【完結】一夜を共にしたからって結婚なんかしませんから!

灰銀猫

文字の大きさ
39 / 116

実の妹って…誰が?

しおりを挟む
(…え?じ、実の妹って…誰が、誰の?)

 副団長から出てきた言葉を処理しようとした私の頭は、途中で停止してしまった。もしかして聞き間違えたのだろうか…今の言い方だと、王女殿下が副団長の妹みたいに聞こえたのだけど…

(実の妹って、本当の妹って事、よね?両親が同じって事?両親が同じ?あ、あれ…?)

 私の知る実の妹とは、両親が一緒と言う意味だ。私とリアムのように。いや、中には父か母のどちらかが違う異父や異母の妹も存在するだろうけど、一般的にはそれを実の妹とは言わない、と思う。多分…
 副団長はランベール公爵家の三男だ。異母兄弟なら陛下の血を継いでいるので王子として扱われていた筈。そうじゃないとすると陛下の血は引いていないから異父兄?え?だったら王妃様の御子という事になるけど…そ、それって…?まさか…王妃様が公爵…と?もしかしてこれって…王室のとんでもないスキャンダル?

「おい、何を考えているかは知らないけど、多分違うぞ」

 あり得ない思考に陥っていた私を現実に戻したのは、副団長の声だったけど…ちょっと待って、知らないのに多分違うってどういう事よ?いや、今はそうじゃなくて…

「アリソン王女殿下、いい加減にして下さい。俺は貴女を結婚相手とは到底思えません。いくら共に育っていないと言っても、繋がりは確実にあるのです」
「で、でも…アレク様は御子が出来ないのでしょう?だったら…」
「そういう問題ではありません」
「でも…子が出来なければ問題ありませんわ」
「そういう行為そのものがダメだと言っているのです。いい加減に理解して下さい」

 話している内容が飛んでもなくあり得ない内容だった。王女殿下…何を仰っているのですか…?子が出来なければ問題ないって…実の兄妹だったらそういう次元の話じゃないですよ?いや、副団長が実の兄って、そこから説明求む!なんだけど…

「近衛騎士!王女殿下がお帰りだ!」

 混乱する私の前で二人は尚も問答のような言い合いをしていたけれど、埒が明かないと思ったのか、副団長が部屋の外にいる騎士に声をかけた。

「アレク様っ!」
「王女殿下、この件は陛下にもご報告致しますので、そのおつもりで」
「そ、そんな!お、お父様には言わないで!お願い!」
「だが、先に約束を破ってここに来たのは殿下です。前回忠告いたしましたよね、次はない、と」
「…そ、そんな…ま、待って!アレク様っ!」
「さっさとお連れしろ」
「はっ!」

 副団長の言葉を受けて、騎士たちが王女殿下を連れて行ってしまった。部屋を去っても王女殿下の副団長を呼ぶ声が聞こえたけれど、それも程なくして聞こえなくなった。私は目の前で起きたやり取りに呆気に取られて、王女殿下が去っていったドアを呆然と見つめるしかなかった。きっと今の会話を消化するのを、脳が拒否しているのだろう。副団長が実兄って…それっ重大な王家の重大な秘密なんじゃ…嫌な汗が流れた…



「まぁ、飲め」
「ど、どうも…」

 王女殿下が去った後、仕事部屋に戻ろうとして引き留められ、副団長にお茶まで淹れられてしまった。いいのだろうか…と思ったけれど、先ほど聞いた会話のショックが大き過ぎて言われた通りに腰を下ろしてしまった。二人きりなのが非常に気まずい…

「…あ、あの…」
「今の話は本当だ」
「え?」

 何も聞かなかった事に…と言おうとしたけれど、その前にその道は閉ざされた。

「俺は、国王と王妃の実子だ」
「…え?」

 陛下と王妃様の実子って…それじゃ、第二王子殿下という事に?ええっ?じゃ、本当に王女殿下の兄君なの?

「で、では、どうしてランベール公爵家に…」
「それは俺が、紫瞳を持たなかったからだ」

しおりを挟む
感想 218

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました

Karamimi
恋愛
2年前に両親を亡くしたスカーレットは、1年前幼馴染で3つ年上のデビッドと結婚した。両親が亡くなった時もずっと寄り添ってくれていたデビッドの為に、毎日家事や仕事をこなすスカーレット。 そんな中迎えた結婚1年記念の日。この日はデビッドの為に、沢山のご馳走を作って待っていた。そしていつもの様に帰ってくるデビッド。でもデビッドの隣には、美しい女性の姿が。 「俺は彼女の事を心から愛している。悪いがスカーレット、どうか俺と離縁して欲しい。そして今すぐ、この家から出て行ってくれるか?」 そうスカーレットに言い放ったのだ。何とか考え直して欲しいと訴えたが、全く聞く耳を持たないデビッド。それどころか、スカーレットに数々の暴言を吐き、ついにはスカーレットの荷物と共に、彼女を追い出してしまった。 荷物を持ち、泣きながら街を歩くスカーレットに声をかけて来たのは、この街の騎士団長だ。一旦騎士団長の家に保護してもらったスカーレットは、さっき起こった出来事を騎士団長に話した。 「なんてひどい男だ!とにかく落ち着くまで、ここにいるといい」 行く当てもないスカーレットは結局騎士団長の家にお世話になる事に ※他サイトにも投稿しています よろしくお願いします

処理中です...