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舞踏会が開かれるそうです
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クラリスが帰ってからかなり経ってから、母達が帰ってきた。リアムは初めての王宮に大興奮して、その日見たものを熱く語ってくれた。この子も私と同じように文官を目指しているので、ある意味職場見学のようなものだったかもしれない。文官業に関しては私もアドバイス出来るけれど、やっぱり生で未来の職場を見るとやる気が一層増したのだろう。来週には学園の見学もあるし、リアムはすっかり張り切っていた。んだけど…
「はぁ?舞踏会?」
その後、母達に聞かされたのは、一月後に催される国王陛下の誕生を祝う舞踏会への参加の打診だった。いや、打診ですらない、決定事項なのだから。
「そういう訳で、エリーはあの子と出るのよ」
母の言うあの子とは副団長の事だ。赤ちゃんの頃から知っているせいか、格上の公爵家の子息と言うよりも近所の顔見知りの子のような扱いになっている。一般的には不敬と言われる言動だけど、副団長が気にしていないのが救いだろうか…
「早速ドレスも用意しなきゃね!」
そう言って張り切るのは公爵夫人だった。母やリアムの分まで手配する気満々で、いいのだろうかと不安になるけど、口を挟む余地がない。早速家令に仕立て屋の手配をしていた。
「リーヌとジュディとでドレスを揃えたいわ」
「好きにしてちょうだい」
「やった!早速ジュディに話してこなきゃ!」
公爵夫人はまるで少女の様な笑みを浮かべて張り切っていた。私のドレスは副団長とお揃いで、デザインなどは公爵夫人が手配されていた。もう何も言うまい…
でも、程なくして婚約を白紙にする予定の筈だ。この状況で婚約者として王家の舞踏会に出るのは悪手ではないだろうか。それに、先王陛下も近頃は老いのせいかあまり表に出て来られないと聞くが、影響力はまだお持ちだと聞く。その状態で母が顔を出して大丈夫なのだろうか…
「リアムは初めてよね」
「はい。とっても楽しみです」
何も知らないリアムは、心の底から楽しみにしているのが丸わかりで、そこに水を差すのが憚られた。多分父がどこかから見守ってくれるのだろう。そう思う事にした。
想定外の事は、その後も続いた。何と、王太子殿下が騎士団にやってきたのだ。王族が騎士団に視察に来るのはよくある事なので驚く話ではないが、殿下のお茶の準備などを頼まれたのだ。そりゃあ、騎士団は男所帯だし、侍女はいるけど身分が低い者が多い。今迄も役職者付きの専属文官がやっていたらしく、今回は私が指名されたのだ。この場合、やはりお茶を淹れるのは女性の方がいいだろうと、それだけの理由だ。
「やぁ、エリー、久しぶりだね」
騎士団長用の来賓専用の応接間のソファに掛けて親しく声を掛けてこられたのは、王太子殿下だった。相変わらず気安く声を掛けて下さるが、こっちは慣れない事で緊張してそれどころではない。お茶を淹れるのも得意とは言い難いし、護衛に囲まれての作業で粗相をしそうで気が気ではなかった。
「ご無沙汰しております…」
「元気そうでよかったよ。いつぞやは妹がすまなかった」
「いえ、王太子殿下のせいではありませんから…」
実際、あれはアリソン王女の暴走で、王太子殿下に責任はないだろう。もしあるとしたら彼女を甘やかしてあんな風にした先王様で、その次は先王様に口が出せなかった陛下達だ。
「そう言ってくれると有難いのだけど…」
そう言って殿下は眉を八の字に下げたけど、その眼には悲しみに似た何かが見えたような気がした。妹が罪人として断罪されるのだ、平常心でいられる筈もないだろう。
「そうそう、今日はエリーに謝りたい事があってね」
「謝りたい事、ですか?」
「そう。ちょっと込み入った話になるから…アレク以外は部屋を出てくれないかな?」
殿下が近くに控える護衛騎士たちを見渡すと、静かにそう告げた。
「はぁ?舞踏会?」
その後、母達に聞かされたのは、一月後に催される国王陛下の誕生を祝う舞踏会への参加の打診だった。いや、打診ですらない、決定事項なのだから。
「そういう訳で、エリーはあの子と出るのよ」
母の言うあの子とは副団長の事だ。赤ちゃんの頃から知っているせいか、格上の公爵家の子息と言うよりも近所の顔見知りの子のような扱いになっている。一般的には不敬と言われる言動だけど、副団長が気にしていないのが救いだろうか…
「早速ドレスも用意しなきゃね!」
そう言って張り切るのは公爵夫人だった。母やリアムの分まで手配する気満々で、いいのだろうかと不安になるけど、口を挟む余地がない。早速家令に仕立て屋の手配をしていた。
「リーヌとジュディとでドレスを揃えたいわ」
「好きにしてちょうだい」
「やった!早速ジュディに話してこなきゃ!」
公爵夫人はまるで少女の様な笑みを浮かべて張り切っていた。私のドレスは副団長とお揃いで、デザインなどは公爵夫人が手配されていた。もう何も言うまい…
でも、程なくして婚約を白紙にする予定の筈だ。この状況で婚約者として王家の舞踏会に出るのは悪手ではないだろうか。それに、先王陛下も近頃は老いのせいかあまり表に出て来られないと聞くが、影響力はまだお持ちだと聞く。その状態で母が顔を出して大丈夫なのだろうか…
「リアムは初めてよね」
「はい。とっても楽しみです」
何も知らないリアムは、心の底から楽しみにしているのが丸わかりで、そこに水を差すのが憚られた。多分父がどこかから見守ってくれるのだろう。そう思う事にした。
想定外の事は、その後も続いた。何と、王太子殿下が騎士団にやってきたのだ。王族が騎士団に視察に来るのはよくある事なので驚く話ではないが、殿下のお茶の準備などを頼まれたのだ。そりゃあ、騎士団は男所帯だし、侍女はいるけど身分が低い者が多い。今迄も役職者付きの専属文官がやっていたらしく、今回は私が指名されたのだ。この場合、やはりお茶を淹れるのは女性の方がいいだろうと、それだけの理由だ。
「やぁ、エリー、久しぶりだね」
騎士団長用の来賓専用の応接間のソファに掛けて親しく声を掛けてこられたのは、王太子殿下だった。相変わらず気安く声を掛けて下さるが、こっちは慣れない事で緊張してそれどころではない。お茶を淹れるのも得意とは言い難いし、護衛に囲まれての作業で粗相をしそうで気が気ではなかった。
「ご無沙汰しております…」
「元気そうでよかったよ。いつぞやは妹がすまなかった」
「いえ、王太子殿下のせいではありませんから…」
実際、あれはアリソン王女の暴走で、王太子殿下に責任はないだろう。もしあるとしたら彼女を甘やかしてあんな風にした先王様で、その次は先王様に口が出せなかった陛下達だ。
「そう言ってくれると有難いのだけど…」
そう言って殿下は眉を八の字に下げたけど、その眼には悲しみに似た何かが見えたような気がした。妹が罪人として断罪されるのだ、平常心でいられる筈もないだろう。
「そうそう、今日はエリーに謝りたい事があってね」
「謝りたい事、ですか?」
「そう。ちょっと込み入った話になるから…アレク以外は部屋を出てくれないかな?」
殿下が近くに控える護衛騎士たちを見渡すと、静かにそう告げた。
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