新章たるウメチカ！

第五章 そして、青春へ。

第二十五回 そして春一番！ ここぞとばかりに、おねだり勝負！

　――と、テンション上がるサブタイトルをバックに、

　それも十三年間、知らずにいた実のお父さんを目の当たりにして、しかも、しかも娘としての初の……初めての、おねだり。でもでもそれは、姉の梨花りかに促されたことだ。


　なら、……それなら遠慮はいらないね。

　ここはノリで、こういうときだけ都合よく、梨花をお姉ちゃんと敬いながら、

　言うよ、本当に言っちゃうよ。……って念のため、前回に引き続き舞台背景は、四棟の三〇三号室内の洗面所。目の当たりには新一しんいちさん、僕の傍らに梨花がいて……


　――もう勿体ぶらなくていいから、さっさと言っちゃいなよ。

　と、声にせずともアイコンタクト、梨花が催促する。こういう時だけ都合よく、梨花はお姉ちゃんという権限をフル活用し、思いっ切りなパワハラぶりを見せる。

　……人は、権力の魔性によって、儚く変化するものなのね。と、そう思わせるような一コマを垣間見る。とある特撮な戦闘員の「イーッ！」にも似たような思いにもなり、僕は僕はね……精一杯の可愛さを意識しながら、意識しながら……


「僕ね、パパと一緒にＥスパ・・行きたいの。ねっ、梨花お姉ちゃんも、三人で……
　ねっ、いいでしょ！」――と、やっと言えたよ。

　あっ、お父さんが……パパになってしまった。でもでもでも大成功、きっと。これなら梨花も嘸かし満足……って、えっ？　なぜ紅潮……？

　もっとわかりやすく、何故に赤面？　如何にも火を噴きそうな程に。


「成程、親子のスキンシップだな。いいかもな、梨花も交えて家族風呂……温泉なら大丈夫かな、感染の心配はないようだ」……あれ？　何で？　パパの……いやいやお父さんの……新一さんの反応、何か変だよ。ねえ、梨花……と、僕は助けを求めるのだ。