文明トカゲ

ペン牛

文字の大きさ
29 / 266
三 雷鳴の猫

しおりを挟む
 言葉が聞こえる、のではなく頭の中に響く、という異様な感覚。だが、僕はどうしてかその感覚に覚えがあるような気がした。
(これは――まさか、トカゲ? よりにもよって、こんな時に!!)
 まずは姿を確認しなければならない。あるいは目に見えないとしても、なんらかの異常を見つけられれば――
『これ、人間よ。トカゲとはにゃんだ、トカゲとは。せっかく余がこうやって人間が大好きだという猫の姿を取っておるというのに』
(……は? 猫?)
 一体どういうことだ。というか、今僕の頭の中で、トカゲとの会話が成立していなかったか?
『ほれほれ、人間。今お前の足元にいるにゃ。さっさとこっちを見るがいいにゃ』
 恐る恐る、僕は足元を見た。そこには確かに一匹の猫がいた。長い茶色の毛の猫で、どことなく立派というか、ただの猫ではないような風格がある。その猫はエジプト座りと呼ばれる座り方で座り、僕の方をまっすぐに見つめていた。
 僕はその猫を見つめ返しつつ、心の中で思った。
(……本当に、お前が頭の中で聞こえる声の主なのか)
『そうとも。余はお前達人間より余程位の高い存在であるからして、きちんと敬ってもらわなければ困るにゃ。というかそもそも余が聞いた限りではお前たちはただの猫にすら傅き、やりたい放題させているという話ではにゃいか。それにしても文献に書いてあった猫の姿を取った際に人間に好かれる話し方というのは実に煩わしいにゃ。本当にこれで合っているのかにゃ?』
「い――」
 思わず声に出して反論しそうになってしまい、慌てて口を噤む。すぐ側には梓がいるのだ。と、梓の方を見ると、
「――可愛い」
 梓は目をキラキラさせ、なんの躊躇もなく――恐らく猫の姿をしたトカゲ――を抱き上げていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は手加減無しに復讐する

田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。 理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。 婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。

〜仕事も恋愛もハードモード!?〜 ON/OFF♡オフィスワーカー

i.q
恋愛
切り替えギャップ鬼上司に翻弄されちゃうオフィスラブ☆ 最悪な失恋をした主人公とONとOFFの切り替えが激しい鬼上司のオフィスラブストーリー♡ バリバリのキャリアウーマン街道一直線の爽やか属性女子【川瀬 陸】。そんな陸は突然彼氏から呼び出される。出向いた先には……彼氏と見知らぬ女が!? 酷い失恋をした陸。しかし、同じ職場の鬼課長の【榊】は失恋なんてお構いなし。傷が乾かぬうちに仕事はスーパーハードモード。その上、この鬼課長は————。 数年前に執筆して他サイトに投稿してあったお話(別タイトル。本文軽い修正あり)

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

異世界からの召喚者《完結》

アーエル
恋愛
中央神殿の敷地にある聖なる森に一筋の光が差し込んだ。 それは【異世界の扉】と呼ばれるもので、この世界の神に選ばれた使者が降臨されるという。 今回、招かれたのは若い女性だった。 ☆他社でも公開

隠世の門

海谷ノ
ファンタジー
その門は、一度開けば戻れない。 16歳の陰陽師・晴飛は、封じられた術と家系の秘密に触れた夜、 世界の裏側──「隠世(かくりよ)」と繋がってしまう。 静かに歪み始めたふたつの世界。 少年の傍らには、影をまとった式神・斗泉。 彼らを巡る宿命は、まだ誰も知らない。 現代×和風ファンタジー。 隠れた因果と、少年たちの“境界の物語”。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

母娘の影 (母娘丼) 二重の螺旋

MisakiNonagase
恋愛
「愛した女は、恋人の母親だった」 大学4年生の山本哲兵(22歳)。 どこか冷めた日常を送っていた彼が出会ったのは、太陽のように眩しい同級生・天草汐里。 そして、バイト先で出会った、慎ましくも色香を纏う49歳の主婦・天草美樹。 光のような純愛を注いでくれる娘、汐里。 闇の中で少女のように甘え、背徳の悦びに溺れる母、美樹。 「天草」という同じ名字を持つ二人の女。別々の場所で始まった二つの恋は、哲兵の家賃5万のワンルームで、そして娘の「お下がり」のブーツを通じて、音もなく混ざり合っていく。 それが最悪の結末へのカウントダウンだとも知らずに。 ついに訪れた「聖域」への招待状。汐里に連れられ、初めて訪れた彼女の自宅。そこでエプロン姿で出迎えたのは、昨夜まで哲兵の腕の中でその名を呼ばれていた、あの美樹だった。 逃げ場のないリビングで、母と娘、そして一人の男を巡る、美しくも残酷な地獄が幕を上げる。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

処理中です...