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契約成立です
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それから両家の当主が話し合い、リートミュラー様は正式に我が家の専属魔術師になりました。契約魔術を交わし合い、国王陛下の裁可も呆気ないほど早く頂けたので、これで一安心というところでしょうか。
そして婚約ですが…こちらも双方に異議なしという事で纏まりました。一応王家からの提案なので無下にも出来ませんし、お互いにこれ以上の相手がいない現実もあったのです。私は二十歳、リートミュラー様は二十三歳ですが、これくらいの年には殆どの者は婚約者がいるか結婚しているので、急に婚約がなくなると相手探しが大変なのです。
両家の話し合いの後、私はリートミュラー様と庭に出ました。我が家の庭は花好きなお母様の為に、お父様が力を入れている自慢の庭なのですよね。
「…よろしかったのですか?」
東屋でお茶にしたところ、彼がそう尋ねてきました。その様子から彼は、婚約は考えていなかったみたいですわね。
「ええ、勿論ですわ」
「ですが、私は…」
「呪いは解けばいいだけですもの。それ以外で何か問題でも?」
「それは、そうですが…」
まだ戸惑いが見られるリートミュラー様ですが、呪いは解けばいいし、彼の人柄にも好感が持てます。元より私はあまり見た目の美醜にはこだわりがありません。
いえ、むしろ顔がいいと中身は大丈夫なのかしら?と思ってしまうのですよね、元婚約者の影響で。彼は顔だけは確かによかったのですから。
一方のリートミュラー様は確かに肥満体ですが、それは呪いによるものですし、よくよく観察すると彼の身なりはきちんとしていて清潔感もあります。痩せれば問題ないような気がするのです。
「それで…解除をいつにしましょうか?リートミュラー様は何かお考えは?」
「そうですね…あの二人の反応も気になりますし、悩ましいところです」
「確かに。呪われたと大騒ぎしそうですし、そうなったら手のひらを返してきそうですわね」
「ええ。でしたら、このような方法はいかがでしょうか?」
リートミュラー様が提案したのは、彼らが正式に婚姻した後で解除する事でした。クラウス王子は情のない方なので、もしマイヤー侯爵令嬢に呪いが掛かればあっさり捨てそうな気がしますが、そうなると彼の望む家格の婿入り先は絶望的です。そうなれば復縁してやると言ってきそうなのですよね。
一方、彼に捨てられた令嬢も婿の当てなどないでしょう。これまでリートミュラー様が何も言わずにいたのを幸いに、解呪して欲しいと縋り付いてきそうです。さすがにそんな勝手は許せませんわ。
「確かに、結婚してしまえば簡単に別れられませんわね」
「はい。マイヤー侯爵令嬢に呪いがかかれば、殿下は貴女様に復縁を命じられるでしょう。殿下が婿入り出来そうな高位貴族は他にはありませんから」
「確かに、そうですわね」
こうなったら彼らが入籍するまで待った方がよさそうですわね。となれば、それまではあのもふもふを…そう思うと待つのも悪くない気がしてきましたわ。彼らの事です、婚約期間も短くしろと騒ぐのは目に見えていますし、先に入籍する可能性もありそうですわね。
「では、それまでに解呪の準備をしましょう」
「よろしくお願い致します、ゲルスター公爵令嬢」
やはり彼はかなり礼儀正しいのですね。それは一般的には好ましいのですが…
「…リートミュラー様」
「はい、何でしょうか?」
「これからは、私の事はアルーシャとお呼びください」
「え? しかし…」
「そのかわり、私もウィルバート様と呼ばせて頂きたいのです」
「…わかりました」
何だかまだぎこちない上に戸惑いも見え隠れするウィルバート様ですが、そんなところもかえって好印象に見えますわ。謙虚は横柄の何倍も美徳です。これならクラウス王子の十倍は真っ当な結婚になりそうな気がします。
そして婚約ですが…こちらも双方に異議なしという事で纏まりました。一応王家からの提案なので無下にも出来ませんし、お互いにこれ以上の相手がいない現実もあったのです。私は二十歳、リートミュラー様は二十三歳ですが、これくらいの年には殆どの者は婚約者がいるか結婚しているので、急に婚約がなくなると相手探しが大変なのです。
両家の話し合いの後、私はリートミュラー様と庭に出ました。我が家の庭は花好きなお母様の為に、お父様が力を入れている自慢の庭なのですよね。
「…よろしかったのですか?」
東屋でお茶にしたところ、彼がそう尋ねてきました。その様子から彼は、婚約は考えていなかったみたいですわね。
「ええ、勿論ですわ」
「ですが、私は…」
「呪いは解けばいいだけですもの。それ以外で何か問題でも?」
「それは、そうですが…」
まだ戸惑いが見られるリートミュラー様ですが、呪いは解けばいいし、彼の人柄にも好感が持てます。元より私はあまり見た目の美醜にはこだわりがありません。
いえ、むしろ顔がいいと中身は大丈夫なのかしら?と思ってしまうのですよね、元婚約者の影響で。彼は顔だけは確かによかったのですから。
一方のリートミュラー様は確かに肥満体ですが、それは呪いによるものですし、よくよく観察すると彼の身なりはきちんとしていて清潔感もあります。痩せれば問題ないような気がするのです。
「それで…解除をいつにしましょうか?リートミュラー様は何かお考えは?」
「そうですね…あの二人の反応も気になりますし、悩ましいところです」
「確かに。呪われたと大騒ぎしそうですし、そうなったら手のひらを返してきそうですわね」
「ええ。でしたら、このような方法はいかがでしょうか?」
リートミュラー様が提案したのは、彼らが正式に婚姻した後で解除する事でした。クラウス王子は情のない方なので、もしマイヤー侯爵令嬢に呪いが掛かればあっさり捨てそうな気がしますが、そうなると彼の望む家格の婿入り先は絶望的です。そうなれば復縁してやると言ってきそうなのですよね。
一方、彼に捨てられた令嬢も婿の当てなどないでしょう。これまでリートミュラー様が何も言わずにいたのを幸いに、解呪して欲しいと縋り付いてきそうです。さすがにそんな勝手は許せませんわ。
「確かに、結婚してしまえば簡単に別れられませんわね」
「はい。マイヤー侯爵令嬢に呪いがかかれば、殿下は貴女様に復縁を命じられるでしょう。殿下が婿入り出来そうな高位貴族は他にはありませんから」
「確かに、そうですわね」
こうなったら彼らが入籍するまで待った方がよさそうですわね。となれば、それまではあのもふもふを…そう思うと待つのも悪くない気がしてきましたわ。彼らの事です、婚約期間も短くしろと騒ぐのは目に見えていますし、先に入籍する可能性もありそうですわね。
「では、それまでに解呪の準備をしましょう」
「よろしくお願い致します、ゲルスター公爵令嬢」
やはり彼はかなり礼儀正しいのですね。それは一般的には好ましいのですが…
「…リートミュラー様」
「はい、何でしょうか?」
「これからは、私の事はアルーシャとお呼びください」
「え? しかし…」
「そのかわり、私もウィルバート様と呼ばせて頂きたいのです」
「…わかりました」
何だかまだぎこちない上に戸惑いも見え隠れするウィルバート様ですが、そんなところもかえって好印象に見えますわ。謙虚は横柄の何倍も美徳です。これならクラウス王子の十倍は真っ当な結婚になりそうな気がします。
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