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晴れの日を迎えて
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あの呪いを解呪した日から一年半後、私達は晴れて結婚式を挙げました。空はウィルの瞳の様に青く輝き、まるで私達の門出を祝って下さっているようです。
今日はこの日のために準備した結婚衣装です。二人共白を基調とした衣裳に、我が家の色でもある水色がところどころに入っています。私のドレスはふんだんにレースを使ったマーメードラインのもので、とても気に入っていますが…
(今日の主役は私ではなくウィルだわ…)
ええ、今日の主役はウィルです。ウィルにしておいて下さい。だって…とんでもなく素敵なのですから。
黄金の髪と男性らしく少し日に焼けた肌は手入れされて一層艶を増し、きりりとした眉に切れ長の目じりが一層精悍さを増しています。しかも顔立ちには甘さが混じり、もう絶妙なバランスが色気を醸し出しているのです。
ウィルは肥満体を少しでも解消しようと日々鍛錬を怠らなかったそうで、そのお陰で鍛え抜かれた素晴らしいお身体をお持ちなのです。きっとこの国一番の美丈夫といっても過言ではないでしょう。
「ああ、綺麗ですよ、アリー」
「ウィルも…素敵…ですわ…」
ウィルが今日も甘さ増し増しの色気を向けてくるので、私は今にも息が止まりそうです。私だって美人だと皆様に称賛されていましたが…ウィルには負けますわ。
そしてこの一年半、そんなウィルを狙う女狐から守るために、私は苦難の日々を送ってきただけに、今日という日が一層嬉しく思うのです。
(いえ、まだ油断出来ませんわ。いきなり会場に女性が乱入…なんて事もあるかもしれないし…)
これまで何人の女性を追い払ったか、もう数える気も失せました。昨日だってどこの誰か知りませんが、私が真実の愛の相手なのよ!と我が家に突撃してきた令嬢がいたのです。ウィルが絶対零度の眼差しを向け、貴女なんて知りません、とはっきりきっぱり拒絶し、我が家の私兵が追い出したからよかったものの、隙あらばと狙ってくる女性は後を絶たないのです。
式が恙なく進み、最後の誓いのキスを残すばかり…という場面でそれはやってきました。
「アルーシャ!迎えに来たぞ!」
「ウィル!遅くなってごめんなさい!」
いきなり式場のドアがバーン!と大きな音を立てて開いたかと思ったら、現れたのは私達の元婚約者でした。二人共婚礼衣装を纏っていますけど…何だというのでしょうか…会場内の視線があの二人に注がれました。
「アルーシャ、君こそが私の真実の愛だ!」
「ウィル、お願い!私、あなたがいないとダメなの…戻ってきて…!」
二人がぞれぞれに何か叫んでいますが…これは何の余興でしょうか…この二人を招待した覚えもありませんし、そもそもこの二人は婚姻したままです。
(…マイヤー嬢、呪いは解けたようですわね…)
クラウス様がおじ様の助力を乞いながら彼女の呪いを解いたのは、確か七カ月ほど前だったはず。それからは夫婦仲よくやっていると思っていましたのに…やっぱりあの件でこじれた仲は修復出来ないくらいに壊れてしまっていたのですね。彼らからの手紙は開封することなく送り返していたので、まだ未練があったとは知りませんでしたわ。
「アルーシャ!さぁ、私の手を!」
何を考えているのか、クラウス様が当然と言わんばかりに手を差し出しましたが…はっきり言って迷惑でしかありませんわ。
「ウィル、お願い」
「ええ、愛しのアリー」
ウィルが満面の笑みを浮かべた瞬間、二人は透明な大きな風船のようなものに包まれた後、転がりながら会場の外へと出ていきました。あれはウィルが考えた複数の魔術の応用で、彼らの空間だけを切り取った魔術で、音やにおいなども遮断してくれるものです。これで彼らは静かに場外に追い出され、暫くは出る事も出来ないでしょう。
「貴女につく虫は私が一生排除しますからご安心を」
そう言ってウィルがまた、蕩けそうな甘い笑みを私に向けました。何だかやられっ放しで悔しいですわね。でも…
「頼りにしていますわ、私の旦那様」
私も負けじと精一杯の笑みを浮かべてそう答えると、ウィルが大きく目を見開いて、次の瞬間、見たこともない艶やかな笑みを浮かべたのでした。
【完】
- - - - -
最後まで読んで下さってありがとうございました。
今日はこの日のために準備した結婚衣装です。二人共白を基調とした衣裳に、我が家の色でもある水色がところどころに入っています。私のドレスはふんだんにレースを使ったマーメードラインのもので、とても気に入っていますが…
(今日の主役は私ではなくウィルだわ…)
ええ、今日の主役はウィルです。ウィルにしておいて下さい。だって…とんでもなく素敵なのですから。
黄金の髪と男性らしく少し日に焼けた肌は手入れされて一層艶を増し、きりりとした眉に切れ長の目じりが一層精悍さを増しています。しかも顔立ちには甘さが混じり、もう絶妙なバランスが色気を醸し出しているのです。
ウィルは肥満体を少しでも解消しようと日々鍛錬を怠らなかったそうで、そのお陰で鍛え抜かれた素晴らしいお身体をお持ちなのです。きっとこの国一番の美丈夫といっても過言ではないでしょう。
「ああ、綺麗ですよ、アリー」
「ウィルも…素敵…ですわ…」
ウィルが今日も甘さ増し増しの色気を向けてくるので、私は今にも息が止まりそうです。私だって美人だと皆様に称賛されていましたが…ウィルには負けますわ。
そしてこの一年半、そんなウィルを狙う女狐から守るために、私は苦難の日々を送ってきただけに、今日という日が一層嬉しく思うのです。
(いえ、まだ油断出来ませんわ。いきなり会場に女性が乱入…なんて事もあるかもしれないし…)
これまで何人の女性を追い払ったか、もう数える気も失せました。昨日だってどこの誰か知りませんが、私が真実の愛の相手なのよ!と我が家に突撃してきた令嬢がいたのです。ウィルが絶対零度の眼差しを向け、貴女なんて知りません、とはっきりきっぱり拒絶し、我が家の私兵が追い出したからよかったものの、隙あらばと狙ってくる女性は後を絶たないのです。
式が恙なく進み、最後の誓いのキスを残すばかり…という場面でそれはやってきました。
「アルーシャ!迎えに来たぞ!」
「ウィル!遅くなってごめんなさい!」
いきなり式場のドアがバーン!と大きな音を立てて開いたかと思ったら、現れたのは私達の元婚約者でした。二人共婚礼衣装を纏っていますけど…何だというのでしょうか…会場内の視線があの二人に注がれました。
「アルーシャ、君こそが私の真実の愛だ!」
「ウィル、お願い!私、あなたがいないとダメなの…戻ってきて…!」
二人がぞれぞれに何か叫んでいますが…これは何の余興でしょうか…この二人を招待した覚えもありませんし、そもそもこの二人は婚姻したままです。
(…マイヤー嬢、呪いは解けたようですわね…)
クラウス様がおじ様の助力を乞いながら彼女の呪いを解いたのは、確か七カ月ほど前だったはず。それからは夫婦仲よくやっていると思っていましたのに…やっぱりあの件でこじれた仲は修復出来ないくらいに壊れてしまっていたのですね。彼らからの手紙は開封することなく送り返していたので、まだ未練があったとは知りませんでしたわ。
「アルーシャ!さぁ、私の手を!」
何を考えているのか、クラウス様が当然と言わんばかりに手を差し出しましたが…はっきり言って迷惑でしかありませんわ。
「ウィル、お願い」
「ええ、愛しのアリー」
ウィルが満面の笑みを浮かべた瞬間、二人は透明な大きな風船のようなものに包まれた後、転がりながら会場の外へと出ていきました。あれはウィルが考えた複数の魔術の応用で、彼らの空間だけを切り取った魔術で、音やにおいなども遮断してくれるものです。これで彼らは静かに場外に追い出され、暫くは出る事も出来ないでしょう。
「貴女につく虫は私が一生排除しますからご安心を」
そう言ってウィルがまた、蕩けそうな甘い笑みを私に向けました。何だかやられっ放しで悔しいですわね。でも…
「頼りにしていますわ、私の旦那様」
私も負けじと精一杯の笑みを浮かべてそう答えると、ウィルが大きく目を見開いて、次の瞬間、見たこともない艶やかな笑みを浮かべたのでした。
【完】
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最後まで読んで下さってありがとうございました。
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