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二度目の夜会
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二度目の夜会は前回に比べて落ち着いた雰囲気に見えた。色彩も会場内の賑やかさも、一週間前とは随分と違っているように感じた。
その原因はベルクール公爵の関係者が居なくなったせいだろう。前回の断罪の後、ここで罪を暴かれなかった者たちも次々と摘発されたという。ベルクール公爵家だけでなく、それに連なる一族や取引のある貴族に至るまで、かなりの人数が逮捕されたという。その中には父のように上司の餌に釣られて加担した者もいる。逮捕者が出た家門の多くは夜会どころではないだろう。
我が家だって父の廃嫡願いを出すのが遅れていたら、彼らと同じだったかもしれない。その父は上司に言われて従っただけで自分は無実だと主張しているらしいけれど、タウンハウスにはその上司から貰った金銭や宝飾品などが残っていたし、更に悪いことにはその上司と交わした誓約書まで出てきた。そこには計画が成功した暁には父をリファール辺境伯と認めると書かれてあり、陛下や家長を差し置いて話を進めたことも問題になっていた。
義母とその連れ子にも父に協力した疑いがあり、今は牢にいるという。タウンハウスにも捜査が入ったけれど、父らの監視役を務めていた家令が他の不正の証拠も記録してくれていたため、今回の捜査に役立っているのだという。お祖父様はもしかしたらこうなることを予想していたのかもしれない。
前回、婚約を発表したけれど、その後ベルクール公爵の断罪に話が向かってしまったため、今日改めて婚約を発表された。前回は困惑する者も多かったけれど、ベルクール公爵の断罪やリードホルムを含めた魅了の事件をオーリー様が解決した形になったので、今回はわぁっと会場内が湧いた。その差に真実を知っている私は複雑な気持ちになったけれど、陛下がこれで押し切ると仰るなら仕方がない。しかもそれは我が家の立場を守るためでもあるのだから。
「アンジェ、踊ろうか?」
音楽が流れ、国王夫妻と王太子夫妻が踊った後、そうオーリー様が声をかけてきた。ダンスの練習はして来たけれど……こんな場で踊るのは二度目だけど実質初めてと言ってもいいくらいなのだ。
「私が合わせるから、アンジェはいつも通りに踊れば大丈夫だよ」
王子スマイルでそんな風に言われてしまえば断れる筈もない。そもそも既に注目されているのでここで踊らないなんて言える筈もないのだ。こうなったら仕方がない。練習では合格点を貰ったから練習通りにやればいいんだから。
「足を踏んでしまったらごめんなさい」
「大丈夫。ダンスはかなりいい線いっているよ。普段から鍛えているせいかな。それにアンジェは軽いからちっとも痛くないよ」
社交辞令でもそう言って貰えると気が楽になった。お祖母様も女は度胸だと言っていたし。
「ほら、周りなんか見ずに、私に集中して」
そう言われてドキッとしてしまったけれど、その後でそうすれば外野は気にならなくなるよと言われて僅かに気分が下がった。
「そうそう、その調子」
それでもオーリー様のリードがとても上手く、またいつものように声を掛けてくれたせいで難なく最後まで踊り切ることが出来た。その達成感にホッとするとともに今日の役目を果たした気分になった。ダンスは私の中では一番難度の高いものだったからだ。
踊り終わると会場内に拍手が広がるのが聞こえてびっくりしてしまった。
「皆がアンジェを絶賛しているんだよ」
「まさか。皆様、オーリー様が回復したことをお喜びなんですよ」」
どう考えてもこれはオーリー様に向けてのものだろう。寝たきりだったオーリー様がダンスを踊れるほどに回復されたのだから。
「うーん、それだけじゃないんだけどなぁ……」
オーリー様が虫がどうとか呟いたのが聞こえたけれど、オーリー様が私の手を取ったまま歩き始めてしまったため、聞き返すことが出来なかった。
「オードリック様、おめでとうございます」
「リードホルムも事件まで解決してしまうとは!」
「さすがは英明と讃えられたオードリック様ですな!」
ダンスの輪から出るとあっという間にたくさんの人たちに囲まれてしまった。
「ここまでご快復なさるとは実にめでたい!」
「毒のことさえなければ……実に勿体ないことです」
「いやいや、まだ確証はないですぞ。もしかしたら……」
皆オーリー様の名誉と体調の回復を祝っているけれど、その側には妙齢の令嬢がいてオーリー様に熱い視線を向けていた。一人娘で婿入りを狙っている者だけならわかるけれど、既に跡取りがいる家もが熱心だ。オーリー様が王子として妻を娶ることはないけれど、そのことは知られていないからオーリー様が完全に復活したと思っているのだろう、王太子の地位以外を除いては。
集まってきた貴族にオーリー様が当たり障りのない言葉を返しながら私を紹介してまわった。
ふと、ダンスエリアから一組の男女がこちらに向かってくるのが見えた。身分が高いのだろうか、周りにいた人が道を開けていて、彼らは真っすぐにこちらに歩を進めてきた。
「オードリック殿下!」
「……オードリック様、お久しぶりです」
私たちの元までやってきた二人は、オーリー様に声をかけた。
その原因はベルクール公爵の関係者が居なくなったせいだろう。前回の断罪の後、ここで罪を暴かれなかった者たちも次々と摘発されたという。ベルクール公爵家だけでなく、それに連なる一族や取引のある貴族に至るまで、かなりの人数が逮捕されたという。その中には父のように上司の餌に釣られて加担した者もいる。逮捕者が出た家門の多くは夜会どころではないだろう。
我が家だって父の廃嫡願いを出すのが遅れていたら、彼らと同じだったかもしれない。その父は上司に言われて従っただけで自分は無実だと主張しているらしいけれど、タウンハウスにはその上司から貰った金銭や宝飾品などが残っていたし、更に悪いことにはその上司と交わした誓約書まで出てきた。そこには計画が成功した暁には父をリファール辺境伯と認めると書かれてあり、陛下や家長を差し置いて話を進めたことも問題になっていた。
義母とその連れ子にも父に協力した疑いがあり、今は牢にいるという。タウンハウスにも捜査が入ったけれど、父らの監視役を務めていた家令が他の不正の証拠も記録してくれていたため、今回の捜査に役立っているのだという。お祖父様はもしかしたらこうなることを予想していたのかもしれない。
前回、婚約を発表したけれど、その後ベルクール公爵の断罪に話が向かってしまったため、今日改めて婚約を発表された。前回は困惑する者も多かったけれど、ベルクール公爵の断罪やリードホルムを含めた魅了の事件をオーリー様が解決した形になったので、今回はわぁっと会場内が湧いた。その差に真実を知っている私は複雑な気持ちになったけれど、陛下がこれで押し切ると仰るなら仕方がない。しかもそれは我が家の立場を守るためでもあるのだから。
「アンジェ、踊ろうか?」
音楽が流れ、国王夫妻と王太子夫妻が踊った後、そうオーリー様が声をかけてきた。ダンスの練習はして来たけれど……こんな場で踊るのは二度目だけど実質初めてと言ってもいいくらいなのだ。
「私が合わせるから、アンジェはいつも通りに踊れば大丈夫だよ」
王子スマイルでそんな風に言われてしまえば断れる筈もない。そもそも既に注目されているのでここで踊らないなんて言える筈もないのだ。こうなったら仕方がない。練習では合格点を貰ったから練習通りにやればいいんだから。
「足を踏んでしまったらごめんなさい」
「大丈夫。ダンスはかなりいい線いっているよ。普段から鍛えているせいかな。それにアンジェは軽いからちっとも痛くないよ」
社交辞令でもそう言って貰えると気が楽になった。お祖母様も女は度胸だと言っていたし。
「ほら、周りなんか見ずに、私に集中して」
そう言われてドキッとしてしまったけれど、その後でそうすれば外野は気にならなくなるよと言われて僅かに気分が下がった。
「そうそう、その調子」
それでもオーリー様のリードがとても上手く、またいつものように声を掛けてくれたせいで難なく最後まで踊り切ることが出来た。その達成感にホッとするとともに今日の役目を果たした気分になった。ダンスは私の中では一番難度の高いものだったからだ。
踊り終わると会場内に拍手が広がるのが聞こえてびっくりしてしまった。
「皆がアンジェを絶賛しているんだよ」
「まさか。皆様、オーリー様が回復したことをお喜びなんですよ」」
どう考えてもこれはオーリー様に向けてのものだろう。寝たきりだったオーリー様がダンスを踊れるほどに回復されたのだから。
「うーん、それだけじゃないんだけどなぁ……」
オーリー様が虫がどうとか呟いたのが聞こえたけれど、オーリー様が私の手を取ったまま歩き始めてしまったため、聞き返すことが出来なかった。
「オードリック様、おめでとうございます」
「リードホルムも事件まで解決してしまうとは!」
「さすがは英明と讃えられたオードリック様ですな!」
ダンスの輪から出るとあっという間にたくさんの人たちに囲まれてしまった。
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「いやいや、まだ確証はないですぞ。もしかしたら……」
皆オーリー様の名誉と体調の回復を祝っているけれど、その側には妙齢の令嬢がいてオーリー様に熱い視線を向けていた。一人娘で婿入りを狙っている者だけならわかるけれど、既に跡取りがいる家もが熱心だ。オーリー様が王子として妻を娶ることはないけれど、そのことは知られていないからオーリー様が完全に復活したと思っているのだろう、王太子の地位以外を除いては。
集まってきた貴族にオーリー様が当たり障りのない言葉を返しながら私を紹介してまわった。
ふと、ダンスエリアから一組の男女がこちらに向かってくるのが見えた。身分が高いのだろうか、周りにいた人が道を開けていて、彼らは真っすぐにこちらに歩を進めてきた。
「オードリック殿下!」
「……オードリック様、お久しぶりです」
私たちの元までやってきた二人は、オーリー様に声をかけた。
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