どうやら私はバッドエンドに辿りつくようです。

夏目

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第二章 王子殿下の悪徳

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「少し、座る?」
「……その前に、少し確認したいことがあるのだけど、いい?」
「うん。リスト様はあんたについとけって言ったからね」

 ハルを引き連れて、屋敷のなかに戻る。
 使用人達に居なくなった使用人のことをきいて回る。彼らのなかには、耳が聞こえない奴らもいるので手や背中に文字を書くことになる。文字を知っているのかと懸念したが、簡単な単語は分かるのだろう。よく話してくれた。
 いなくなっただろう使用人の名前は予想がついた。屋敷に来て、初めて私に花束をくれた侍女のリジ―。私がきちんと食事できるように腐心してくれた料理人のヨシュア。時々、虹を見せてくれた庭師のニューロン。予想は的中だった。みんな、彼らが辞めていったと言った。どこに行ったかは知らないという。


「……名前、覚えてるんだ」

 寝室に戻り、ソファーに腰掛ける。ハルは勧めても座ろうとはしなかった。そのかわり口を開いてそう言った。

「自分の屋敷の住人よ。覚えていないはずがないじゃない。……噂話もしなくって、心地のいい奴らだった」


 部屋の中で耳をそば立てて怖がらずにいられたのは久しぶりだった。けれど、そんな彼らの心を澱ませてしまった。優しくしたつもりはない。
 優しくしてもらったのはこちらで、ずっと甘えきっていた。彼らに報いなかったから、フィリップ兄様の誘いに乗ってしまったのだろう。
 死んでいなければいいが……たぶん死んでいる。フィリップ兄様が手緩い処分を下すわけがない。
 私が悪いのだ。でも、彼らも悪かった。彼らは裁かれ、私はのうのうとしている。
 天秤が歪んでいる。目を閉じて、指先の神経に集中する。この手で彼らに触れたことを、忘れないでいたい。そうしなければならないと思う。

「付き合わせてごめんなさい。……お前とリストのこと、訊いてもいい?」
「俺はリスト様の剣奴になった。それだけ」
「保護されたのではなくて、剣奴になったの?」

 イルがリストの助けを求めたと聞いた時から、ハルがリストのところにいることは察しがついていた。
 だが、ハルは空賊の一員だった。リストが剣奴として迎え入れるのは難しい相手のはずだ。

「名目上だけど。リスト様と一緒にカンドを探すつもりだから」
「……カンド? あいつ、そういえばどこに居るの」
「あいつはあんたが来る前に消えてた。『聖塔』の過激派との関連が疑われているんだ」

『聖塔』の過激派と空賊は対立関係にあったはずだ。民衆から人気のある空賊を、過激派が妬んでいた。
 だが、空賊はもともとリュウがリーダーだった。彼はサガルの部下で、命令によって空賊のリーダーをやっていたと私は疑っている。
 敵対組織を動きを掴むため、そしていざという時のために組織内を操作するため、サガルはリュウをリーダーに据えたはず。
 カンドが過激派に情報を流していたとしたら、過激派がカンドを連れて行ったのかもしれない。サガルは裏切り者を探すために、空賊を拷問していたのか?


「ハルは裏切り者を探しているの? どうして?」
「……その前にあんたに訊いておきたいことがあるんだ」

 ハルは窓へと近付いていく。窓の外にはさっき襲ってきた鳥達がバルコニーを我が物顔で占拠している。こいつらは私を狙っているのだろうけど、何が目的なんだろう。

「どうして、自分のせいじゃないのに、あの時、あんなに悪びれたりしたの。俺に嫌われたかったわけ?」

 あの時。ハルと決別した時か。

「……。悪びれたわけじゃ」
「俺はあんたを許そうとしたんだよ」
「それは気がついていたわ。……だから、嫌だったのよ。ハルの憎悪はどこにいくの。それに、怒りから来る矜持は? 許すという行為はハルの感情を蹂躙する。私は、鳥人間の事件の当事者でもあった。怒りをぶつけるのは正しいわ」

 カーテンをまとめる紐をほどきて、片方のカーテンをひく。
 半月のように部屋のなかが半分、暗くなる。

「あのときは信じられない気持ちでいっぱいだった。頭に血がのぼって、何も考えられなくなった。貧民の死は俺にとって重かった。だって、実際に死体を見たから。床にこびりついた血をこの手で、落としたんだ。踏み潰されて、床から剥がれない髪を何本もピンで取った。顔のない死体の葬式をした。何度も泣く仲間を見た。それを嘲笑われたと思ったよ。あんたは結局、他の偉ぶった奴らと同じだって。俺達が死んだところで胸が痛まない、鬼畜な女だって」

 ハルの顔は半分、影になって見えなかった。

「でも、学校で俺を庇っただろ。それにレゾルールの地下室にやってきて一緒になって逃げ回った。やっていることと言っていることがぐちゃぐちゃだ」
「それは私も自覚してたわよ。いろいろな人に苦言を呈されたもの。でも、体が勝手に動いたというか……」
「俺はあんたを殺すと宣言してたのに、あんたは馬鹿のひとつ覚えのように俺を助けてさ。リュウも生きていて憎悪が的外れだったことも知ってたんだろ。これじゃあ、憎むにも、憎めない。俺が悪いんだよ」
「ハル」

 名前を呼ぶことしかできなかった。自分勝手に動いて、ハルの心を知らず知らずのうちに圧迫していたのだろうか。そんなつもりはなかったと弁解しても遅いだろう。私の気持ちをハルは正確に掴んでいるようだった。

「どうしてかな、あんたのことを鬼畜だと思っていたときのほうが、今よりずっとあんたをまっすぐに見れた。今は、ずっと見つめ合っているとふつふつとどす黒い感情に支配されそうになって目を逸らしたくなる」


 気弱な言葉に、私は違う悍ましい感情を持った。ハルは罪悪感で縛られ、身動きが取れないのだ。私に卑しい感情をぶつけられず、自分自身を責めている。
 ハルにとって私は、それほどまでに肥大化した感情を向ける相手になっている。

「……今までのこと、ごめん。俺は見当違いの八つ当たりをしてた」
「ハルが謝ることなんかない。ハルのことを傷つけようと思って傷付けたの。それに、ハルの言葉は正しいわよ。私は鬼畜な女なの。被害に目を向けなかったどうしようもない馬鹿なのよ」
「……そう言うかもと思った。けど、そんなことを言うあんたは嫌いだ。俺のこと、あんたが傷付けて欲しいのに」

 窓からハルが近付いてくる。ハルと決別したあの日と全く違う場所なのに、あの時に戻ったような気がした。

「……そうね、じゃあお望み通り傷付けてあげるわ。ハル、お前を殺すのは私よ。その首を、貰うのは私」

 呪いを刻むように、ハルの首に手をかける。背伸びしなくては届かない。木のように伸びる身長に内心驚く。ハルは私と会っていたときはいつも背を丸めていた。今はぴんと背筋を伸ばしている。
 皺のないシャツをきて、よれていない青いズボンを履いている。リストがハルを変えたのかと思うと複雑な感情が過った。
 私はきっと、ハルがずっと隣にいてくれることを望んでいた。

「ねえ、ハル、カンドを見つけたら死ぬつもり?」

 ごくりと喉が鳴った。図星なのかと息が詰まる。

「少し、違う。さっきの話しの続きをしよう。カルディア」



 名前を呼ばれ、舞い上がりそうになる自分をくっと抑えて、ハルの言葉に傾注する。

「カンドは裏切り者じゃない。少なくとも俺はそう思っている」
「けれど、リストと組んでカンドを探しているのでしょう?」
「リスト様は立場上、疑うことをやめるわけにはいかないから」
「……カンドは、過激派がわざと逃したの?」
「リスト様の考えは違う。あの人は、過激派はそもそも裏切り者が誰か分からないんじゃないかって」
「どういうこと?」

 過激派の人間はリークしてきた相手を確かめずに、情報を鵜呑みにしたということか?

「過激派のリーダーと裏切り者は直接面識がないんだと思う。部下を通じて、裏切り者と取引していたはず。リスト様が言うには、過激派のリーダーは高齢で、長年王都の世話役をやっているらしい。今回の鳥人間の一件も計画立案をしたのは彼だと思っているみたいだ」
「裏切り者と交渉していた人物はどこに行ったの? 過激派のリーダーが知らなくても、部下が知っているはずでしょう?」
「ファミ河の氾濫に王都にいた過激派の連中は何人か巻き込まれてる。連絡をやり取りしていた部下はそのうちの一人だと推測してた。カンドは裏切り者じゃない。もし、過激派の連中がカンドを助け出していれば、裏切り者を誰も知らない証左だろうって」

 カンドを助け出したのが過激派じゃなければ、話は少し変わってきそうだが。

 けれど、過激派が態々カンドを助ける愚考を犯すだろうか。レゾルールから助け出すリスクより、裏切り者を助ける利点があるのか?

「待って。カンドを裏切り者じゃないと決めつける証拠は?」
「鳥人間の襲撃が証拠だよ。カンドはリュウが空賊のリーダーだって知ってた」
「でも、鳥人間の計画って、様々な思惑があったのでしょう? 過激派だけ意思で貫き通されたわけじゃないはずよ」

 あの女みたいな人間がさまざまな目的で出資したはずだ。出資者の要望に応えて大掛かりなものになったのではなかったのか。

「でも、おかしいだろ。リュウが生きているのに、死んでない。空賊は大半が捕まって拷問されていたけど、内情を知らなきゃリュウがいるレゾルール学校に囲われているって思われたはず。裏で、レゾルールに空賊がいると情報を流していたらしいから。再び再起する前に潰しておきたいと考えるはずでは?」
「……それだけでは弱い気がするけれど」

 けれど、たしかにリュウは過激派にとって目の上のたんこぶなはず。彼が生きていると知ればなんらかの反応を示すはずではないのか。

「じゃあ、仮にカンドが裏切り者ではなかったとして、どうしてカンドがいなくなったの?」
「あの場で、きちんと自我を持っていたのがカンドだけだったからだと思う。俺達は魔薬を嗅がされていた。痛覚が鋭敏になるやつだよ。痛みをそれで増幅させる、拷問には持ってこいだ。副作用に幻覚を伴うもので、カンドはたまに麻薬と一緒に服用してた。耐性があったんじゃないかな」
「じゃあ話を聞くために誰かが助けたってこと? ……助けだしたのは、過激派じゃない可能性が高いわね」

 牢に入れられたカンド達を見れば、あれが囲われていたわけではなく、拷問を受けたあとだと分かるはずだ。裏切り者を含めて拷問で死亡した方が都合いいはず。それをしなかったということは、第三者の介入があったということでは?

「リスト様も同じ考え。だから、カンドを探すって話も出てきたんだよ。第三者に助けられたカンドは、要件が終われば解放されるはず。その第三者の目的次第だけど」
「カンドを探して、捕まえるつもり?」
「うん。そして、協力して貰う。カンドをおとりにして、本物の裏切り者を見つけ出す。あるいは、過激派を逮捕するとっかかりにする」

 本物の裏切り者を装って、過激派に接触させるつもりか。カンドならば過激派の情報を握れる可能性がある。

「……でも、カンドにとっては危険でしょう。逃げ回る方が得策だわ。協力なんかしないはずよ」
「カンドを捕まえるのが一番大切なんだ。捕まえてしまえば、カンドは協力せざるを得ない」

 やけに自信たっぷりだ。
 私はどうしてもそうは思えなかった。

「俺達、最期は縛り首だ」

 ガツンと頭を石で殴られたような気分だった。
 そうだ。ハルもカンドも空賊だ。貴族達から金銀を盗み出し、貧民や平民に配り歩く義賊だった。だが、それは好意的な見方だ。
 彼らは結局、泥棒に過ぎない。

「でも、協力すれば死ぬまでの裁判中、花を育てられる。俺がこうしてふらつけるのもそういう契約があるからだし。ならば、やっておいて損はないでしょ。カンドも捕まれば、話にのるはずだ」
「縛り首……」

 空賊は甚大な被害をもたらした。そうでなくとも、空賊のやった窃盗で、貴族達は憤慨している。裁判にかけられたら死刑だと大合唱が聞こえてくるだろう。下る判決は決まっている。

「さっきのカルディアの質問の答えになった? 俺は罪人だ。殺されるまで、猶予を貰ったに過ぎない」
「逃げようと思わないの」
「無理だよ。叔母さん達がいる。これ以上迷惑はかけられない。それにカンドは何が何でも捕まえないと。今のあいつ、魔薬の禁断症状で何をするか分からない。人を襲うかも知れないのに放っておけないだろ」
「私なら、お前を逃がせる」

 ハルの首を掴む手にハルの大きな手が触れる。いつ見ても、働き者の手だ。私とは全く違う。使い込まれた、がっちりとした男の太さ。
 首から手が離されていく。しっかりと捉えたハルの顔は泣きそうだった。

「そんなこと、してくれなくていい」

 ハルは大きく首を振った。
 してくれなくていいという相手に、それでもしたいと言うのは間違っているだろうか。

「でも、そうだな。そんなに凄いことが出来るなら俺が死んだ後、母さんと弟と一緒の場所に埋めて欲しい。王都から凄く遠いんだ。俺はもうあそこに帰れないから」

 ハルと対等の存在になりたかった。今更、そんなことを思っていた自分を思い出す。住んでいる世界が違う。生きている階級が違う。そんなことを抜きにして話したかった。
 死ぬのを怖がっているのに我慢して、落ち込む私の心配をする善良さが好きだ。ハルは私にないものを持っている。優しさも、温かさも、どんな立場になっても変わらない。
 だからこそ、歯痒かった。どうしてハルのために何かをさせてくれないんだ。

「見落としてしまうぐらい小さな墓標だけど見つけるのは簡単だと思う。周りに白くて小さな花が沢山植えられているんだ。俺が、植えた」
「……私が首を貰うのだから、そんなことを簡単に言わないで」
「あんたに俺の首、あげる。俺の罰を執行するのは、あんたがいい」
「私がどういう意味で、首が貰うと言ったのか、分かっているんでしょう? 私は、お前を」

 死なせたくないと思っている。
 裁かせたくない。ずっと生きていて欲しい。
 どれも薄っぺらい願いだ。だが、本心だった。
 ハルに死んで欲しくない。

「ありがとう」

 全てを封じるありがとうだった。私の感情も、ハルの感情も、根こそぎ箱の中に押し込めるような、優しい口調だった。
 救いなんて欲しくないのだと、ハルは言いたいのだ。私に救って欲しくはないと。

「そうだ。結婚するってリスト様から聞いた。おめでとう」
「……そう、ね。ありがとう」

 急に胸に黒々とした感情が湧き上がった。ハルを言葉で傷つけたかった。善良な人間であって欲しくない。ハルは、安らかな顔をして私を見つめるべきじゃない。そんな表情で見つめられていい存在じゃない。
 言葉がナイフならば、私はそのナイフを高々と掲げ、ハルの心臓に突き刺した。

「結婚する相手はギスランというの。来年の春は越えられないかもしれない男よ。あいつは、私をあの世に連れて行きたいみたい。私も、同じ気持ちよ。あいつと一緒に死んでやりたい」

 ハルの瞳が驚愕に見開かれる。じっとりと暑さのせいで汗が流れ落ちる。
 ハルの額からも、玉のような汗が落ちた。
 こいつも私と同じ人間だと妙に安心した。
 同じ人間なら、傷付いたとき、痛みが走るはずだ。

「首を貰うと言ったのは本気ではないの。お前が望むような終わりはこない。私の方が先に死ぬんだもの」

 体が突然押し倒され、部屋の天井を見上げる。視界の端で、ハルが荒い息を吐いていた。
 疼く胸を抑え込むように拳をあてると、鋭い眼差しで私を見つめた。
 ハルの殺気で私もつられるように息が荒くなる。指先一つ動かせなかった。

「っ……どうして、あてつけみたいな真似するんだよ。俺が、どんな気持ちで、あんたにおめでとうって言ったか分かんないの」
「分かるわけないじゃない。ハルは何も言わないのに」

 腹部の横に置かれた腕が擦れる。大きな屋根のようにハルの体は大きかった。

「……本当は、あんたがカルディアだって薄々気がついてた。イルの反応が変だったから。あいつが誰かに構うなんて、珍しかったし。それに流石に俺だってギスラン・ロイスターの名前は知ってる」

 ハルの指が短くなった私の髪をすく。傷付けようとする強い眼差しなのに、駄目になりそうなほど優しかった。

「上位階級の貴族と話せる人間は数えるぐらいしかいない。……全部、分かってた。けど、俺は見ないふりをしたんだ。知らないふりをして、あんたと一緒にいることを選んだ」

 ハルのひとつひとつの行動が矛盾した輪郭を描く。死んでくれと言いながら、私に壊れないでと乞うているようだった。私は、馬鹿みたいに口を開けて、ハルを見つめることしかできない。

「リスト様があんたの名前を呼んだ時、呼ぶなって突差に思った。あの人のことも前から知ってた。王族の名前ぐらい、知ってるんだよ、誰だって。あの人が呼んで、カルディアはもう貴族の仮面を被れなくなった。姫って、あんたの後ろにつけたくなかった。あんたはカルディアで、俺はハルでよかったのに。それだけで、よかったのに」

 苦悶の声を上げながら、ハルは引き攣るように笑った。

「首を貰うって言った時のあんたの顔を鏡で見せてあげたかった。蒼ざめて倒れそうだんだ。偉そうなことを言ってたのに、ガタガタ体が震えて、やせ我慢がばればれで。ああ、間違えたんだと思った。俺達は仲良くしちゃいけなかったんだ。そんな関係だったのを忘れていたんだ。俺はあんたと一緒にいちゃいけない存在だったんだよ」

 ハルと言いながら首を振る。
 それは違う。違っていて欲しい。祈りのような気持ちで、ずっと拒絶し続ける。

「ーーでも、本当に、話をしているだけで幸せだったんだ。だから庇った。俺が死んでもいいと思った。あんたに死んで欲しくなかった。生きていて欲しかった。だから、簡単に死ぬなんて言うな」

 額に顔を擦り付けられる。
 私とハルの間に横たわる階級という人間の規則を無視した、獣らしい仕草だった。

「あんたは、よぼよぼのおばあちゃんになって皆に看取られて死ぬんだ」

 ハルの後ろに撫でつけられた髪が、私の顔に落ちてくる。
 顔の痣は青々としていて、何度見ても痛ましい。愛撫したいと思った。ハルが痛いと言っても、触れたいと。だが、それは私が抱いていい望みではない。
 花と泥が混じった臭いはしない。汗の臭いだけをハルは纏っていた。
 花園で水遣りをしていたハルはもうどこにもいない。
 貴族としてふるまっていた私もどこにもいない。
 それでも、私とハルはここにいる。
 目の前のハルは相変わらず、私を殺してしまいたいと言わんばかりに殺気立っていた。けれど、言葉は生きろと発破をかけてくる。
 矛盾にくすりと笑えてくる。ハルと同じ気持ちを私も持っている気がした。

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