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親友からのアドバイス

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「ところでアリーセ様。ダールマイヤー様とはどうなのです?」
「は?」

 ミリセント嬢のことを考えていたところにいきなりハンクのことを尋ねられて、間抜けな返答しか出来なかった。

「どう、とは?」
「聞けば連日手紙と贈り物が届いていらっしゃるそうではありませんか」
「な! どうしてそれを……」

 そう思った私の視界にソフィアとマルガが入った。ジト目を向けると気が付いた二人だったが、すまし顔で流された。王族のプライベートを流すなんてどういうことだ……!

「アリーセ様がどなたを婿に迎えるか、貴族たちも固唾を飲んで見守っておりますのよ」
「そうですよ。誰が選ばれるかで政局が変わりますからね」

 二人の言うことは正論で、言い返せるものが何も浮かばなかった。

「……このままなら、ハンクに決まるんじゃないか?」

 もう半ば自棄気味にそう答えた。どうせ次期女王の結婚なんて政略的な理由が一番だし、その点ではハンク以上に好条件の者などいない。

「まぁ、何だか投げやりですわね。ダールマイヤー様はあんなに熱心ですのに」
「そうは言うが、王配は政治的にもっともメリットがある者がなるものだろう?」
「それはそうですけど。でも恋してはいけないわけじゃありませんわ。ね、レイニー様」
「ローゼの言う通りですわ。ダールマイヤー様はあの通り美丈夫な上、我が国一とも言われるほどの知略の持ち主。その彼がアリーセ様をお慕いしているなんて、素敵ですわ」

 うっとりとそういうレイニーだったが、やっぱり恋愛感情を持たれる理由が腑に落ちないでいた。その事を話すと……

「まぁ! アリーセ様ったら。どうしてそんなに自己評価が低いんですの?」
「全くですわ。アリーセ様はこんなにも素敵なのに!」

 二人が立ち上がらんばかりに声を上げ、その向こうではソフィアとマルガが無言で首を縦に振っていた。

「だが、私は女性らしくないし……」
「それが何だというのです? アリーセ様の魅力はそんな小さな枠では語れませんのに!」
「レイニー様の言う通りですわ。第一、可愛ければいいってもんじゃありませんよ」
「そ、そうだろうか?」
「そうです! その悪い例がミリセント嬢じゃありませんか!」

 ローゼにそう断言されてしまうと、確かにそうかも……という気がした。確かにミリセント嬢は可憐で女性らしかったが、あれがいいかというと甚だ疑問だ。

「ダールマイヤー様は女性が苦手だと有名ですもの。あざとい女性は尚のこと苦手でしょうね」
「ええ。それに女性らしいだけで好かれるわけではありませんわよ?」
「そうです。女性だってマッチョが好きな人もいれば、中性的で優美な男性がいいという女性もいます」
「問題は需要と供給ですわ。傍から見たらどうしてこんな人と……と思っても、当人同士がよければそれが一番なのです」

 そう言われると、確かにそうかもしれない。例えばフォンゼルみたいに執着心の塊のような重い男は遠慮したいが、レイニーはそんな彼が好きだという。確かに当人同士がよければそれでいいのだろう。

「ダールマイヤー様は浮いた噂もなく、職務にも忠実で信頼出来る方ですわ」
「カスパー様も、ダールマイヤー様は後輩にも気を配れる尊敬出来る先輩だと言っていました。後輩には居丈高になる人もいるけど、そんなことは一切なかったと」
「そ、そうか」

 そう言われると、何だか大丈夫な気がしてきた。何にと問われると困るのだが。

「そう言えばアリーセ様って、この手の話が苦手でしたわね」
「あ、ああ。あまり令嬢たちとの交流が少なかったし、この手の話題も付いていけなくて……」

 恥ずかしながら勉強と騎士としての鍛錬を優先していたから、令嬢よりも騎士たちとの交流の方が多かった
。それに令嬢が好む趣味に興味が持てなかったのもある。刺繍や音楽、ダンスよりも、剣術や乗馬の方が好きだったからだ。

「アリーセ様、こういうことには正解はありませんわ。でも、ご自身が感じることを大切になさって下さい」
「そうですね。ダールマイヤー様と一緒にいる時、手紙を受け取った時、こうして話題に上がった時、どう感じるかを意識してみるといいと思います」
「どう、感じるか……」
「そうですわ」

 二人にそう言われてしまって、私は何も言えなかった。そういうものなのだろうか、と思ったけれど、漠然としすぎて今一つピンとこなかったのもある。考え込んでいた私を、レイニーやローズ、更にはソフィアたちまでもが生暖かい目で見ていたなど、この時の私は気付きもしなかった。



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