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第十二章 あの頃の初恋は今、本当の音色を奏でる。
第六十五回 まあ、ここでは何ですから。
しおりを挟む「行きましょ、僕のお家へ」
……で、追記するなら「そこでゆっくりお話しましょ」
とてもお上品な口調。それでも一人称は『僕』のまま。
霧島太郎君とは同い年だけど、お客様としてお招きするのだから……そこは女性としての嗜みなの。女性――そう。女の僕から見ても、その時の梨花は、
普段とは違って嫉妬するほどの大人の色気……本当に綺麗だった。……あれ? 僕のお家って? ――「ちょっとちょっと、梨花」「なあに?」「僕のお家って、太郎君を梨花のお家に連れて行くの?」「へ? そんなの決まってるじゃない、千佳のお家だよ」
あ、あの……
いつの間にか僕のお家は、梨花のお家になってしまっていた。そしてもう、身も心も完全に、僕のお姉ちゃん。太郎君にさえも、威厳を撒き散らしているように見える。
間違いではなくてね、理にも適っているのだけど、
何というのかな? ……梨花は意外とSかも。将来旦那さんになる人大変だね。
なんて思っていたら、ある疑問符。
辿り着いてしまった、僕が言う前に……ここは、ちょうどドラッグストアの裏。
「千佳、ここって表札『梅田』だけど、お前って確か『星野』だったよな?」
「太郎君、それはね……」
「……そうだったのか、お前ついに養子に出されたんだな。うんうん、でもそれで
お前が幸せなら、それでいい、お前の名字が変わっても、お前はお前だから。……何があっても俺、今度こそお前を守ってやるから、家だって離れてないし、すぐにでも駆けつけてだな……」と云々で、僕は僕で「あの、太郎君?」と、声をかけても聞いてくれなくて、太郎君の妄想は広がるばかりで、梨花は梨花で何も言えないまま唖然……って、
――ちょっとちょっと、さっきの威厳はどうしちゃったの? と、思うばかりだ。
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