って下さると安心感が違いますわ。

「まぁ。その時は、是非我が国にいらして下さい」
「セレスティーヌ様?」
「敏腕宰相と名高いラフォン侯爵とその一族、我が国は歓迎いたしますわ」
「ありがとうございます」

 セレスティーヌ様の援護射撃も頂けましたし、これでエストレの王太子殿下から求婚されても断る一択ですわね。まぁ、最初からリシャール様以外の方と結婚するなど考えられないので、当然と言えば当然ですわね。


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