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父と母
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母達と副団長を交えた話し合いは、副団長が王太子殿下に呼び出された事で終わった。母達が私と副団長の結婚を強く希望し、私達はそれに反論出来ないまま流れてしまい、凄く複雑な心境だ。
(うん、あの二人に勝てそうな気が全くしない…)
目の前の母と公爵夫人を見てそう思った。その後、公爵夫人はリアムの元戻り、私は母と二人になった。
「お母様、お父様って…」
一番気になったのは副団長との結婚の事だったけど、それを聞いても同じ事を言われるだけなので、その次に気になっていた事を尋ねた。父は優しくてほのぼのとした雰囲気の人で、でも家には殆どいなくて存在感が薄かった。
「グラン?」
「ええ。お母様たちは…離婚したんじゃなかったのですか?」
「まぁ、そうね。書類上はそうなっているわ」
「それは…お父様が陛下の影、だからですか?」
「そうね」
やはり母達は、リアムが生まれて暫く経った頃に離婚していた。でも…
「書類上はって…」
「そりゃあ、別れる気は毛頭ないからよ。私が愛しているのは彼だけですもの」
「…は?愛して、る…?」
きっぱりそう言われて、私は思わず聞き返してしまった。二人が一緒にいる記憶が殆どないけれど、父は常に母の一歩後ろで静かに佇んでいるだけだった。婿だし、政略なんだろうと思っていただけに、母にそんな気持ちがあったとは意外だったのだ。
「当り前でしょう?でなきゃ、二人も子供を作らなかったわよ」
「そ、そうですか…」
二人は領地が隣り合わせで年もちょうどいいからと、子供の頃に婚約した。侯爵家の五男だった父は地味だけど剣の腕は確かで、騎士団でも将来を期待されていたと言う。何かと規格外な母を宥め、守っていたのが父だったし、そんな父を母はとても信頼していたという。二人並べば釣り合わないと言われ続けてきたが、当人たちは周りの声に反して非常に仲が良かったそうだ。
「ジュディが留学してきてからね。状況が変わったのは」
「王妃様が…」
王妃様は隣国の第六王女で、我が国に留学していた時に陛下に見初められと聞いている。母はその王妃様と仲良くなり、知り合いのいない我が国に嫁ぐのを不安に思った王妃様の頼みで侍女になったという。
「普通の王家ならよかったのよ。あんな…目の色に躍起になるくそ爺さえがいなかったらね」
相変わらずお母様のくそ爺扱いは変わらないらしいが、その先王陛下が元凶だった。紫瞳に拘る先王陛下が、紫瞳を持たない子をいなかった事にしようとしたからだ。
国王陛下と王妃様、そして母達はそれを予想していた。と言うのも、王太子殿下の時にその兆候が見られたからだ。その為陛下や王弟殿下、母達は副団長を救おうと、出産直後に王宮の外に連れ出す計画を立てた。出産直後で乳母になる予定だった母は、私を連れて赤ん坊の泣き声を誤魔化し、何とか脱出したという。
「あの件で私は王宮を辞したの。あの爺もさすがに表立って私達を罰する事は出来ないけど、近くにいるのは危険だからね」
その為、母は領地に籠って領主の仕事に専念したと言う。父もその後陛下に頼み込まれて影になった。その方が先王陛下の動向がわかるので、却って安全だろうと思ったからだ。
「もしかして、うちが貧乏だったのは…」
「まぁ、爺に睨まれたのもあるだろうけど…うちが貧乏になったのは水害のせいだったからね。あの事がなくても貧乏なのは変わらなかったと思うわ」
「そうですか…」
確かに先王陛下でも天候までは操れないだろう。まぁ、国からの支援額には影響したかもしれないけど。
「でも、お父様の事、少しくらいは話してくれたらよかったのに…」
「あの人が嫌がったのよ。余計な心配を掛けたくないって」
「お父様が?」
「ええ。子供達には普通の人生を送って欲しいって言っていたからね」
「そうでしたか」
「でも貴女ったら次々と不正見つけて、危ない連中に狙われているんだもの。その気遣いは無用だったかもねぇ…」
そう言われてしまうと、何とも言い難い気分になった。そう言えば副団長との婚約はラドン伯達から身を護るためだと言われていたっけ。
「貴女も私達の子なのかしらね…」
母が呆れた表情を向けたけれど…母よ、規格外のあなた達と一緒にしないで欲しい。私だって普通に平凡な文官で一生を終えたいのだから。
(うん、あの二人に勝てそうな気が全くしない…)
目の前の母と公爵夫人を見てそう思った。その後、公爵夫人はリアムの元戻り、私は母と二人になった。
「お母様、お父様って…」
一番気になったのは副団長との結婚の事だったけど、それを聞いても同じ事を言われるだけなので、その次に気になっていた事を尋ねた。父は優しくてほのぼのとした雰囲気の人で、でも家には殆どいなくて存在感が薄かった。
「グラン?」
「ええ。お母様たちは…離婚したんじゃなかったのですか?」
「まぁ、そうね。書類上はそうなっているわ」
「それは…お父様が陛下の影、だからですか?」
「そうね」
やはり母達は、リアムが生まれて暫く経った頃に離婚していた。でも…
「書類上はって…」
「そりゃあ、別れる気は毛頭ないからよ。私が愛しているのは彼だけですもの」
「…は?愛して、る…?」
きっぱりそう言われて、私は思わず聞き返してしまった。二人が一緒にいる記憶が殆どないけれど、父は常に母の一歩後ろで静かに佇んでいるだけだった。婿だし、政略なんだろうと思っていただけに、母にそんな気持ちがあったとは意外だったのだ。
「当り前でしょう?でなきゃ、二人も子供を作らなかったわよ」
「そ、そうですか…」
二人は領地が隣り合わせで年もちょうどいいからと、子供の頃に婚約した。侯爵家の五男だった父は地味だけど剣の腕は確かで、騎士団でも将来を期待されていたと言う。何かと規格外な母を宥め、守っていたのが父だったし、そんな父を母はとても信頼していたという。二人並べば釣り合わないと言われ続けてきたが、当人たちは周りの声に反して非常に仲が良かったそうだ。
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「王妃様が…」
王妃様は隣国の第六王女で、我が国に留学していた時に陛下に見初められと聞いている。母はその王妃様と仲良くなり、知り合いのいない我が国に嫁ぐのを不安に思った王妃様の頼みで侍女になったという。
「普通の王家ならよかったのよ。あんな…目の色に躍起になるくそ爺さえがいなかったらね」
相変わらずお母様のくそ爺扱いは変わらないらしいが、その先王陛下が元凶だった。紫瞳に拘る先王陛下が、紫瞳を持たない子をいなかった事にしようとしたからだ。
国王陛下と王妃様、そして母達はそれを予想していた。と言うのも、王太子殿下の時にその兆候が見られたからだ。その為陛下や王弟殿下、母達は副団長を救おうと、出産直後に王宮の外に連れ出す計画を立てた。出産直後で乳母になる予定だった母は、私を連れて赤ん坊の泣き声を誤魔化し、何とか脱出したという。
「あの件で私は王宮を辞したの。あの爺もさすがに表立って私達を罰する事は出来ないけど、近くにいるのは危険だからね」
その為、母は領地に籠って領主の仕事に専念したと言う。父もその後陛下に頼み込まれて影になった。その方が先王陛下の動向がわかるので、却って安全だろうと思ったからだ。
「もしかして、うちが貧乏だったのは…」
「まぁ、爺に睨まれたのもあるだろうけど…うちが貧乏になったのは水害のせいだったからね。あの事がなくても貧乏なのは変わらなかったと思うわ」
「そうですか…」
確かに先王陛下でも天候までは操れないだろう。まぁ、国からの支援額には影響したかもしれないけど。
「でも、お父様の事、少しくらいは話してくれたらよかったのに…」
「あの人が嫌がったのよ。余計な心配を掛けたくないって」
「お父様が?」
「ええ。子供達には普通の人生を送って欲しいって言っていたからね」
「そうでしたか」
「でも貴女ったら次々と不正見つけて、危ない連中に狙われているんだもの。その気遣いは無用だったかもねぇ…」
そう言われてしまうと、何とも言い難い気分になった。そう言えば副団長との婚約はラドン伯達から身を護るためだと言われていたっけ。
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