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異動になった原因と懸念
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「ええっ?異動って…この時期に?」
「…そうよ」
その日の夜、私は同じ寮に住む学園時代からの親友の部屋で、お酒を飲みながら管を巻いていた。
「どうしてそんな事に?それに異動って…どこによ?」
目の前で驚きに目を見開いているのは、私の親友とも言えるクラリス=ルナールだ。柔らかくウエーブがかかった金の髪と、鮮やかな新緑のような瞳は私の憧れだ。大人びた顔立ちも童顔の私には羨ましい限りで、しかも美人なのだから世の中は不公平だと思う。
それでも彼女は気さくで好奇心旺盛で、学園で変わり者と遠巻きにされていた私に声をかけてくれたのも彼女だけだった。その理由は単なる好奇心だったらしいけど、それでもお互いに結婚よりも仕事を目指していたのもあり、あっという間に意気投合したのだ。
「第一騎士団だって」
「ええっ?第一騎士団?」
私の言葉に珍しくクラリスが大きな声を出した。
「そんなに意外?」
「意外っていうか…あそこって、この前不正を大々的に摘発したところでしょ?」
「…らしいね」
「らしいねって…貴女、最近忙しかったのもここの不正のせいでしょうが」
「あ~そうだっけ?」
そう言えばあの書類たち、確かに中身は騎士絡みのものだったな、と思い出してから、沸々と怒りが湧いてくるのを感じた。あの仕事が追加されたせいで、私は久しぶりに過労で限界を迎えて、室長に休めと言われたのだから…
(じゃ、じゃあ、私が左遷になったのって、次の職場のせい?)
なによそれ、と理不尽さにすっと表情が消えるのを感じた。
「もう!呑気なんだから」
そう言ってからクラリスは、その詳細を教えてくれた。事の始まりは半年前の第一騎士団の副団長の交代で、その副団長の不正が疑われていたからだという。それでも相手は高位貴族で迂闊に手が出せない。それで栄転と言う形で配置替えして、新しい副団長がその不正を調べていたのだと言う。その後、その副団長の補佐をしていた文官が不正の中心的な人物だと判明し、それを裏付ける監査が先日まで忙しかった理由だと言う。
「…詳しいわね、クラリス」
「そりゃあ、王女殿下の侍女ですもの。ある程度の情報収集も仕事の内よ」
「おおっ!さすがは王女殿下のお気に入り!出世株は言う事が違うわ~」
そう、彼女は王女殿下の侍女をしていて、彼女のお気に入りと言われている出世株だ。侯爵家の令嬢で見目もよく頭もいい彼女は、あっという間に現在十六歳の王女殿下に懐かれて今に至る。
「もう、そんなんじゃないわよ。それに仕事に関してはエリーの方が上よ。貴女の噂は王女殿下のところにも届いているわよ」
「まさか…左遷されたのにそれはないわよ」
そう、左遷されるのにそれはない。どうせ行き遅れの女が必死に仕事しているとでも嘲笑されているのが関の山だ。実際にそう言われた事も何度もあるのだから間違いない。
「もう、エリーったら…でも、エリーは不正を何度も見つけているでしょ?きっと不正を見落とさないから異動になったんじゃないかしら?」
「ええ?じゃ、私がその不正した馬鹿の後釜に?」
「そうなるんじゃない?騎士団の文官は信用ならないって、王宮文官のエリーに話がいったのかもね」
「えええ、迷惑ぅ…」
もしかして書類の精査が引継ぎ替わりだったとか?確かにあれだけ書類を目にすれば、騎士団でどんな書類が使われているかは見当がつくけど。でも、王宮と騎士団では使う書類も決済の仕組みも全く違うだろうに…
「…それにしても、よりにもよって第一騎士団とはね。あの男も第一騎士団でしょ?」
「…言わないで。思い出したくもなかったのに…」
そう、あの第一騎士団には、あの男がいるのだ。向こうから婚約を申し込んできたくせに、初対面で私を地味だ可愛くないと罵倒した、あのバカ男が。
「…そうよ」
その日の夜、私は同じ寮に住む学園時代からの親友の部屋で、お酒を飲みながら管を巻いていた。
「どうしてそんな事に?それに異動って…どこによ?」
目の前で驚きに目を見開いているのは、私の親友とも言えるクラリス=ルナールだ。柔らかくウエーブがかかった金の髪と、鮮やかな新緑のような瞳は私の憧れだ。大人びた顔立ちも童顔の私には羨ましい限りで、しかも美人なのだから世の中は不公平だと思う。
それでも彼女は気さくで好奇心旺盛で、学園で変わり者と遠巻きにされていた私に声をかけてくれたのも彼女だけだった。その理由は単なる好奇心だったらしいけど、それでもお互いに結婚よりも仕事を目指していたのもあり、あっという間に意気投合したのだ。
「第一騎士団だって」
「ええっ?第一騎士団?」
私の言葉に珍しくクラリスが大きな声を出した。
「そんなに意外?」
「意外っていうか…あそこって、この前不正を大々的に摘発したところでしょ?」
「…らしいね」
「らしいねって…貴女、最近忙しかったのもここの不正のせいでしょうが」
「あ~そうだっけ?」
そう言えばあの書類たち、確かに中身は騎士絡みのものだったな、と思い出してから、沸々と怒りが湧いてくるのを感じた。あの仕事が追加されたせいで、私は久しぶりに過労で限界を迎えて、室長に休めと言われたのだから…
(じゃ、じゃあ、私が左遷になったのって、次の職場のせい?)
なによそれ、と理不尽さにすっと表情が消えるのを感じた。
「もう!呑気なんだから」
そう言ってからクラリスは、その詳細を教えてくれた。事の始まりは半年前の第一騎士団の副団長の交代で、その副団長の不正が疑われていたからだという。それでも相手は高位貴族で迂闊に手が出せない。それで栄転と言う形で配置替えして、新しい副団長がその不正を調べていたのだと言う。その後、その副団長の補佐をしていた文官が不正の中心的な人物だと判明し、それを裏付ける監査が先日まで忙しかった理由だと言う。
「…詳しいわね、クラリス」
「そりゃあ、王女殿下の侍女ですもの。ある程度の情報収集も仕事の内よ」
「おおっ!さすがは王女殿下のお気に入り!出世株は言う事が違うわ~」
そう、彼女は王女殿下の侍女をしていて、彼女のお気に入りと言われている出世株だ。侯爵家の令嬢で見目もよく頭もいい彼女は、あっという間に現在十六歳の王女殿下に懐かれて今に至る。
「もう、そんなんじゃないわよ。それに仕事に関してはエリーの方が上よ。貴女の噂は王女殿下のところにも届いているわよ」
「まさか…左遷されたのにそれはないわよ」
そう、左遷されるのにそれはない。どうせ行き遅れの女が必死に仕事しているとでも嘲笑されているのが関の山だ。実際にそう言われた事も何度もあるのだから間違いない。
「もう、エリーったら…でも、エリーは不正を何度も見つけているでしょ?きっと不正を見落とさないから異動になったんじゃないかしら?」
「ええ?じゃ、私がその不正した馬鹿の後釜に?」
「そうなるんじゃない?騎士団の文官は信用ならないって、王宮文官のエリーに話がいったのかもね」
「えええ、迷惑ぅ…」
もしかして書類の精査が引継ぎ替わりだったとか?確かにあれだけ書類を目にすれば、騎士団でどんな書類が使われているかは見当がつくけど。でも、王宮と騎士団では使う書類も決済の仕組みも全く違うだろうに…
「…それにしても、よりにもよって第一騎士団とはね。あの男も第一騎士団でしょ?」
「…言わないで。思い出したくもなかったのに…」
そう、あの第一騎士団には、あの男がいるのだ。向こうから婚約を申し込んできたくせに、初対面で私を地味だ可愛くないと罵倒した、あのバカ男が。
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