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ファン倶楽部?
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ハンクが帰った後、私は彼に言われたことを思い返していた、何だか過剰に褒められた気がしてならない。褒め殺しとまでは思わないけれど、警戒してしまうのは彼が我が国一の知略の持ち主だからだろうか。
「ソフィア、ハンクのあれは本心なのだろうか……」
思わず一緒にいたソフィアにそう尋ねてしまった。第三者からの意見が欲しかったからだ・
「まぁ、アリーセ様ったら! ダールマイヤー様のお気持ちをお疑いで?」
「いや、そういう訳じゃないんだが……やはり私に好意を寄せているというのが信じられないというか……」
「全く、アリーセ様ったら!」
ソフィアがぷりぷりしながら呆れたようにそう言った。
「そうは言うが、ずっと女らしくない、王子だったらよかったのにと言われてきたんだ。急に褒められても簡単に受け入れるのは……」
「もう! 何を言い出すかと思えば……いいですか! アリーセ様は十分に女性らしく魅力的でいらっしゃいます!」
「そ、そうだろうか……」
「ええ。お顔は小さいし、髪や肌の艶も血色も申し分なし。可愛い系ではありませんが間違いなく美人系ですし、王女としての品格もマナーも申し分ありません。背が少々高めですが、ダールマイヤー様はそれ以上に高うございます。贅沢もなさらず我儘も言わず、私たちお仕えする者の体調まで気にして下さるではありませんか」
「そ、そうか。だが、私はあまり淑女らしくは……」
「何を仰っているのです?! そこがよろしいのです!」
「そこがって……」
「普段は質素でいらっしゃいますが、一度着飾れば艶やかで王女としての威厳に満ち、騎士服に身を包めばその辺の男など比べ物にならないほど凛々しくていらっしゃいます。このギャップがいいと、王宮に勤める者たちが立ち上げたファン倶楽部もございますのよ」
「ファ、ファン倶楽部?」
何だそれは、と思ったのは仕方がないだろう。どこにファン倶楽部を持つ王女がいるというのだ。いや、目立つ騎士などには秘かにファン倶楽部があるのはソフィアからも聞いているし、何ならソフィアはマッチョ愛好会の幹部だが。
「アリーセ様のファン倶楽部は会員が三百八十六人。ちなみにエーデルマン公爵家のレオノーラ様のは百二十五人、男性ですとフォンゼル殿下が二百五人、ハンク卿は二百八十一人だったと記憶しております」
「そ、そうか……」
この人数を喜んでいいのかわからないけれど、私を支持してくれる方がそれだけいるというのは……有難いと受け取っておくべきなのだろうか。何かが違う気はするけれど。
「とにかく、アリーセ様は令嬢令息の間で人気が高こうございます。小言を言う親世代の方々と接する機会が多いのでどうしてもそちらが気になるでしょうが、支持する方はとても多いのですよ」
胸を張ってそう断言するソフィアの横で、もう一人の侍女のマルガが無言でうなずいていた。この二人がそう断言するのならそうなのだろうか。彼女たちは王宮内の噂話にも精通しているし。
「信じられないと仰るのでしたら、レオノーラ様やローゼマリー様にお尋ねなさいませ」
ソフィアにそう言われたので、私は彼女たちを呼んでお茶会をすることにした。ディアークたちの処分が決まったのでそれを伝えたいのもあるし、彼女たちの様子が知りたいのもあった。彼女たちは早々に無事に婚約が成立したと聞いている。それに、ハンクのことも聞いてみたい気持ちがあった。彼の態度から本気なのだろうとは思うのだが、今ひとつ腑に落ちない自分がいたからだ。
それから三日ほど後、私はレイニーとローゼを王宮に呼んでお茶会をした。久しぶりに会った二人は非常に表情が明るかった。婚約者が代わるだけでこうも違うのか、と思ったほどだ。ローゼの小説の一文にあった、幸せオーラが出ているというのはこういうことだろうか。
「二人とも、無事婚約が成立したらしいな」
「はい、お陰様で」
「何だかまだ夢を見ているようです」
父からも二人が無事に婚約したとの報告を受けていた。あんな場で熱烈な求婚劇を繰り広げたのだ。異議を唱える者もいなかったために、婚約はすんなりと結ばれたという。
レイニーは半年後には婚姻となった。フォンゼルはこの状況を想定していただろうし、横槍が入る前にと思っていただろうから当然かもしれない。
ローゼも一年の婚約期間を設けて来年には結婚するという。まだ実感がわきませんというが、幼馴染が婚約者になったのだから、そのうち慣れるだろう。エーデルマン公爵家に嫁入りする予定で教育を受けていた彼女は、これからザックス公爵家に合わせた教育が始まるという。一方で商会も立ち上げる気らしく、こちらの準備もあって大忙しだという。
「ソフィア、ハンクのあれは本心なのだろうか……」
思わず一緒にいたソフィアにそう尋ねてしまった。第三者からの意見が欲しかったからだ・
「まぁ、アリーセ様ったら! ダールマイヤー様のお気持ちをお疑いで?」
「いや、そういう訳じゃないんだが……やはり私に好意を寄せているというのが信じられないというか……」
「全く、アリーセ様ったら!」
ソフィアがぷりぷりしながら呆れたようにそう言った。
「そうは言うが、ずっと女らしくない、王子だったらよかったのにと言われてきたんだ。急に褒められても簡単に受け入れるのは……」
「もう! 何を言い出すかと思えば……いいですか! アリーセ様は十分に女性らしく魅力的でいらっしゃいます!」
「そ、そうだろうか……」
「ええ。お顔は小さいし、髪や肌の艶も血色も申し分なし。可愛い系ではありませんが間違いなく美人系ですし、王女としての品格もマナーも申し分ありません。背が少々高めですが、ダールマイヤー様はそれ以上に高うございます。贅沢もなさらず我儘も言わず、私たちお仕えする者の体調まで気にして下さるではありませんか」
「そ、そうか。だが、私はあまり淑女らしくは……」
「何を仰っているのです?! そこがよろしいのです!」
「そこがって……」
「普段は質素でいらっしゃいますが、一度着飾れば艶やかで王女としての威厳に満ち、騎士服に身を包めばその辺の男など比べ物にならないほど凛々しくていらっしゃいます。このギャップがいいと、王宮に勤める者たちが立ち上げたファン倶楽部もございますのよ」
「ファ、ファン倶楽部?」
何だそれは、と思ったのは仕方がないだろう。どこにファン倶楽部を持つ王女がいるというのだ。いや、目立つ騎士などには秘かにファン倶楽部があるのはソフィアからも聞いているし、何ならソフィアはマッチョ愛好会の幹部だが。
「アリーセ様のファン倶楽部は会員が三百八十六人。ちなみにエーデルマン公爵家のレオノーラ様のは百二十五人、男性ですとフォンゼル殿下が二百五人、ハンク卿は二百八十一人だったと記憶しております」
「そ、そうか……」
この人数を喜んでいいのかわからないけれど、私を支持してくれる方がそれだけいるというのは……有難いと受け取っておくべきなのだろうか。何かが違う気はするけれど。
「とにかく、アリーセ様は令嬢令息の間で人気が高こうございます。小言を言う親世代の方々と接する機会が多いのでどうしてもそちらが気になるでしょうが、支持する方はとても多いのですよ」
胸を張ってそう断言するソフィアの横で、もう一人の侍女のマルガが無言でうなずいていた。この二人がそう断言するのならそうなのだろうか。彼女たちは王宮内の噂話にも精通しているし。
「信じられないと仰るのでしたら、レオノーラ様やローゼマリー様にお尋ねなさいませ」
ソフィアにそう言われたので、私は彼女たちを呼んでお茶会をすることにした。ディアークたちの処分が決まったのでそれを伝えたいのもあるし、彼女たちの様子が知りたいのもあった。彼女たちは早々に無事に婚約が成立したと聞いている。それに、ハンクのことも聞いてみたい気持ちがあった。彼の態度から本気なのだろうとは思うのだが、今ひとつ腑に落ちない自分がいたからだ。
それから三日ほど後、私はレイニーとローゼを王宮に呼んでお茶会をした。久しぶりに会った二人は非常に表情が明るかった。婚約者が代わるだけでこうも違うのか、と思ったほどだ。ローゼの小説の一文にあった、幸せオーラが出ているというのはこういうことだろうか。
「二人とも、無事婚約が成立したらしいな」
「はい、お陰様で」
「何だかまだ夢を見ているようです」
父からも二人が無事に婚約したとの報告を受けていた。あんな場で熱烈な求婚劇を繰り広げたのだ。異議を唱える者もいなかったために、婚約はすんなりと結ばれたという。
レイニーは半年後には婚姻となった。フォンゼルはこの状況を想定していただろうし、横槍が入る前にと思っていただろうから当然かもしれない。
ローゼも一年の婚約期間を設けて来年には結婚するという。まだ実感がわきませんというが、幼馴染が婚約者になったのだから、そのうち慣れるだろう。エーデルマン公爵家に嫁入りする予定で教育を受けていた彼女は、これからザックス公爵家に合わせた教育が始まるという。一方で商会も立ち上げる気らしく、こちらの準備もあって大忙しだという。
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