文明トカゲ

ペン牛

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九 望遠の楯

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「――梓」
 僕が口を開くと、梓は肩を震わせた。
「――梓は、僕のことが、好きなの?」
 僕はじっと、梓が口を開いてくれるのを待った。
「……隠していたかった」
 梓の声は、僕が今まで聞いてきた声の中で一番小さく、掠れていた。
「それじゃあ、やっぱり」
 梓は、小さく、本当に小さく、首を縦に振った。
「私が隠してさえいれば、ずっと、梓とはこのままの関係でいられるって、そう思ってた」
 俯き続ける梓は、今にも小さくなって消えてしまいそうだった。僕の部屋の中には真奈さんが鼻を啜る音だけが響いている。
 僕は沈黙が支配する自分の部屋で考えを巡らせた。しかし、何一ついい考えは浮かんでこなかった。まるで宇宙空間に放り出された宇宙飛行士のようだな、と思った。手がかりも足がかりもなく、ただ呼吸をすることすら命を追い詰めていく。
 ――僕はどうしようもなく、お腹が空いていることに気がついた。
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