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執事ルークス×悪役令息
乗合馬車に揺れながら
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「まず着いたら家だよなぁ…」
ガタンゴトン、と揺れる馬車の中でジェノヴィがボソリと呟いた。
追放宣言がされた卒業パーティ後の翌日。
国境付近の宿場町に一泊して、辺境の村『トゥルク』を通る乗合馬車に乗りながら思考にふけっていた。
家、とにかく住む場所が無ければ話にならない。
スローライフに欠かせないのは『衣食住』。兎にも角にもまずは家を確保することが必須。
よく異世界転生系の小説とか漫画じゃ冒険者になってモンスター退治をしながら可愛い女の子と一緒に田舎暮らしだの道中スローライフと銘打っているのがある訳だが……
(俺としてはその日暮らしの冒険者にはなりたくないし、何よりモンスター退治とかまっぴら御免だ。
ていうかモンスター退治してる時点でスローライフ出来てる感じがしてないんだが!
…一応計画としては辺境の村についたら、空き家があると思うからそこを買い取って…村には確かギルドは無かったからすぐ隣の町の一般ギルドに行って仕事探して金貯めて…スローライフって大変だなあほんと。)
って感じでウンウン唸っているわけだ。
「ジェノヴィ様、お身体は大丈夫ですか?」
ジェノヴィの専属執事(といっても公爵位を剥奪された以上、正式な専属ではないのだが)のルークスがジェノヴィに声をかける。
ルークスの亜麻色の髪と瞳は、乗合馬車の窓の隙間から漏れる朝焼けの光に反射してキラリと輝いていた。
ジェノヴィは「ん?あ、平気平気」とへら、と軽い微笑みを見せる。
ー付いてくる義理なんてないのに、ほんと出来た執事だよルークス…
というのも、ジェノヴィの公爵位が剥奪されてなお傍に付いてきているルークスは、ジェノヴィの実家であるディエゴロード公爵家を辞して来ていたのだ。
貴族に仕える使用人からすれば、公爵家に仕える事は一生食いっぱぐれない理想の安定職と言える。
そこらの男爵家とか子爵家とかに仕えるよりも断然給料がいい上、人も多いから休日も取りやすい。
それに、ジェノヴィが公爵位を剥奪されて専属から外れるとなれば、ジェノヴィの傍に常日頃付いていくということがなくなるので、自由度が高くなる。
…って感じで、いい事づくめの公爵家をわざわざ辞め、こうしてジェノヴィについてくるのは相当の忠誠心があるからこそだ。
(乗合馬車の時刻表とか、宿場町の場所とかも調べてくれたしほんと大感謝ですルークス…いやルークス様…)
ジェノヴィは心の中で、目一杯ルークスを拝んでおいた。
………
「ようやく見えてきましたよジェノヴィ様。あれが辺境の村『トゥルク』です。」
ルークスが指さす先に、『トゥルク』と書かれた古めの木の看板。昼光に照らされた黄緑のふんわりとした雑草がちらほらと揺れ、サラサラと音が鳴っているかのようだった。
ガタンゴトン、と揺れる馬車の中でジェノヴィがボソリと呟いた。
追放宣言がされた卒業パーティ後の翌日。
国境付近の宿場町に一泊して、辺境の村『トゥルク』を通る乗合馬車に乗りながら思考にふけっていた。
家、とにかく住む場所が無ければ話にならない。
スローライフに欠かせないのは『衣食住』。兎にも角にもまずは家を確保することが必須。
よく異世界転生系の小説とか漫画じゃ冒険者になってモンスター退治をしながら可愛い女の子と一緒に田舎暮らしだの道中スローライフと銘打っているのがある訳だが……
(俺としてはその日暮らしの冒険者にはなりたくないし、何よりモンスター退治とかまっぴら御免だ。
ていうかモンスター退治してる時点でスローライフ出来てる感じがしてないんだが!
…一応計画としては辺境の村についたら、空き家があると思うからそこを買い取って…村には確かギルドは無かったからすぐ隣の町の一般ギルドに行って仕事探して金貯めて…スローライフって大変だなあほんと。)
って感じでウンウン唸っているわけだ。
「ジェノヴィ様、お身体は大丈夫ですか?」
ジェノヴィの専属執事(といっても公爵位を剥奪された以上、正式な専属ではないのだが)のルークスがジェノヴィに声をかける。
ルークスの亜麻色の髪と瞳は、乗合馬車の窓の隙間から漏れる朝焼けの光に反射してキラリと輝いていた。
ジェノヴィは「ん?あ、平気平気」とへら、と軽い微笑みを見せる。
ー付いてくる義理なんてないのに、ほんと出来た執事だよルークス…
というのも、ジェノヴィの公爵位が剥奪されてなお傍に付いてきているルークスは、ジェノヴィの実家であるディエゴロード公爵家を辞して来ていたのだ。
貴族に仕える使用人からすれば、公爵家に仕える事は一生食いっぱぐれない理想の安定職と言える。
そこらの男爵家とか子爵家とかに仕えるよりも断然給料がいい上、人も多いから休日も取りやすい。
それに、ジェノヴィが公爵位を剥奪されて専属から外れるとなれば、ジェノヴィの傍に常日頃付いていくということがなくなるので、自由度が高くなる。
…って感じで、いい事づくめの公爵家をわざわざ辞め、こうしてジェノヴィについてくるのは相当の忠誠心があるからこそだ。
(乗合馬車の時刻表とか、宿場町の場所とかも調べてくれたしほんと大感謝ですルークス…いやルークス様…)
ジェノヴィは心の中で、目一杯ルークスを拝んでおいた。
………
「ようやく見えてきましたよジェノヴィ様。あれが辺境の村『トゥルク』です。」
ルークスが指さす先に、『トゥルク』と書かれた古めの木の看板。昼光に照らされた黄緑のふんわりとした雑草がちらほらと揺れ、サラサラと音が鳴っているかのようだった。
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