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再び王都へ
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あれから一ヶ月半が経った。魔力切れに陥った私だけれど、それも二十日もするとすっかり元気になった。オーリー様は一事が万事戸惑いに襲われていたけれど、慣れたというか開き直ったというか、動じることは殆どなくなっているように見えた。
「恥ずかしいからそう見せているだけだよ」
そう言って苦笑していたけれど、それでもさっさと状況を把握して理解していたのはさすがだと思う。そこにはエドガール様の献身も大きかっただろう。オーリー様がいなくなった後で起きたことを、エドガール様は細かく記録していたのだ。そのお陰でオーリー様はこれまでに起きたことを把握出来たのだという。
私も日記を付けていたから、私もオーリー様用の記録を作っておけばよかったと思った。でも日記には個人的なことも書いてあったから、とてもオーリー様に見せられるものではない。むしろこの二年間を消してしまいたいくらいだ。
そんなオーリー様に対しての印象が変わったと思う。何て言うのだろう、以前は五年の差が凄く大きくて、しかも博識だったオーリー様に凄いという想いが大きかったのに、今はそれが薄れているのだ。
「そりゃあ、アンだって成長しているんだから当然よ。そうでなかったらこの三年、アンは全く成長していなかったってことになるもの」
エリーに一刀両断されてしまった。でも、そうなのだ、オーリー様と年の差が思った以上に縮まった気がした。一番は可愛いと思ってしまう事が増えたことだ。些細な仕草や言動、失敗した時にへらっと崩れた笑顔に三年の間にあったことを指摘するとちょっと拗ねたような表情を浮かべるところなんかが。以前はそんな風に思うことがなかったから、やっぱり三年は大きいと感じた。
ようやく私もオーリー様も落ち着いた頃、王家から呼び出し状が届いた。勿論オーリー様に会いたいと陛下たちからのものだ。夜会で次の婚約を公表する予定だっただけに、陛下も慌てられたのだろう。一月ほど経った頃、私はオーリー様と共に王都に向かた。
「……まぁ、見違えたわ」
「ああ、新しい家の匂いがするよ」
新しく立て直したタウンハウスは以前の重厚で暗い雰囲気が一掃され、すっきり明るい印象だった。父がベルクール公爵の不正に関与していたため、ここにも騎士団の捜索が入った。そんな悪い印象が染み付いたタウンハウスをこのまま残すのは気分が悪く、また老朽化も進んでいたため、一年前に思い切って立て直したのだ。
建築費はちょっと痛かったけれど、祖父母も私も新たに婿を迎えるからにはあのままというのは相手に失礼だと思ったのもある。
「……何もかもが新しい……」
「色合いも明るくて、すっきりした感じになったね」
「ええ。ここも今のところ王都に来た時しか使わないからと、規模も縮小したんです」
元々後継者がここで王都と領地の案内役として住んでいたけれど、当面の間ここに誰かが住む予定はない。私はこのままお祖父様から領主の仕事を引き継ぐから領地を離れられないし、次代がここに住むのもまだまだ先だからだ。
ちなみに……父は捜査の結果、有罪となって今は鉱山で肉体労働をしているという。最後まで自分は悪くないと言っていたらしいけれど、証拠の品を山ほど残していたのだからどうしようもない。悪いことを推奨する気はないけれど、証拠をその辺に置きっ放しにしていた頭の弱さに軽く絶望したのは内緒だ。あんなのが父親だったとは……残念の一言に尽きた。
後妻と連れ子は何も知らなかったらしいけれど、二人して別々の修道院へと送られた。婚姻していないのに辺境伯家の若夫人、実子として社交界で振舞ったのが悪質だと指摘されたのが大きかった。実際、お祖父様もお祖母様も何度も警告をしていたし、王家に陳情もしていたのだ。
それでも父が問題ないと言い張り、それを真に受けた二人は貴族としての常識と品位に大いに欠けるとされた。父を勘当した後もこの家に居座り、我が家の資産を無断で使っていたのも大きかった。まぁ、何を言っても理解しないので証拠にするべく好きにさせていたのだとお祖父様は言っていたけれど。
「結局、私たちが甘やかしたのが悪かったのね……」
そう言ってお祖母様は深くため息をついた。でも、あのお祖母様があれだけ言っても理解出来なかったのだ。きっと別の人が親だったとしても変わらなかっただろうし、もっと悪い方向に向かっていたような気がする。結局最後まで分かり合えることはなかった。寂しい……というよりも虚しさの方が勝った。
そしてもう一つ、ずっと噂レベルで疑惑とされていた私の母の死の真相も決着がついた。実家に戻ってそのまま流行り病で亡くなった母だけど、実は父に殺されたのではないかという噂が流れていたのだ。根拠もないのにだ。でも結婚する前はたくさんの令息にちやほやされていた母だっただけに、面白おかしく噂されていたのだ。
今回、父の逮捕を受けてこちらの調査も行われたけれど、母は流行り病で亡くなっていて事件性はなかったとされた。同時期に母の祖母も同じ病で亡くなっていたし、母が祖母の看病をしていたと使用人の証言が得られた。そして父やその関係者が母の実家を訪ねたという事実も見つからなかった。この結果は父の刑の公表と同時に発表されたため、貴族の間で広がっていた不本意な噂は急速に消えていった。
「恥ずかしいからそう見せているだけだよ」
そう言って苦笑していたけれど、それでもさっさと状況を把握して理解していたのはさすがだと思う。そこにはエドガール様の献身も大きかっただろう。オーリー様がいなくなった後で起きたことを、エドガール様は細かく記録していたのだ。そのお陰でオーリー様はこれまでに起きたことを把握出来たのだという。
私も日記を付けていたから、私もオーリー様用の記録を作っておけばよかったと思った。でも日記には個人的なことも書いてあったから、とてもオーリー様に見せられるものではない。むしろこの二年間を消してしまいたいくらいだ。
そんなオーリー様に対しての印象が変わったと思う。何て言うのだろう、以前は五年の差が凄く大きくて、しかも博識だったオーリー様に凄いという想いが大きかったのに、今はそれが薄れているのだ。
「そりゃあ、アンだって成長しているんだから当然よ。そうでなかったらこの三年、アンは全く成長していなかったってことになるもの」
エリーに一刀両断されてしまった。でも、そうなのだ、オーリー様と年の差が思った以上に縮まった気がした。一番は可愛いと思ってしまう事が増えたことだ。些細な仕草や言動、失敗した時にへらっと崩れた笑顔に三年の間にあったことを指摘するとちょっと拗ねたような表情を浮かべるところなんかが。以前はそんな風に思うことがなかったから、やっぱり三年は大きいと感じた。
ようやく私もオーリー様も落ち着いた頃、王家から呼び出し状が届いた。勿論オーリー様に会いたいと陛下たちからのものだ。夜会で次の婚約を公表する予定だっただけに、陛下も慌てられたのだろう。一月ほど経った頃、私はオーリー様と共に王都に向かた。
「……まぁ、見違えたわ」
「ああ、新しい家の匂いがするよ」
新しく立て直したタウンハウスは以前の重厚で暗い雰囲気が一掃され、すっきり明るい印象だった。父がベルクール公爵の不正に関与していたため、ここにも騎士団の捜索が入った。そんな悪い印象が染み付いたタウンハウスをこのまま残すのは気分が悪く、また老朽化も進んでいたため、一年前に思い切って立て直したのだ。
建築費はちょっと痛かったけれど、祖父母も私も新たに婿を迎えるからにはあのままというのは相手に失礼だと思ったのもある。
「……何もかもが新しい……」
「色合いも明るくて、すっきりした感じになったね」
「ええ。ここも今のところ王都に来た時しか使わないからと、規模も縮小したんです」
元々後継者がここで王都と領地の案内役として住んでいたけれど、当面の間ここに誰かが住む予定はない。私はこのままお祖父様から領主の仕事を引き継ぐから領地を離れられないし、次代がここに住むのもまだまだ先だからだ。
ちなみに……父は捜査の結果、有罪となって今は鉱山で肉体労働をしているという。最後まで自分は悪くないと言っていたらしいけれど、証拠の品を山ほど残していたのだからどうしようもない。悪いことを推奨する気はないけれど、証拠をその辺に置きっ放しにしていた頭の弱さに軽く絶望したのは内緒だ。あんなのが父親だったとは……残念の一言に尽きた。
後妻と連れ子は何も知らなかったらしいけれど、二人して別々の修道院へと送られた。婚姻していないのに辺境伯家の若夫人、実子として社交界で振舞ったのが悪質だと指摘されたのが大きかった。実際、お祖父様もお祖母様も何度も警告をしていたし、王家に陳情もしていたのだ。
それでも父が問題ないと言い張り、それを真に受けた二人は貴族としての常識と品位に大いに欠けるとされた。父を勘当した後もこの家に居座り、我が家の資産を無断で使っていたのも大きかった。まぁ、何を言っても理解しないので証拠にするべく好きにさせていたのだとお祖父様は言っていたけれど。
「結局、私たちが甘やかしたのが悪かったのね……」
そう言ってお祖母様は深くため息をついた。でも、あのお祖母様があれだけ言っても理解出来なかったのだ。きっと別の人が親だったとしても変わらなかっただろうし、もっと悪い方向に向かっていたような気がする。結局最後まで分かり合えることはなかった。寂しい……というよりも虚しさの方が勝った。
そしてもう一つ、ずっと噂レベルで疑惑とされていた私の母の死の真相も決着がついた。実家に戻ってそのまま流行り病で亡くなった母だけど、実は父に殺されたのではないかという噂が流れていたのだ。根拠もないのにだ。でも結婚する前はたくさんの令息にちやほやされていた母だっただけに、面白おかしく噂されていたのだ。
今回、父の逮捕を受けてこちらの調査も行われたけれど、母は流行り病で亡くなっていて事件性はなかったとされた。同時期に母の祖母も同じ病で亡くなっていたし、母が祖母の看病をしていたと使用人の証言が得られた。そして父やその関係者が母の実家を訪ねたという事実も見つからなかった。この結果は父の刑の公表と同時に発表されたため、貴族の間で広がっていた不本意な噂は急速に消えていった。
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