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土下座?されました
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「すまない!」
そう言いながら目の前で土下座の勢いで頭を下げるのは、我が国の第二王子殿下だった。
あの後私は、勤務時間になってからやってきた彼の副官のオイゲン殿に発見され、ようやく殿下から引きはがして貰った。それでもまだ彼は目を覚まさないため心配になったが、魔力切れはこんなものだと言われればどうしようもなかった。命に別状はないし、既に薬も飲んでいるので、後は目覚めるのを待つしかないと言われてしまえばそれまでだ。そもそも魔力切れが何なのかもわからないので、反論のしようもない。
そんな彼が目を覚ましたのは、日差しがオレンジ色に変わり山の端に消えようとする頃だった。目が覚めた彼はオイゲン殿から事情を聴いて…今に至る。
「あの…本当にもういいですから」
さすがに王子殿下に頭を下げさせるなど私の心臓に悪すぎるので、頭を上げるようにお願いした。彼も意識がなかったのだからその事にどうこう言うつもりはないし、助けてくれたのは間違いなく彼なのだ。それよりも、どうしてあのタイミングで現れたのか、そちらの方が気になって仕方がなかった。
「どうして…あの時、こちらに?」
「それは…お前の助けを呼ぶ声が聞こえて…それで…」
「……は?」
帰ってきた答えに、私は数秒固まってしまった。確かに誰か助けてとは叫んだけれど、それが届く場所にいたのだろうか?いや、それなら移転魔術なんて使う必要はなかったはずだし…
「ああ、ミュッセ嬢の持っているペンダントですよ」
何となく視線をさ迷わせる殿下の代わりに答えたのは、オイゲン殿だった。
「ペンダント?」
「ええ、以前アレクから受け取ったでしょう?」
そう言われて思い至ったのは、婚約した後に持っているようにと言われて渡されたペンダントだった。彼の魔力で作ったと言われたあの青い石のことだろうか…
「もしかして……これ、ですか?」
服の下に着けていたそれを取り出すと、オイゲン殿がそれですよとあっさり答えたけど…これって私の声が聞こえる機能があったということ?
「これって…まさか…盗聴する機能が?」
「違う!そんな機能はない。ただ…」
「ただ?」
「お前が助けを求めた時だけ、反応するようにしてある」
「……は?」
そんなことが可能なのだろうか?そりゃあ魔術では出来ないことも出来ると聞いたことはあるけれど…
「これは対象者が助けを求めた時に反応し、その場を特定できるように作られているんだ」
「特定…」
何それ、便利だけどちょっと怖い…と思ったのは内緒だけど…そんなことまで出来るとは思わなかった。
「それじゃ…あの時殿下が突然現れたのは…」
「お前の助けを呼ぶ声が聞こえて…気が付いたら飛んでいた」
「飛んで…」
そんなに簡単に転移魔術なんて出来るのか…それも驚きだけど…
(どうして…私なんかのために…)
一度は振り切ったはずの自分に都合の良すぎる考えが、じわりとシミの様に広がるのを感じた。一歩遅れて勘違いだったら…と思い直し、その考えを抑え込む。どうして…と聞きたいけれど、答えが私の望むそれでなかったらと思うと、その一歩が踏み出せないでいた。
「…はぁ…アレク、もういい加減にはっきりしたらどうですか?」
何と言っていいのかと悩んでいたせいか、沈黙が部屋の中を支配した。そんな中、オイゲン殿が盛大なため息をついてそう言った。
「おい、ジェラール…」
「ヘタレもここまでくると鬱陶しいだけですよ」
「な…!ヘタレだと?」
「そうじゃないですか?自分で手放しておきながら、ペンダントの回収はわざとしない。これのどこがヘタレじゃないと?」
「あ、あれは…回収し忘れて…」
「そんな筈ないでしょう?その気になれば離れていようが直ぐに消す事も出来るんですから」
「…っ」
オイゲン殿の指摘に殿下が悔しそうに顔を歪めた後、視線をそらした。ということは、オイゲン殿の言う通りなのだろう。直ぐに消すことが出来るって…それじゃ…殿下は意図的にこれを私に?
「いい加減にはっきりして下さい。でないと我々も動けなくて困るんですよ」
「しかし…」
「これ以上こじらすなら、王太子殿下に命令して貰いますよ?」
「ま、待て…それは…」
「今夜中にはっきり決めて下さい。では、私は王太子殿下に報告に向かいますので」
そう言うとオイゲン殿は徐に立ち上がって、部屋を出て行こうとした。
「おい待てって!報告って何だよ?」
「何って…アレクにようやく春が来たとお伝えするだけです」
「はぁ?春って、俺は…!」
「では。そういうことですので。しっかり言うべきことは言って、やるべきことはやっておいて下さいね」
そう言うとオイゲン殿は本当に出て行ってしまったけど…報告とか春とか、一体どういうことだろう…
そう言いながら目の前で土下座の勢いで頭を下げるのは、我が国の第二王子殿下だった。
あの後私は、勤務時間になってからやってきた彼の副官のオイゲン殿に発見され、ようやく殿下から引きはがして貰った。それでもまだ彼は目を覚まさないため心配になったが、魔力切れはこんなものだと言われればどうしようもなかった。命に別状はないし、既に薬も飲んでいるので、後は目覚めるのを待つしかないと言われてしまえばそれまでだ。そもそも魔力切れが何なのかもわからないので、反論のしようもない。
そんな彼が目を覚ましたのは、日差しがオレンジ色に変わり山の端に消えようとする頃だった。目が覚めた彼はオイゲン殿から事情を聴いて…今に至る。
「あの…本当にもういいですから」
さすがに王子殿下に頭を下げさせるなど私の心臓に悪すぎるので、頭を上げるようにお願いした。彼も意識がなかったのだからその事にどうこう言うつもりはないし、助けてくれたのは間違いなく彼なのだ。それよりも、どうしてあのタイミングで現れたのか、そちらの方が気になって仕方がなかった。
「どうして…あの時、こちらに?」
「それは…お前の助けを呼ぶ声が聞こえて…それで…」
「……は?」
帰ってきた答えに、私は数秒固まってしまった。確かに誰か助けてとは叫んだけれど、それが届く場所にいたのだろうか?いや、それなら移転魔術なんて使う必要はなかったはずだし…
「ああ、ミュッセ嬢の持っているペンダントですよ」
何となく視線をさ迷わせる殿下の代わりに答えたのは、オイゲン殿だった。
「ペンダント?」
「ええ、以前アレクから受け取ったでしょう?」
そう言われて思い至ったのは、婚約した後に持っているようにと言われて渡されたペンダントだった。彼の魔力で作ったと言われたあの青い石のことだろうか…
「もしかして……これ、ですか?」
服の下に着けていたそれを取り出すと、オイゲン殿がそれですよとあっさり答えたけど…これって私の声が聞こえる機能があったということ?
「これって…まさか…盗聴する機能が?」
「違う!そんな機能はない。ただ…」
「ただ?」
「お前が助けを求めた時だけ、反応するようにしてある」
「……は?」
そんなことが可能なのだろうか?そりゃあ魔術では出来ないことも出来ると聞いたことはあるけれど…
「これは対象者が助けを求めた時に反応し、その場を特定できるように作られているんだ」
「特定…」
何それ、便利だけどちょっと怖い…と思ったのは内緒だけど…そんなことまで出来るとは思わなかった。
「それじゃ…あの時殿下が突然現れたのは…」
「お前の助けを呼ぶ声が聞こえて…気が付いたら飛んでいた」
「飛んで…」
そんなに簡単に転移魔術なんて出来るのか…それも驚きだけど…
(どうして…私なんかのために…)
一度は振り切ったはずの自分に都合の良すぎる考えが、じわりとシミの様に広がるのを感じた。一歩遅れて勘違いだったら…と思い直し、その考えを抑え込む。どうして…と聞きたいけれど、答えが私の望むそれでなかったらと思うと、その一歩が踏み出せないでいた。
「…はぁ…アレク、もういい加減にはっきりしたらどうですか?」
何と言っていいのかと悩んでいたせいか、沈黙が部屋の中を支配した。そんな中、オイゲン殿が盛大なため息をついてそう言った。
「おい、ジェラール…」
「ヘタレもここまでくると鬱陶しいだけですよ」
「な…!ヘタレだと?」
「そうじゃないですか?自分で手放しておきながら、ペンダントの回収はわざとしない。これのどこがヘタレじゃないと?」
「あ、あれは…回収し忘れて…」
「そんな筈ないでしょう?その気になれば離れていようが直ぐに消す事も出来るんですから」
「…っ」
オイゲン殿の指摘に殿下が悔しそうに顔を歪めた後、視線をそらした。ということは、オイゲン殿の言う通りなのだろう。直ぐに消すことが出来るって…それじゃ…殿下は意図的にこれを私に?
「いい加減にはっきりして下さい。でないと我々も動けなくて困るんですよ」
「しかし…」
「これ以上こじらすなら、王太子殿下に命令して貰いますよ?」
「ま、待て…それは…」
「今夜中にはっきり決めて下さい。では、私は王太子殿下に報告に向かいますので」
そう言うとオイゲン殿は徐に立ち上がって、部屋を出て行こうとした。
「おい待てって!報告って何だよ?」
「何って…アレクにようやく春が来たとお伝えするだけです」
「はぁ?春って、俺は…!」
「では。そういうことですので。しっかり言うべきことは言って、やるべきことはやっておいて下さいね」
そう言うとオイゲン殿は本当に出て行ってしまったけど…報告とか春とか、一体どういうことだろう…
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