48 / 120
冒険者登録編
3-8 オークション
しおりを挟む
ガイアス隊長の指輪買取から今日で5日目、今日の昼にこの町のオークション会場で俺の物となる宝石と奴隷のオークションがあるから見に行かないかとガイアス隊長からお誘いのメールがあった。
もし会場で売りに出された奴らと目が合ったら、捕らえた俺たちを恨みがましい目で見てくるだろうからと断ったのだが、フェイが何故か見たいと主張するので仕方なくガイアス隊長と会場に来ている。
オークションに懸ける商品に関しては、オークショナーが先にいろんな場所や貴族などにメールで告知してあるのだそうだ。それを見て商人や貴族たちは予想金額をたて、お目当ての品を狙って会場に来るのだと説明してくれた。クレジットなどの無いこの世界では、全て現金でのやり取りになる。大きな額が動くので開催日には衛兵も10名ほど会場の警護に駆り出されるそうだ。
つまりこの会場は国公認の正規のオークション会場という事になる。
奴隷制度の無い日本で育った俺にはどうにも気分が良くない。
先ほど一般奴隷の入札があったのだが13~18歳ぐらいの若い女の子が売られていくのは見ていて可哀想になってしまう。また、意図してそういう売り方をしている……こんな風に。
会場は天井の低い小さな体育館をイメージしてもらえればいい。体育館は球技用にやたらと天井が高く造られているがここは5m程の高さしかない。体育館のように壇上が在り、そこに司会進行をする男が1名、商品を説明する女性が1名いる。この商品を説明する女性が同情を煽るのだ。
「次は一般奴隷No3のジェシカちゃん、13歳の可愛い女の子です。彼女の任期は約5年です。暗算で2ケタの足し算引き算ができます。読み書きもできるので商店の売り子にどうでしょう? 性格は元気で活発、笑顔は見ているだけで癒されますね。彼女の父親が病気になってしまい、その薬代の為に末っ子だったジェシカちゃんが今回奉公に出されたそうです。ジェシカちゃんの雇用条件は次のようになっています。性的な奉仕は一切不可、10時間を超える労働不可、重労働不可となっています。ではジェシカちゃん、一言アピールをどうぞ」
「名前はジェシカです。13歳になったばかりです。お父さんのお薬代を稼ぐためにお仕事を探しています。優しい御主人様が居たらジェシカを雇ってください。一生懸命働きますのでよろしくお願いします」
「はい! どうでしょう? 大変見事な挨拶でしたね。13歳にしては上出来ではないでしょうか? 頭も良く、覚えも早いとの事です。こんな可愛らしい子がお店に居ると、お店の雰囲気も良くなること間違いなしです。お父様の薬代の為とはいえ、まだ幼い少女、この健気な女の子に少しでも良い値を付けてあげてください。ではオークショニアお願いします」
こんな感じでどんどん買い手がついていくのだ。可哀想でしょ……。
でも、ガイアス隊長の話を聞く限りでは一般奴隷の買い取りはハローワーク的な感じがした。
金銭に余裕がないので、先に奴隷商から前借をする形で派遣契約をしているようにも見える。
ジェシカちゃんの場合はこんなだ、最初に借りられるのがこの国の最低賃金1000×365(日)×5(年)=1825000になる。一般人の平均日当が5000ジェニーなのを考えれば、足元を見られた金額だが、奴隷落ちするほど切羽詰まっているのだから足元を見られても仕方ないのだとガイアス隊長は言う。
この1825000ジェニーが、ジェシカちゃんを売った親元に先に貸し出される。
ジェシカちゃんの落札価格なのだが、5400000ジェニーになった。
この金額には本人も驚いて涙を流して主人になる人にお礼を言っていた。
この5400000からオークショナーに1割手数料として抜かれる。そしてその額の2割が奴隷商に入るので4860000の2割972000ジェニーが奴隷商に入る。残った3888000ジェニーから先に支払われている1825000ジェニーを引かれた差額、2063000ジェニーがジェシカちゃんの手元に入る。この差額は両親に送ってもいいし、自分で管理しても自由だそうだ。
仕方がないとはいえ、もう自分を売った両親の下に帰る気はないようで、任期が開けたらそれを元手に町で暮らすそうだ。実家に帰ってもまた売られる可能性が高いのを本人も自覚しているのだろう。5年の長い任期が明けたらジェシカちゃんは18歳。下手をしたら今度は娼館に売りに出される可能性もある。全ての親が我が子を大事にすると限らないのはどの世界も同じようだ。
ジェシカちゃんの場合器量が良かったため、一般の平均日当と大差ないくらいの値がついたので任期明けに結構な額が残るが、人によっては最初に借りた値にも達せず、労働期間の延長になる者も居るのだそうだ。そうなると奴隷商もオークショナー側も殆んど実入りが無くなる……世知辛いことだ。
肝心の犯罪奴隷なのだが―――
門番:犯罪奴隷落ち(刑期10年) 領主が一人200万で買い取り計600万
受付嬢:犯罪奴隷落ち(刑期3年) 娼館が950万で買い取り
冒険者:犯罪奴隷落ち(刑期5年) 3人で120万
誘拐窃盗団CDEF:犯罪奴隷落ち(終身刑) 4人で160万
宝石も合計で612万で売却
オークキングの魔石 132万
オーククイーンの魔石 65万
オークジェネラルの魔石 5個で138万
受付嬢が異様に高く売れたのだが、直接売られる現場を見るとやはりちょっと可哀想な気もした。親族がお金を出し合って500万ほど用意をしていたようだが狙ってた冒険者と娼館には敵わなかったようだ。3者が競った結果このような値段になったのだ。刑期3年の犯罪奴隷としては破格の値段だそうだ。
そもそもギルドの職員でなければ犯罪奴隷にまで落とされてはいないとのこと、責任ある職種に対しての罰の方がより重度な刑期が与えられるようになっているようで門番も袖の下を受け取っていただけでも10年の刑期が与えられるほどだ。
それにしてもこの金額……2777万ジェニー。オークショナーに手数料1割引いても約2422万ジェニーになる。
「フェイどうしよう? 俺、お金持ちになっちゃった……」
「兄様、美味しい物一杯食べられますね」
「冒険者になってあっという間にこれほど稼げる者も珍しい。リョウマ君は今この町で最も注目を集める人物になってしまったな。その分気を付けるんだぞ。妬みややっかみだけでも相当なものになる」
「十分気を付けるようにします。ガイアス隊長はどうして俺をオークションの入札に誘ったのですか?」
「少なからず君も関わったた事だし、気にしていたようだからな。ここ3日は特に依頼も受けず町で買い食いしたりして兄妹で楽しそうに過ごしてると聞いたものでな。暇なら捕らえた者たちの行方を知っとくのも若い君たちには社会勉強になると思ったのだ」
「なんか行動を監視されてるようで嫌ですね」
「監視はしてないのだが、何せ君たち兄妹は目立つ。魔族やダークエルフのような銀髪にその美貌だ。宿屋から外に出ただけで直ぐに情報が入ってくる。大抵が広場で兄妹でにこにこ何か食べていたという情報だがな」
「半額でいいからとか、味見にタダでいいから1つ食べてくれないかと、最近よく声を掛けられるのですよ」
「あははそうだろ、店主たちが言うには、リョウマ君たちが立ち寄って買っていく店は3割増しで客が増えるそうだ。だからまずは食べてもらわないと話にならないっていう事で、半額やら味見でって事なんだろ」
「そんな都市伝説みたいな事……止めてほしいです」
「それがあながち事実らしいのだよ。見た目が悪い店では買わない、美味しくないとニコリともしない上に2度と買わない。何度か買ってる店では美味しそうに食べていると噂がたち、皆も興味を持って買って行くそうだ。オークの串焼き屋のおやじは5割増しだと特に喜んでいたな」
「フェイが旨そうに食べていますからね……良い客寄せになってるのかもしれないです」
「話は変わるが、売られた娘たちのうち、新たに3人保護できた。だが、5人既に亡くなっているのも確認できた……3名が病死で、2名は貴族による虐待死だそうだ。買った者たちも当然裁かれるのだが、大した罪にはならないのが現状だ。まだ10名ほど手掛かりすらないのだが、今後も続行で捜索する予定になっている。しかし国外だと厳しいだろうな」
「そうでしょうね。裏取引の娘なんか表だって連れて歩かないでしょうから、尚更見つかりにくいでしょう」
ガイアス隊長とこそこそ話していると、目を腫らした40前後の女性がこちらにやってきた。
「隊長さん! うちの娘は犯罪歴も付いてないのになんで娼館なんかに売られなきゃならないのですか!」
えらい剣幕で喚きたててきた、どうやら受付嬢の母親のようだ……こう言うのがあるからホントは来たくなかったのだ。
「あなたもあなたの娘も大した罪の意識はないようですね……ギルドには情報を外部に漏らさないという鉄則があるのですよ。なぜなら個人のレベルや適性属性のスキル漏洩は、冒険者にとって命に係わる事なのです。あなたの娘はその情報を目先の小銭で安易に漏らしたのですよ。そのせいで何人もの娘がレイプされ今現在もどこかの娼館や金持ちの変態どもに凌辱されているのです。一緒に居たパーティー内の男の子たちは全員殺されています。その子たちにあなたが今言った事をもう一度言えますか? ギルドの受付とはギルドの顔であり、信頼の要る大事な部署なのです。その為、他より高い給金が支払われているのに、それに満足せず変な欲をだし、小銭につられて仲間である冒険者を売ったのです。むしろ3年で済むと知った犠牲者の家族が仕返しに攫わないだろうか心配しているくらいです」
ガイアス隊長は俺に話す時より丁重な話し方なのだが、声は怒気が孕んだような冷たさを感じた。
受付嬢や門番もこの町の内部の人間だ。町から仲間を売るような者が出たことが隊長なりにはがゆいのだろう。
母親の方もガイアス隊長に諭されて、しょんぼり帰っていった。
「ガイアス隊長、今日はありがとうございました。おかげさまで良い勉強になりました」
「あまり気分の良くないものだったろうが、君たちなら遅からずまた盗賊や犯罪組織に関わってくるだろうと思ってな。一連の流れも知っておくといい、何かの役に立つだろう」
隊長はオークションを終えた後の会場整理を見ていくと言うので、現地でそのまま別れることにした。
オークション会場は町の外れの方にあり、中心部の方に向かって歩いていたのだがフェイの様子が少しおかしい。
「どうしたフェイ? ずっと無言で何か気になる事でもあったか?」
「人が人に優越を付けて売り買いするとは……人はなんて傲慢なのでしょうね」
「そうだな、お前のいう通りだと思う。人間ぐらいじゃないかな。フェイは何で今日ここを見に来たいと言ったんだ? 嫌な気分になるのは予想できただろ?」
「門番と受付嬢の心理がどう変わるのか知りたかったのです。兄様が捕らえた時はまったく反省していませんでした。むしろ『大した罪にはならないだろう』とか、兄様を睨んで『お前のせいでばれたのか』という感情が大きかったようです。あれから何日か経ちました。奴隷落ちという重い刑罰を受け、彼らがどういう心理に変わっているのか凄く気になったのです」
「そうか、フェイは一応竜神なので心が読めるんだったな」
「兄様酷いです! 一応とかどうして言うんですか!」
「そんなにムキに怒るなよ、冗談だって。それであいつらはどう変わっていたんだ?」
「何も変わっていませんでした……特に受付嬢の彼女は射殺すかのような、恨みのこもった視線で兄様を見ていました」
「でも項垂れて泣いてたよ? 門番も受付嬢も後悔しているように見えたけどな」
「後悔はしていましたが反省はしていません。項垂れていたのは、今から我が身に訪れる事を想像して恐怖し、自分を憐れんでいただけです」
「恐怖を抱くのも仕方ないよ。門番は最前線で肉壁として使われたりするそうだぞ。受付嬢は早ければ今晩から客を取らされるかもしれないからな。冒険者が娼館主に10万ジェニーで最初の権利を買いたいとか交渉してたしな……1日何人相手しないといけないんだろな。最初はざまーみろとか思ってたけど、なんか可哀想になってきた」
「反省もできないような人を憐れんでどうするのですか? 今も不条理に客をとらされ苦しんでいる人がいるのに……」
「そうだな……ユグちゃんを頼れば探し出せるんだが、そうなったら神が介入した事になる。こういう事はこの世界全体で見れば日常的に起こってる事だ。弱肉強食のこの世界で隙を見せて敵に食いものにされたんだ。全く責任がない訳でもないから余計に俺たちは介入できないよな。今回だけ特別にとか言い出したらマジで身動きできなくなってしまう。手助けをするかしないかの判断基準が今後いるかもしれない」
「兄様は本当はどうされたいのですか?」
「助けてやりたい気はあるが、一度手を出すと今後収拾がつかなくなりそうだ。本当は神が関わっちゃいけない事なんだと思うが、身の回りで俺に関わった人ぐらいは手助けしたいと思っている。今回きっかけは与えたのだから後は人が頑張って解決するべきかな」
「兄様は難しく考えすぎだと思います。創主様なのですから好きにやっちゃえばいいのですよ? 全部ユグちゃんとナビーに任せて、可哀想な娘たちは助けてあげるのです。そして悪い奴らは全員首チョンパにするのです! ね? 簡単でしょ?」
まぁ、なんて素敵な笑顔なんでしょう! でもそれやっちゃったら法も秩序も全部俺の気分次第って事じゃん。流石にそれはいけないよ。俺、アホだから悪い方に歯止めが利かなくなってしまう。
「守りたい人だけは守るようにするよ。全部は無理だし、介入し過ぎるのもよくない」
「フェイは兄様が無茶しないように監視するから、兄様は好きなようにすればいいからね」
「ああ、俺が悪い方に行くようならフェイが止めてくれ」
「了解です兄様! ところで今日はこの後どうするのです?」
「そうだな、大金が入ったからといって、町で何もしないでボーッとしてるのもなんだしな。ギルドに寄って何か依頼がないか見てみるか?」
「はい兄様! 折角冒険者に成ったのですから、何か依頼を受けましょう!」
ちょっと人の売買で鬱な気分になったが、フェイの笑顔で大分楽になることができたのだった。
*******************************************************
お読みくださりありがとうございます。
少し不快要素を含んだ回でしたがこれで3章終了です。
もし会場で売りに出された奴らと目が合ったら、捕らえた俺たちを恨みがましい目で見てくるだろうからと断ったのだが、フェイが何故か見たいと主張するので仕方なくガイアス隊長と会場に来ている。
オークションに懸ける商品に関しては、オークショナーが先にいろんな場所や貴族などにメールで告知してあるのだそうだ。それを見て商人や貴族たちは予想金額をたて、お目当ての品を狙って会場に来るのだと説明してくれた。クレジットなどの無いこの世界では、全て現金でのやり取りになる。大きな額が動くので開催日には衛兵も10名ほど会場の警護に駆り出されるそうだ。
つまりこの会場は国公認の正規のオークション会場という事になる。
奴隷制度の無い日本で育った俺にはどうにも気分が良くない。
先ほど一般奴隷の入札があったのだが13~18歳ぐらいの若い女の子が売られていくのは見ていて可哀想になってしまう。また、意図してそういう売り方をしている……こんな風に。
会場は天井の低い小さな体育館をイメージしてもらえればいい。体育館は球技用にやたらと天井が高く造られているがここは5m程の高さしかない。体育館のように壇上が在り、そこに司会進行をする男が1名、商品を説明する女性が1名いる。この商品を説明する女性が同情を煽るのだ。
「次は一般奴隷No3のジェシカちゃん、13歳の可愛い女の子です。彼女の任期は約5年です。暗算で2ケタの足し算引き算ができます。読み書きもできるので商店の売り子にどうでしょう? 性格は元気で活発、笑顔は見ているだけで癒されますね。彼女の父親が病気になってしまい、その薬代の為に末っ子だったジェシカちゃんが今回奉公に出されたそうです。ジェシカちゃんの雇用条件は次のようになっています。性的な奉仕は一切不可、10時間を超える労働不可、重労働不可となっています。ではジェシカちゃん、一言アピールをどうぞ」
「名前はジェシカです。13歳になったばかりです。お父さんのお薬代を稼ぐためにお仕事を探しています。優しい御主人様が居たらジェシカを雇ってください。一生懸命働きますのでよろしくお願いします」
「はい! どうでしょう? 大変見事な挨拶でしたね。13歳にしては上出来ではないでしょうか? 頭も良く、覚えも早いとの事です。こんな可愛らしい子がお店に居ると、お店の雰囲気も良くなること間違いなしです。お父様の薬代の為とはいえ、まだ幼い少女、この健気な女の子に少しでも良い値を付けてあげてください。ではオークショニアお願いします」
こんな感じでどんどん買い手がついていくのだ。可哀想でしょ……。
でも、ガイアス隊長の話を聞く限りでは一般奴隷の買い取りはハローワーク的な感じがした。
金銭に余裕がないので、先に奴隷商から前借をする形で派遣契約をしているようにも見える。
ジェシカちゃんの場合はこんなだ、最初に借りられるのがこの国の最低賃金1000×365(日)×5(年)=1825000になる。一般人の平均日当が5000ジェニーなのを考えれば、足元を見られた金額だが、奴隷落ちするほど切羽詰まっているのだから足元を見られても仕方ないのだとガイアス隊長は言う。
この1825000ジェニーが、ジェシカちゃんを売った親元に先に貸し出される。
ジェシカちゃんの落札価格なのだが、5400000ジェニーになった。
この金額には本人も驚いて涙を流して主人になる人にお礼を言っていた。
この5400000からオークショナーに1割手数料として抜かれる。そしてその額の2割が奴隷商に入るので4860000の2割972000ジェニーが奴隷商に入る。残った3888000ジェニーから先に支払われている1825000ジェニーを引かれた差額、2063000ジェニーがジェシカちゃんの手元に入る。この差額は両親に送ってもいいし、自分で管理しても自由だそうだ。
仕方がないとはいえ、もう自分を売った両親の下に帰る気はないようで、任期が開けたらそれを元手に町で暮らすそうだ。実家に帰ってもまた売られる可能性が高いのを本人も自覚しているのだろう。5年の長い任期が明けたらジェシカちゃんは18歳。下手をしたら今度は娼館に売りに出される可能性もある。全ての親が我が子を大事にすると限らないのはどの世界も同じようだ。
ジェシカちゃんの場合器量が良かったため、一般の平均日当と大差ないくらいの値がついたので任期明けに結構な額が残るが、人によっては最初に借りた値にも達せず、労働期間の延長になる者も居るのだそうだ。そうなると奴隷商もオークショナー側も殆んど実入りが無くなる……世知辛いことだ。
肝心の犯罪奴隷なのだが―――
門番:犯罪奴隷落ち(刑期10年) 領主が一人200万で買い取り計600万
受付嬢:犯罪奴隷落ち(刑期3年) 娼館が950万で買い取り
冒険者:犯罪奴隷落ち(刑期5年) 3人で120万
誘拐窃盗団CDEF:犯罪奴隷落ち(終身刑) 4人で160万
宝石も合計で612万で売却
オークキングの魔石 132万
オーククイーンの魔石 65万
オークジェネラルの魔石 5個で138万
受付嬢が異様に高く売れたのだが、直接売られる現場を見るとやはりちょっと可哀想な気もした。親族がお金を出し合って500万ほど用意をしていたようだが狙ってた冒険者と娼館には敵わなかったようだ。3者が競った結果このような値段になったのだ。刑期3年の犯罪奴隷としては破格の値段だそうだ。
そもそもギルドの職員でなければ犯罪奴隷にまで落とされてはいないとのこと、責任ある職種に対しての罰の方がより重度な刑期が与えられるようになっているようで門番も袖の下を受け取っていただけでも10年の刑期が与えられるほどだ。
それにしてもこの金額……2777万ジェニー。オークショナーに手数料1割引いても約2422万ジェニーになる。
「フェイどうしよう? 俺、お金持ちになっちゃった……」
「兄様、美味しい物一杯食べられますね」
「冒険者になってあっという間にこれほど稼げる者も珍しい。リョウマ君は今この町で最も注目を集める人物になってしまったな。その分気を付けるんだぞ。妬みややっかみだけでも相当なものになる」
「十分気を付けるようにします。ガイアス隊長はどうして俺をオークションの入札に誘ったのですか?」
「少なからず君も関わったた事だし、気にしていたようだからな。ここ3日は特に依頼も受けず町で買い食いしたりして兄妹で楽しそうに過ごしてると聞いたものでな。暇なら捕らえた者たちの行方を知っとくのも若い君たちには社会勉強になると思ったのだ」
「なんか行動を監視されてるようで嫌ですね」
「監視はしてないのだが、何せ君たち兄妹は目立つ。魔族やダークエルフのような銀髪にその美貌だ。宿屋から外に出ただけで直ぐに情報が入ってくる。大抵が広場で兄妹でにこにこ何か食べていたという情報だがな」
「半額でいいからとか、味見にタダでいいから1つ食べてくれないかと、最近よく声を掛けられるのですよ」
「あははそうだろ、店主たちが言うには、リョウマ君たちが立ち寄って買っていく店は3割増しで客が増えるそうだ。だからまずは食べてもらわないと話にならないっていう事で、半額やら味見でって事なんだろ」
「そんな都市伝説みたいな事……止めてほしいです」
「それがあながち事実らしいのだよ。見た目が悪い店では買わない、美味しくないとニコリともしない上に2度と買わない。何度か買ってる店では美味しそうに食べていると噂がたち、皆も興味を持って買って行くそうだ。オークの串焼き屋のおやじは5割増しだと特に喜んでいたな」
「フェイが旨そうに食べていますからね……良い客寄せになってるのかもしれないです」
「話は変わるが、売られた娘たちのうち、新たに3人保護できた。だが、5人既に亡くなっているのも確認できた……3名が病死で、2名は貴族による虐待死だそうだ。買った者たちも当然裁かれるのだが、大した罪にはならないのが現状だ。まだ10名ほど手掛かりすらないのだが、今後も続行で捜索する予定になっている。しかし国外だと厳しいだろうな」
「そうでしょうね。裏取引の娘なんか表だって連れて歩かないでしょうから、尚更見つかりにくいでしょう」
ガイアス隊長とこそこそ話していると、目を腫らした40前後の女性がこちらにやってきた。
「隊長さん! うちの娘は犯罪歴も付いてないのになんで娼館なんかに売られなきゃならないのですか!」
えらい剣幕で喚きたててきた、どうやら受付嬢の母親のようだ……こう言うのがあるからホントは来たくなかったのだ。
「あなたもあなたの娘も大した罪の意識はないようですね……ギルドには情報を外部に漏らさないという鉄則があるのですよ。なぜなら個人のレベルや適性属性のスキル漏洩は、冒険者にとって命に係わる事なのです。あなたの娘はその情報を目先の小銭で安易に漏らしたのですよ。そのせいで何人もの娘がレイプされ今現在もどこかの娼館や金持ちの変態どもに凌辱されているのです。一緒に居たパーティー内の男の子たちは全員殺されています。その子たちにあなたが今言った事をもう一度言えますか? ギルドの受付とはギルドの顔であり、信頼の要る大事な部署なのです。その為、他より高い給金が支払われているのに、それに満足せず変な欲をだし、小銭につられて仲間である冒険者を売ったのです。むしろ3年で済むと知った犠牲者の家族が仕返しに攫わないだろうか心配しているくらいです」
ガイアス隊長は俺に話す時より丁重な話し方なのだが、声は怒気が孕んだような冷たさを感じた。
受付嬢や門番もこの町の内部の人間だ。町から仲間を売るような者が出たことが隊長なりにはがゆいのだろう。
母親の方もガイアス隊長に諭されて、しょんぼり帰っていった。
「ガイアス隊長、今日はありがとうございました。おかげさまで良い勉強になりました」
「あまり気分の良くないものだったろうが、君たちなら遅からずまた盗賊や犯罪組織に関わってくるだろうと思ってな。一連の流れも知っておくといい、何かの役に立つだろう」
隊長はオークションを終えた後の会場整理を見ていくと言うので、現地でそのまま別れることにした。
オークション会場は町の外れの方にあり、中心部の方に向かって歩いていたのだがフェイの様子が少しおかしい。
「どうしたフェイ? ずっと無言で何か気になる事でもあったか?」
「人が人に優越を付けて売り買いするとは……人はなんて傲慢なのでしょうね」
「そうだな、お前のいう通りだと思う。人間ぐらいじゃないかな。フェイは何で今日ここを見に来たいと言ったんだ? 嫌な気分になるのは予想できただろ?」
「門番と受付嬢の心理がどう変わるのか知りたかったのです。兄様が捕らえた時はまったく反省していませんでした。むしろ『大した罪にはならないだろう』とか、兄様を睨んで『お前のせいでばれたのか』という感情が大きかったようです。あれから何日か経ちました。奴隷落ちという重い刑罰を受け、彼らがどういう心理に変わっているのか凄く気になったのです」
「そうか、フェイは一応竜神なので心が読めるんだったな」
「兄様酷いです! 一応とかどうして言うんですか!」
「そんなにムキに怒るなよ、冗談だって。それであいつらはどう変わっていたんだ?」
「何も変わっていませんでした……特に受付嬢の彼女は射殺すかのような、恨みのこもった視線で兄様を見ていました」
「でも項垂れて泣いてたよ? 門番も受付嬢も後悔しているように見えたけどな」
「後悔はしていましたが反省はしていません。項垂れていたのは、今から我が身に訪れる事を想像して恐怖し、自分を憐れんでいただけです」
「恐怖を抱くのも仕方ないよ。門番は最前線で肉壁として使われたりするそうだぞ。受付嬢は早ければ今晩から客を取らされるかもしれないからな。冒険者が娼館主に10万ジェニーで最初の権利を買いたいとか交渉してたしな……1日何人相手しないといけないんだろな。最初はざまーみろとか思ってたけど、なんか可哀想になってきた」
「反省もできないような人を憐れんでどうするのですか? 今も不条理に客をとらされ苦しんでいる人がいるのに……」
「そうだな……ユグちゃんを頼れば探し出せるんだが、そうなったら神が介入した事になる。こういう事はこの世界全体で見れば日常的に起こってる事だ。弱肉強食のこの世界で隙を見せて敵に食いものにされたんだ。全く責任がない訳でもないから余計に俺たちは介入できないよな。今回だけ特別にとか言い出したらマジで身動きできなくなってしまう。手助けをするかしないかの判断基準が今後いるかもしれない」
「兄様は本当はどうされたいのですか?」
「助けてやりたい気はあるが、一度手を出すと今後収拾がつかなくなりそうだ。本当は神が関わっちゃいけない事なんだと思うが、身の回りで俺に関わった人ぐらいは手助けしたいと思っている。今回きっかけは与えたのだから後は人が頑張って解決するべきかな」
「兄様は難しく考えすぎだと思います。創主様なのですから好きにやっちゃえばいいのですよ? 全部ユグちゃんとナビーに任せて、可哀想な娘たちは助けてあげるのです。そして悪い奴らは全員首チョンパにするのです! ね? 簡単でしょ?」
まぁ、なんて素敵な笑顔なんでしょう! でもそれやっちゃったら法も秩序も全部俺の気分次第って事じゃん。流石にそれはいけないよ。俺、アホだから悪い方に歯止めが利かなくなってしまう。
「守りたい人だけは守るようにするよ。全部は無理だし、介入し過ぎるのもよくない」
「フェイは兄様が無茶しないように監視するから、兄様は好きなようにすればいいからね」
「ああ、俺が悪い方に行くようならフェイが止めてくれ」
「了解です兄様! ところで今日はこの後どうするのです?」
「そうだな、大金が入ったからといって、町で何もしないでボーッとしてるのもなんだしな。ギルドに寄って何か依頼がないか見てみるか?」
「はい兄様! 折角冒険者に成ったのですから、何か依頼を受けましょう!」
ちょっと人の売買で鬱な気分になったが、フェイの笑顔で大分楽になることができたのだった。
*******************************************************
お読みくださりありがとうございます。
少し不快要素を含んだ回でしたがこれで3章終了です。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる