【完結】王子に婚約破棄され、白豚令息との婚約を命じられました

灰銀猫

文字の大きさ
26 / 27

リーゼの罰

しおりを挟む
(嘘嘘嘘嘘嘘―――!!!)

 鏡に映った自分の姿に、私は狂いそうになった。でっぷりとした肉を着ているような身体がおぞましくて、いっそ死んでしまいたいとすら思った。

(子供の頃のちょっとした悪戯じゃない!罰が重すぎるわ…!)

 もう記憶があやふやな昔の事で、こんな目に遭うなんて思わなかった。まさかウィルの呪いを解く事が出来るなんて思ってもいなかった。魔術では天才的なウィルでも解呪出来ないと言っていたのだ。だったら凡人の私になんて絶対に無理。そう思っていたのに…

(まさか筆頭魔術師様が…あの呪いに気付くなんて…)

 あれは完全に想定外だった。確かにウィルの呪いは私にも見えたわ。うっすらと術式らしいものが書かれたリボンみたいなものがウィルに絡みついているのが見えたから。でも、なんて書いてあるのかわからなかったし、あれが文字だなんて思いもしなかったのだもの。やっぱり私じゃ解けるものじゃなかったからよ。なのに…

(まるで私一人が悪いみたいに…)

 呪いを解かれたことも、わたしのせいだと言われたことも腹立たしかった。そしてそれ以上に腹立たしかったのが、クラウス様の態度だった。あの時から彼の私を見る視線が、まるで汚いものを見る様な、そんな感じに変わってしまったのだから。私は知らなかったし、悪気もなかったのだから仕方ないじゃない。
 今までなら私が少しでも悲しそうな表情を浮かべれば、直ぐに優しく慰めて下さったのに…

 それでもクラウス様との婚姻は成立していて、今更離婚も出来そうになかった。お父様は私のせいで大恥をかき、陛下からも叱られたと私を責めてくる。以前は私のお願いなら何でも聞いてくれたお父様だったのに、今では常識的な行動をとる様にと仰るばかり。
我が家は伯爵に降爵され、農地も慰謝料として取られてしまった。これからは苦労するとお父様もお母様も表情は暗いし、私をお姫様みたいに扱ってくれた使用人たちも、今は一線引いた態度で接してくるし、時には私に隠れて私の悪口も言っている。

(お父様もお母様も使用人も、みんな酷いわ!)

 どうしてここまで変わってしまったのか…十年間放っておいても、今までは誰も何も言わなかったじゃない。それなのに急に全て私のせいにして…

(私は時期侯爵なのよ!私のこの姿だって呪いのせい!…そうよ、この呪いさえ解けたら…!)

 そう、この呪いさえ解ければいいのだ。私だってこんな姿で生きていきたいなんて思えない。そう思うとウィルにはちょっと申し訳なく思ったけれど…彼が呪いを引き受けてくれたのは、私の事が好きだったからだ。

「だったら、ウィルに解いて貰えばいいのよ!」

 なんてグッドアイデア!そう思った私はウィルに手紙を送ったけれど…帰ってきたのは拒絶の短い文面だけだった。これはあの女が邪魔しているのだと思い、その後も何度も手紙を送ったけれど…

「なんて馬鹿な事をしてくれたんだ!」

 手紙を二十通ほど送った頃、お父様が怒鳴り込んできた。どうしてそんなに怒っているのかと不思議でしかなかったけれど、リートミュラー家からもゲルスター公爵家からも抗議分が届いたと言われた。彼は既にゲルスター侯爵家の婿候補だから接触してくるなと。

「でも、お父様…ウィルが呪いを解いてくれたら元に戻れるのよ」
「馬鹿が!彼にはこの術式は見えないと言っていただろう!それに今はクラウス様が解呪に動かれているんだぞ!お前のやった事は二重に不誠実な事だと何故わからん!」
「……え?」

 ウィルには見えない?呪いが私に移った時点でウィルには見えるようになったと思ったのに…それにクラウス様が解呪を?最近は滅多に姿を見ないから、もうこの家から出て行ったかと思っていたのに…

「いいから大人しくしていてくれ!」

 そう言ってお父様は出て行ってしまった。クラウス様が解呪をして下さるなんて知らなかった。それじゃ、最近姿を見ないのはそのせい?僅かに光明が見えた気がした。

 結局、私の呪いが解けたのは一年近く経ってからだった。さすがにこの姿ではウエディングドレスが着られないと結婚式は延期になっていたが、さすがにこれ以上は…と言われるようになった頃だった。クラウス様と一緒にデザインしたドレスは無事着る事が出来たけれど…私達の間に流れる冷たい空気が温まる日は二度と訪れないことを、私はまだ知る由もなかった。



しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

<完結済>婚約破棄を叫ぶ馬鹿に用はない

詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
卒業パーティーでの婚約破棄に、声をあげたのは5番目に破棄された令嬢だったーー記憶持ちの令嬢、反撃に出ます!

王妃様は逃亡中 後日談・番外編

遊森謡子
ファンタジー
【コミックス刊行されました】「あなたの役目は終わった、元の世界に帰れ」? じょおっだんじゃない、日本に帰るのなんかまっぴらごめん! 強制送還回避のため城からの逃亡を余儀なくされたけれど、実は日本での経験から「逃亡慣れ」していた王妃。彼女のその後は? 書籍化作品の後日談・番外編。書籍版とは細かい設定が違います。小説家になろうさんに掲載していたものをこちらに移動しました。 書籍の試し読みはこちら! → http://www.alphapolis.co.jp/book/detail/1043029/889/

異母妹に婚約者の王太子を奪われ追放されました。国の守護龍がついて来てくれました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「モドイド公爵家令嬢シャロン、不敬罪に婚約を破棄し追放刑とする」王太子は冷酷非情に言い放った。モドイド公爵家長女のシャロンは、半妹ジェスナに陥れられた。いや、家族全員に裏切られた。シャロンは先妻ロージーの子供だったが、ロージーはモドイド公爵の愛人だったイザベルに毒殺されていた。本当ならシャロンも殺されている所だったが、王家を乗っ取る心算だったモドイド公爵の手駒、道具として生かされていた。王太子だった第一王子ウイケルの婚約者にジェスナが、第二王子のエドワドにはシャロンが婚約者に選ばれていた。ウイケル王太子が毒殺されなければ、モドイド公爵の思い通りになっていた。だがウイケル王太子が毒殺されてしまった。どうしても王妃に成りたかったジェスナは、身体を張ってエドワドを籠絡し、エドワドにシャロンとの婚約を破棄させ、自分を婚約者に選ばせた。

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした

基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。 その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。 身分の低い者を見下すこともしない。 母国では国民に人気のあった王女だった。 しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。 小国からやってきた王女を見下していた。 極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。 ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。 いや、侍女は『そこにある』のだという。 なにもかけられていないハンガーを指差して。 ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。 「へぇ、あぁそう」 夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。 今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。

愛しい義兄が罠に嵌められ追放されたので、聖女は祈りを止めてついていくことにしました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。  グレイスは元々孤児だった。孤児院前に捨てられたことで、何とか命を繋ぎ止めることができたが、孤児院の責任者は、領主の補助金を着服していた。人数によって助成金が支払われるため、餓死はさせないが、ギリギリの食糧で、最低限の生活をしていた。だがそこに、正義感に溢れる領主の若様が視察にやってきた。孤児達は救われた。その時からグレイスは若様に恋焦がれていた。だが、幸か不幸か、グレイスには並外れた魔力があった。しかも魔窟を封印する事のできる聖なる魔力だった。グレイスは領主シーモア公爵家に養女に迎えられた。義妹として若様と一緒に暮らせるようになったが、絶対に結ばれることのない義兄妹の関係になってしまった。グレイスは密かに恋する義兄のために厳しい訓練に耐え、封印を護る聖女となった。義兄にためになると言われ、王太子との婚約も泣く泣く受けた。だが、その結果は、公明正大ゆえに疎まれた義兄の追放だった。ブチ切れた聖女グレイスは封印を放り出して義兄についていくことにした。

【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。

五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」 オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。 シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。 ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。 彼女には前世の記憶があった。 (どうなってるのよ?!)   ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。 (貧乏女王に転生するなんて、、、。) 婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。 (ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。) 幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。 最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。 (もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)

処理中です...