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王籍に復帰した理由
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「まぁ、飲めよ」
「あ、ありがと…ございます…」
あれから湯殿でしっかりと磨き上げられた私は、肌触りのいい夜着に着替えさせられた。そして案内された部屋はというと…
(…ここって、主の主寝室じゃない?)
造りといい装飾といい位置といい、ここは屋敷の主の主寝室にしか思えなかった。というか間違いないだろう。呆然と立ち尽くしていると、この部屋に繋がるドアから彼―アレクが現れた。彼もまた湯あみを終えてガウン姿だった。ラフな格好もまた絵になって、ドキドキしてしまうのはこの状況のせいだろう。
(…な、何でこうなっているのよ?)
叫びたくなる状況だったけれど、彼が柔らかい笑顔でソファに招くものだから彼の顔がドストライクの私に逆らえるはずもなかった。促されるまま隣に座ると液体が入ったグラスを手渡してきた。テーブルには既に軽食が並んでいたけれど…
(…この状況は、何?)
戸惑いながらもグラスを受け取ると、当然のように肩を抱いてきた。その動作にドキドキする自分がいて、誤魔化すようにグラスに口を付けた。
「あ、あの…」
「まぁ、まずは飯にしよう。食べながら話す」
この状況の理由が知りたくてそう言いかけると、そう提案された。室内に美味しそうな匂いが満たされて、身体が空腹だと訴えている。そう言えばお昼も簡単に済ませていたな、と思い出して、素直に食欲に従うことにした。
「…どこから何を話せばいいんだか…」
そう前置きしてから彼は、これまでのことを話してくれた。彼が王子として王籍に復帰することは彼の本意ではなく、その計画も当初はなかったのだと言った。
「じゃ…王籍に戻ったのは…」
「アリソンが女王になろうとしたからだ」
「アリソン様が…」
「ああ。元々あいつは兄上のための保険だったんだ」
「保険?」
「王位継承権を持つ王族が兄上一人では、兄上を亡き者にして国を手に入れようとする輩に狙われる。アリソンはそれを抑えるために必要だったんだ」
なるほど、確かに王太子殿下お一人だけと、他に王子王女がいるのでは雲泥の差だろう。
「それでも俺が王籍に戻るのは難しかったんだが…情況が変わった」
「情況?」
「フランクールの王が母上の実兄になられた」
フランクール国では最近、第二王子が即位された。正妃が産んだ王太子が、側妃が産んだ第二王子を陥れようとしたことが発覚して廃籍され、それを助けた正妃も廃妃されたのだ。彼の国は王女が六人いるが王子は二人だけで、女性に継承権はなかった。
「王統が伯父上と母上の側に移って、俺と兄上のフランクールの王位継承権が上がった。要は俺の価値も上がって王籍に戻るのが可能になったんだ。俺はフランクールの王族の色だからな」
そう言えばアレクの金髪と青い瞳は、フランクール王族の色だ。新たに国王となった王妃様の兄君も同じ色をしていた。
「アリソンが廃籍されても、俺が王籍に戻れば問題ない。女王が一般的でない分、俺の方が盾としては強くなるからな」
「それで、王籍に復帰を?」
「ああ。フランクールの伯父上には幼い王子がお一人だ。あちらも王位継承権を持つ者が少ないし、俺をこのまま地に置くわけにはいかなかったんだろう。フランクールでは青瞳が王家の色だしな」
確かに彼がフランクールの王位継承権を持つと知られれば、本人の意思に反して利用する者が出てきてもおかしくはない。我が国よりあちらの方が大国で、利用価値も高いのだから。となれば、彼を一介の貴族のままにしておくのは危険だと思われても仕方がないだろう。
それに、市井で流行っている小説の影響もあって、我が国の民の間では青瞳でも問題ないと思われているのだ。これで大国の王位継承権があれば、異議を唱えるのは難しいだろう。特に貴族は。
(いつの間にか…随分面倒な立場になっちゃった、のね…)
我が国だけでも厄介だったのに、大国フランクールもだなんて…思いが通じたと喜んでいたけれど…もしかしてこの先にあるのって、いばらの道なんじゃないだろうか…話のスケールの大きさに、何だか頭が痛くなってきた。
「あ、ありがと…ございます…」
あれから湯殿でしっかりと磨き上げられた私は、肌触りのいい夜着に着替えさせられた。そして案内された部屋はというと…
(…ここって、主の主寝室じゃない?)
造りといい装飾といい位置といい、ここは屋敷の主の主寝室にしか思えなかった。というか間違いないだろう。呆然と立ち尽くしていると、この部屋に繋がるドアから彼―アレクが現れた。彼もまた湯あみを終えてガウン姿だった。ラフな格好もまた絵になって、ドキドキしてしまうのはこの状況のせいだろう。
(…な、何でこうなっているのよ?)
叫びたくなる状況だったけれど、彼が柔らかい笑顔でソファに招くものだから彼の顔がドストライクの私に逆らえるはずもなかった。促されるまま隣に座ると液体が入ったグラスを手渡してきた。テーブルには既に軽食が並んでいたけれど…
(…この状況は、何?)
戸惑いながらもグラスを受け取ると、当然のように肩を抱いてきた。その動作にドキドキする自分がいて、誤魔化すようにグラスに口を付けた。
「あ、あの…」
「まぁ、まずは飯にしよう。食べながら話す」
この状況の理由が知りたくてそう言いかけると、そう提案された。室内に美味しそうな匂いが満たされて、身体が空腹だと訴えている。そう言えばお昼も簡単に済ませていたな、と思い出して、素直に食欲に従うことにした。
「…どこから何を話せばいいんだか…」
そう前置きしてから彼は、これまでのことを話してくれた。彼が王子として王籍に復帰することは彼の本意ではなく、その計画も当初はなかったのだと言った。
「じゃ…王籍に戻ったのは…」
「アリソンが女王になろうとしたからだ」
「アリソン様が…」
「ああ。元々あいつは兄上のための保険だったんだ」
「保険?」
「王位継承権を持つ王族が兄上一人では、兄上を亡き者にして国を手に入れようとする輩に狙われる。アリソンはそれを抑えるために必要だったんだ」
なるほど、確かに王太子殿下お一人だけと、他に王子王女がいるのでは雲泥の差だろう。
「それでも俺が王籍に戻るのは難しかったんだが…情況が変わった」
「情況?」
「フランクールの王が母上の実兄になられた」
フランクール国では最近、第二王子が即位された。正妃が産んだ王太子が、側妃が産んだ第二王子を陥れようとしたことが発覚して廃籍され、それを助けた正妃も廃妃されたのだ。彼の国は王女が六人いるが王子は二人だけで、女性に継承権はなかった。
「王統が伯父上と母上の側に移って、俺と兄上のフランクールの王位継承権が上がった。要は俺の価値も上がって王籍に戻るのが可能になったんだ。俺はフランクールの王族の色だからな」
そう言えばアレクの金髪と青い瞳は、フランクール王族の色だ。新たに国王となった王妃様の兄君も同じ色をしていた。
「アリソンが廃籍されても、俺が王籍に戻れば問題ない。女王が一般的でない分、俺の方が盾としては強くなるからな」
「それで、王籍に復帰を?」
「ああ。フランクールの伯父上には幼い王子がお一人だ。あちらも王位継承権を持つ者が少ないし、俺をこのまま地に置くわけにはいかなかったんだろう。フランクールでは青瞳が王家の色だしな」
確かに彼がフランクールの王位継承権を持つと知られれば、本人の意思に反して利用する者が出てきてもおかしくはない。我が国よりあちらの方が大国で、利用価値も高いのだから。となれば、彼を一介の貴族のままにしておくのは危険だと思われても仕方がないだろう。
それに、市井で流行っている小説の影響もあって、我が国の民の間では青瞳でも問題ないと思われているのだ。これで大国の王位継承権があれば、異議を唱えるのは難しいだろう。特に貴族は。
(いつの間にか…随分面倒な立場になっちゃった、のね…)
我が国だけでも厄介だったのに、大国フランクールもだなんて…思いが通じたと喜んでいたけれど…もしかしてこの先にあるのって、いばらの道なんじゃないだろうか…話のスケールの大きさに、何だか頭が痛くなってきた。
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