文明トカゲ

ペン牛

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十 文明と影

19

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「……法山は、一体何がしたかったんでしょうか」
「アンタ、まだそんなこと考えてたわけ? 考えたって無駄よ、無駄」
 それでも、いや、法山が姿を消した今だからこそ、知りたくなった。あの強大で凶悪なトカゲが、人に一体何を求めていたのかを。
「僕は、法山の目的がただ人を苦しめて楽しむことだったとは、思えないんです。もっと、どうしようもない理由があったんじゃないかって……認めたくはないですけど」
 ――そう。自己の心と魂の大半を奪われた僕や、女として生まれながらその事実を否定しなければ生きられなかった佐治さんのように、法山にもまた埋めることが叶わない欠落が存在したのではないか。
「もしその理由があったとして、アンタは許せるの?」
 佐治さんの切り返しに少し考えてから、
「――許せません。でも、自分が踏み躙られた理由すらわからずに受け入れるよりは、まだましなんじゃないかって」
「……まだまし、ね」
 佐治さんはそれ以上何も言わなかった。僕も言うべき言葉を見つけられなかった。歩くにつれて遠くに見えていた山々が近づき、山の表面を覆う緑色の色彩でしかなかった木々の輪郭がはっきりとしてくる。
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