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リーゼの罰
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(嘘嘘嘘嘘嘘―――!!!)
鏡に映った自分の姿に、私は狂いそうになった。でっぷりとした肉を着ているような身体がおぞましくて、いっそ死んでしまいたいとすら思った。
(子供の頃のちょっとした悪戯じゃない!罰が重すぎるわ…!)
もう記憶があやふやな昔の事で、こんな目に遭うなんて思わなかった。まさかウィルの呪いを解く事が出来るなんて思ってもいなかった。魔術では天才的なウィルでも解呪出来ないと言っていたのだ。だったら凡人の私になんて絶対に無理。そう思っていたのに…
(まさか筆頭魔術師様が…あの呪いに気付くなんて…)
あれは完全に想定外だった。確かにウィルの呪いは私にも見えたわ。うっすらと術式らしいものが書かれたリボンみたいなものがウィルに絡みついているのが見えたから。でも、なんて書いてあるのかわからなかったし、あれが文字だなんて思いもしなかったのだもの。やっぱり私じゃ解けるものじゃなかったからよ。なのに…
(まるで私一人が悪いみたいに…)
呪いを解かれたことも、わたしのせいだと言われたことも腹立たしかった。そしてそれ以上に腹立たしかったのが、クラウス様の態度だった。あの時から彼の私を見る視線が、まるで汚いものを見る様な、そんな感じに変わってしまったのだから。私は知らなかったし、悪気もなかったのだから仕方ないじゃない。
今までなら私が少しでも悲しそうな表情を浮かべれば、直ぐに優しく慰めて下さったのに…
それでもクラウス様との婚姻は成立していて、今更離婚も出来そうになかった。お父様は私のせいで大恥をかき、陛下からも叱られたと私を責めてくる。以前は私のお願いなら何でも聞いてくれたお父様だったのに、今では常識的な行動をとる様にと仰るばかり。
我が家は伯爵に降爵され、農地も慰謝料として取られてしまった。これからは苦労するとお父様もお母様も表情は暗いし、私をお姫様みたいに扱ってくれた使用人たちも、今は一線引いた態度で接してくるし、時には私に隠れて私の悪口も言っている。
(お父様もお母様も使用人も、みんな酷いわ!)
どうしてここまで変わってしまったのか…十年間放っておいても、今までは誰も何も言わなかったじゃない。それなのに急に全て私のせいにして…
(私は時期侯爵なのよ!私のこの姿だって呪いのせい!…そうよ、この呪いさえ解けたら…!)
そう、この呪いさえ解ければいいのだ。私だってこんな姿で生きていきたいなんて思えない。そう思うとウィルにはちょっと申し訳なく思ったけれど…彼が呪いを引き受けてくれたのは、私の事が好きだったからだ。
「だったら、ウィルに解いて貰えばいいのよ!」
なんてグッドアイデア!そう思った私はウィルに手紙を送ったけれど…帰ってきたのは拒絶の短い文面だけだった。これはあの女が邪魔しているのだと思い、その後も何度も手紙を送ったけれど…
「なんて馬鹿な事をしてくれたんだ!」
手紙を二十通ほど送った頃、お父様が怒鳴り込んできた。どうしてそんなに怒っているのかと不思議でしかなかったけれど、リートミュラー家からもゲルスター公爵家からも抗議分が届いたと言われた。彼は既にゲルスター侯爵家の婿候補だから接触してくるなと。
「でも、お父様…ウィルが呪いを解いてくれたら元に戻れるのよ」
「馬鹿が!彼にはこの術式は見えないと言っていただろう!それに今はクラウス様が解呪に動かれているんだぞ!お前のやった事は二重に不誠実な事だと何故わからん!」
「……え?」
ウィルには見えない?呪いが私に移った時点でウィルには見えるようになったと思ったのに…それにクラウス様が解呪を?最近は滅多に姿を見ないから、もうこの家から出て行ったかと思っていたのに…
「いいから大人しくしていてくれ!」
そう言ってお父様は出て行ってしまった。クラウス様が解呪をして下さるなんて知らなかった。それじゃ、最近姿を見ないのはそのせい?僅かに光明が見えた気がした。
結局、私の呪いが解けたのは一年近く経ってからだった。さすがにこの姿ではウエディングドレスが着られないと結婚式は延期になっていたが、さすがにこれ以上は…と言われるようになった頃だった。クラウス様と一緒にデザインしたドレスは無事着る事が出来たけれど…私達の間に流れる冷たい空気が温まる日は二度と訪れないことを、私はまだ知る由もなかった。
鏡に映った自分の姿に、私は狂いそうになった。でっぷりとした肉を着ているような身体がおぞましくて、いっそ死んでしまいたいとすら思った。
(子供の頃のちょっとした悪戯じゃない!罰が重すぎるわ…!)
もう記憶があやふやな昔の事で、こんな目に遭うなんて思わなかった。まさかウィルの呪いを解く事が出来るなんて思ってもいなかった。魔術では天才的なウィルでも解呪出来ないと言っていたのだ。だったら凡人の私になんて絶対に無理。そう思っていたのに…
(まさか筆頭魔術師様が…あの呪いに気付くなんて…)
あれは完全に想定外だった。確かにウィルの呪いは私にも見えたわ。うっすらと術式らしいものが書かれたリボンみたいなものがウィルに絡みついているのが見えたから。でも、なんて書いてあるのかわからなかったし、あれが文字だなんて思いもしなかったのだもの。やっぱり私じゃ解けるものじゃなかったからよ。なのに…
(まるで私一人が悪いみたいに…)
呪いを解かれたことも、わたしのせいだと言われたことも腹立たしかった。そしてそれ以上に腹立たしかったのが、クラウス様の態度だった。あの時から彼の私を見る視線が、まるで汚いものを見る様な、そんな感じに変わってしまったのだから。私は知らなかったし、悪気もなかったのだから仕方ないじゃない。
今までなら私が少しでも悲しそうな表情を浮かべれば、直ぐに優しく慰めて下さったのに…
それでもクラウス様との婚姻は成立していて、今更離婚も出来そうになかった。お父様は私のせいで大恥をかき、陛下からも叱られたと私を責めてくる。以前は私のお願いなら何でも聞いてくれたお父様だったのに、今では常識的な行動をとる様にと仰るばかり。
我が家は伯爵に降爵され、農地も慰謝料として取られてしまった。これからは苦労するとお父様もお母様も表情は暗いし、私をお姫様みたいに扱ってくれた使用人たちも、今は一線引いた態度で接してくるし、時には私に隠れて私の悪口も言っている。
(お父様もお母様も使用人も、みんな酷いわ!)
どうしてここまで変わってしまったのか…十年間放っておいても、今までは誰も何も言わなかったじゃない。それなのに急に全て私のせいにして…
(私は時期侯爵なのよ!私のこの姿だって呪いのせい!…そうよ、この呪いさえ解けたら…!)
そう、この呪いさえ解ければいいのだ。私だってこんな姿で生きていきたいなんて思えない。そう思うとウィルにはちょっと申し訳なく思ったけれど…彼が呪いを引き受けてくれたのは、私の事が好きだったからだ。
「だったら、ウィルに解いて貰えばいいのよ!」
なんてグッドアイデア!そう思った私はウィルに手紙を送ったけれど…帰ってきたのは拒絶の短い文面だけだった。これはあの女が邪魔しているのだと思い、その後も何度も手紙を送ったけれど…
「なんて馬鹿な事をしてくれたんだ!」
手紙を二十通ほど送った頃、お父様が怒鳴り込んできた。どうしてそんなに怒っているのかと不思議でしかなかったけれど、リートミュラー家からもゲルスター公爵家からも抗議分が届いたと言われた。彼は既にゲルスター侯爵家の婿候補だから接触してくるなと。
「でも、お父様…ウィルが呪いを解いてくれたら元に戻れるのよ」
「馬鹿が!彼にはこの術式は見えないと言っていただろう!それに今はクラウス様が解呪に動かれているんだぞ!お前のやった事は二重に不誠実な事だと何故わからん!」
「……え?」
ウィルには見えない?呪いが私に移った時点でウィルには見えるようになったと思ったのに…それにクラウス様が解呪を?最近は滅多に姿を見ないから、もうこの家から出て行ったかと思っていたのに…
「いいから大人しくしていてくれ!」
そう言ってお父様は出て行ってしまった。クラウス様が解呪をして下さるなんて知らなかった。それじゃ、最近姿を見ないのはそのせい?僅かに光明が見えた気がした。
結局、私の呪いが解けたのは一年近く経ってからだった。さすがにこの姿ではウエディングドレスが着られないと結婚式は延期になっていたが、さすがにこれ以上は…と言われるようになった頃だった。クラウス様と一緒にデザインしたドレスは無事着る事が出来たけれど…私達の間に流れる冷たい空気が温まる日は二度と訪れないことを、私はまだ知る由もなかった。
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