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事の顛末
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副団長と会えたのは、それから半日以上経った夜だった。帰ってきた副団長は、酷く疲れた表情をしていた。いつもの爽やかさはどこ行った…と言った風で、目の下には隈が出来ているし、顔色も冴えない。かなり疲労しているのが一目で伝わってきた。
一方で、正直、どんな顔をして会えば…と思ったのも確かだ。記憶がなくなった後、何があったのかを想像するに居た堪れなさ過ぎる…それでも会わない選択もなかった。
それからお互いソファに掛けて、これまでの事を教えて貰った。私が攫われたのは三日前だった事。副団長に救出されたのはその日の夜で、それから丸二日以上眠っていたという。攫われてから倉庫のような場所で目覚めるまでにどれくらい経っているかわからなくて酷く長く感じたけど、実際はほんの数時間だった。
「ジョエルは…どうなりましたか?」
最初に聞いたのは彼の事だった。あの後、担架で運ばれていったけれど、怪我の具合が気になっていた。
「ああ、回復まで時間はかかるだろうが、命に別状はない」
「そうですか。ありがとうございました」
「あのジョエルと言う男は、知り合いだったのか?」
「彼には…以前、婚約を申し込まれた事があったんです…」
そうして私はジョエルの事を話した。実際、彼の事は殆ど知らなかったし、まともに話をしたのは死ぬ直前のあの時だけだったから、話す事はそれほど多くはなかったけど。
「そうか…」
「彼の事、ご存じでしたか?」
「ああ。二年ほど前からメキメキと腕を上げて、団長も見込みがあると期待していたんだ」
そうだったのか…彼なりに努力して、実力で上がってきていたのか。思い出す事も気にする事もなかったけれど、彼なりに頑張っていたと聞いて少しほっとした。そうは言っても、今後どうなるのかが心配だ。
「それで、どうして彼は王女殿下と一緒に?」
そう、彼と王女殿下の接点が全く分からなかった。身分が違い過ぎるし、そもそも王女殿下が彼らと一緒にいた理由がわからない。
「そこはまだわからない。今調べている最中だ」
「そうですか…」
あのディックとロイと呼ばれていた二人なら知っているだろうか…二人の名を出すと、彼らも取り調べを受けているという。
「ど…どうして王女殿下は…」
「あいつはどうやらラドン伯に、女王になれば俺を自分の物に出来ると言われ、本気にしたらしい」
「ええっ?」
それは俄かには信じがたい事だった。副団長がずっと拒否していたのもあるけど、それ以上にラドン伯は自分の孫と王女殿下の婚姻を望み、一方の王女殿下はその婚約を嫌がっていたのだ。
「女王になればどんな望みも叶うと言われたんだろうな。王配としてラドン伯の孫を迎え、俺を愛人として囲う気だったのかもな」
「でも、女王になるには王太子殿下が…」
「ああ、ラドン伯の目的は王太子殿下の排除だ」
「じゃ…王女殿下は…」
実の兄の死を願っていたのだろうか…それほどまでに副団長への想いは強かったのだろうか…
「いや、あれはそこまで深く考えていなかっただろう」
「へ?」
「兄に頼んで王太子の座を退いて貰えればいいと、そう思ったのだと言っているらしい」
「まさか!そんな簡単に王太子の座を明け渡すなんて…」
「普通はそう思うんだけどな。その辺もラドン伯に上手く乗せられたのかもな」
何とも信じ難い話だったが…あの世間知らずで倫理観に欠けた王女殿下ならあり得るのかもしれない、と思った。
「それで、王女殿下は…」
「まだ何とも言えないが…王太子暗殺に関わったからな。生涯幽閉は確定だろう」
本来なら処刑だが、王女であり未成年である事を鑑みれば幽閉が妥当だろう、との事だった。
一方で、正直、どんな顔をして会えば…と思ったのも確かだ。記憶がなくなった後、何があったのかを想像するに居た堪れなさ過ぎる…それでも会わない選択もなかった。
それからお互いソファに掛けて、これまでの事を教えて貰った。私が攫われたのは三日前だった事。副団長に救出されたのはその日の夜で、それから丸二日以上眠っていたという。攫われてから倉庫のような場所で目覚めるまでにどれくらい経っているかわからなくて酷く長く感じたけど、実際はほんの数時間だった。
「ジョエルは…どうなりましたか?」
最初に聞いたのは彼の事だった。あの後、担架で運ばれていったけれど、怪我の具合が気になっていた。
「ああ、回復まで時間はかかるだろうが、命に別状はない」
「そうですか。ありがとうございました」
「あのジョエルと言う男は、知り合いだったのか?」
「彼には…以前、婚約を申し込まれた事があったんです…」
そうして私はジョエルの事を話した。実際、彼の事は殆ど知らなかったし、まともに話をしたのは死ぬ直前のあの時だけだったから、話す事はそれほど多くはなかったけど。
「そうか…」
「彼の事、ご存じでしたか?」
「ああ。二年ほど前からメキメキと腕を上げて、団長も見込みがあると期待していたんだ」
そうだったのか…彼なりに努力して、実力で上がってきていたのか。思い出す事も気にする事もなかったけれど、彼なりに頑張っていたと聞いて少しほっとした。そうは言っても、今後どうなるのかが心配だ。
「それで、どうして彼は王女殿下と一緒に?」
そう、彼と王女殿下の接点が全く分からなかった。身分が違い過ぎるし、そもそも王女殿下が彼らと一緒にいた理由がわからない。
「そこはまだわからない。今調べている最中だ」
「そうですか…」
あのディックとロイと呼ばれていた二人なら知っているだろうか…二人の名を出すと、彼らも取り調べを受けているという。
「ど…どうして王女殿下は…」
「あいつはどうやらラドン伯に、女王になれば俺を自分の物に出来ると言われ、本気にしたらしい」
「ええっ?」
それは俄かには信じがたい事だった。副団長がずっと拒否していたのもあるけど、それ以上にラドン伯は自分の孫と王女殿下の婚姻を望み、一方の王女殿下はその婚約を嫌がっていたのだ。
「女王になればどんな望みも叶うと言われたんだろうな。王配としてラドン伯の孫を迎え、俺を愛人として囲う気だったのかもな」
「でも、女王になるには王太子殿下が…」
「ああ、ラドン伯の目的は王太子殿下の排除だ」
「じゃ…王女殿下は…」
実の兄の死を願っていたのだろうか…それほどまでに副団長への想いは強かったのだろうか…
「いや、あれはそこまで深く考えていなかっただろう」
「へ?」
「兄に頼んで王太子の座を退いて貰えればいいと、そう思ったのだと言っているらしい」
「まさか!そんな簡単に王太子の座を明け渡すなんて…」
「普通はそう思うんだけどな。その辺もラドン伯に上手く乗せられたのかもな」
何とも信じ難い話だったが…あの世間知らずで倫理観に欠けた王女殿下ならあり得るのかもしれない、と思った。
「それで、王女殿下は…」
「まだ何とも言えないが…王太子暗殺に関わったからな。生涯幽閉は確定だろう」
本来なら処刑だが、王女であり未成年である事を鑑みれば幽閉が妥当だろう、との事だった。
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