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どうしてそうなる?
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ミュッセ伯爵との話し合いの後、俺は王太子殿下の元に戻った。まだ殿下暗殺計画と王女の捜査が残っていたからだ。それも凡その調べは終わり、今は最後の詰めと言ったところだ。ここまで来るのに随分時間がかかったが、もう少しでこの件も終わる。
「それで、話し合いはどうだったんだい?」
部屋に入って最初に殿下が発した言葉がそれだった。いつもにこやかな笑みを浮かべているが、今はそこに悪戯めいた何かが見えるのは気のせいだろうか…
「伯爵からは大いに叱責を頂きました。責任を取って結婚しろ、と…」
「やっぱりね」
そう言って殿下が笑みを深めた。
「やはり、こうなると予想されていたのですね…」
そう、エリアーヌ嬢の純潔を奪った賠償として、報酬を上乗せしようと言い出したのは目の前の殿下だった。そんな事をしたら余計に不興を買うと俺が反対したにもかかわらず、押し切ったのだ。
お陰で俺はミュッセ伯爵だけでなく、滅多に怒らない母上からも厳しく咎められた。誓って言うが、俺は殿下の案には反対だった。
でも…目の前の御仁を見ていると、こうなる事を予測してそうしたのだとしか思えない。いや、絶対にこうなる事を狙っていただろう…
「だって、そうでもしないと二人は何時まで経ってもくっ付かないじゃないか」
「何を仰っているのです?」
全く、それでは俺達が互いに想い合っているようではないか。そんな馬鹿な事がある筈もない。彼女は昔から俺を嫌っていたし、仕方なしとは言え純潔を奪った相手なのだ。嫌われる事はあっても、好かれるなどあり得ない。
「アレクがエリーを好きだって事だよ」
「何の事です」
思わず低い声が出てしまった。
「そう、それだよそれ。全く、好きなのにどうしてそうも否定するかなぁ」
「否定も何も、有能な部下だという以外、何とも思っていませんが」
そう、彼女は非常に有能な部下だが、それ以上でもそれ以下でもない。それに、好ましいと思ったところで何になると言うのだ。
「そんなわけないだろう?あんなにわかり易いのに」
「……」
何を言っているんだ、この人は…そう思うのだが、目の前でニヤニヤしながら自分の考えに妙な自信を持っている姿が癪に触った。そうは言っても相手は主君、馬鹿な事を言うなと言うわけにもいかない。
「ミュッセ伯爵から責任をとれって言われたって事は、及第点を頂けて認められたのだろう?」
「だから、どうしてそういう話になるのですか?」
全く、ミュッセ伯爵も母も目の前の殿下も、なぜかそういう話に持って行こうとする。一体俺達に何をさせようと言うんだ。
「どうしてって、可愛い弟には幸せになって貰いたいから?」
そう言って一層にっこりと笑顔を見せたが、それが余計に警戒心を煽った。
「本当にアレクには幸せになって貰いたいんだよ」
急に真面目な表情でそう言われたが…それが難しい事は知っているだろうに。
「人の事よりも、ご自身の事をお考えになられては?そろそろ婚約者を決めろと陛下も仰っていたではありませんか」
そういうと殿下は、藪蛇だった…とため息をついたが、アリソン王女が王族としての資格を失いつつある今、王宮内では今度こそ婚約者を決めるべきだとの声が多数派となっていた。
「アレクが身を固めたら考えるよ」
そう言った殿下だったが、公爵家の三男の俺なら許される事も、王太子となれば許される筈もない。王家を継げるのはもう、王太子殿下しかいないのだから。
「それで、話し合いはどうだったんだい?」
部屋に入って最初に殿下が発した言葉がそれだった。いつもにこやかな笑みを浮かべているが、今はそこに悪戯めいた何かが見えるのは気のせいだろうか…
「伯爵からは大いに叱責を頂きました。責任を取って結婚しろ、と…」
「やっぱりね」
そう言って殿下が笑みを深めた。
「やはり、こうなると予想されていたのですね…」
そう、エリアーヌ嬢の純潔を奪った賠償として、報酬を上乗せしようと言い出したのは目の前の殿下だった。そんな事をしたら余計に不興を買うと俺が反対したにもかかわらず、押し切ったのだ。
お陰で俺はミュッセ伯爵だけでなく、滅多に怒らない母上からも厳しく咎められた。誓って言うが、俺は殿下の案には反対だった。
でも…目の前の御仁を見ていると、こうなる事を予測してそうしたのだとしか思えない。いや、絶対にこうなる事を狙っていただろう…
「だって、そうでもしないと二人は何時まで経ってもくっ付かないじゃないか」
「何を仰っているのです?」
全く、それでは俺達が互いに想い合っているようではないか。そんな馬鹿な事がある筈もない。彼女は昔から俺を嫌っていたし、仕方なしとは言え純潔を奪った相手なのだ。嫌われる事はあっても、好かれるなどあり得ない。
「アレクがエリーを好きだって事だよ」
「何の事です」
思わず低い声が出てしまった。
「そう、それだよそれ。全く、好きなのにどうしてそうも否定するかなぁ」
「否定も何も、有能な部下だという以外、何とも思っていませんが」
そう、彼女は非常に有能な部下だが、それ以上でもそれ以下でもない。それに、好ましいと思ったところで何になると言うのだ。
「そんなわけないだろう?あんなにわかり易いのに」
「……」
何を言っているんだ、この人は…そう思うのだが、目の前でニヤニヤしながら自分の考えに妙な自信を持っている姿が癪に触った。そうは言っても相手は主君、馬鹿な事を言うなと言うわけにもいかない。
「ミュッセ伯爵から責任をとれって言われたって事は、及第点を頂けて認められたのだろう?」
「だから、どうしてそういう話になるのですか?」
全く、ミュッセ伯爵も母も目の前の殿下も、なぜかそういう話に持って行こうとする。一体俺達に何をさせようと言うんだ。
「どうしてって、可愛い弟には幸せになって貰いたいから?」
そう言って一層にっこりと笑顔を見せたが、それが余計に警戒心を煽った。
「本当にアレクには幸せになって貰いたいんだよ」
急に真面目な表情でそう言われたが…それが難しい事は知っているだろうに。
「人の事よりも、ご自身の事をお考えになられては?そろそろ婚約者を決めろと陛下も仰っていたではありませんか」
そういうと殿下は、藪蛇だった…とため息をついたが、アリソン王女が王族としての資格を失いつつある今、王宮内では今度こそ婚約者を決めるべきだとの声が多数派となっていた。
「アレクが身を固めたら考えるよ」
そう言った殿下だったが、公爵家の三男の俺なら許される事も、王太子となれば許される筈もない。王家を継げるのはもう、王太子殿下しかいないのだから。
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