魔族の王子様は旅をする

十四日

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Ⅰ章

実は、僕は…。

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【美しい君に一目で恋をした。愛してる。】

ストーカーのラブレターと勇者のラブレターが一文一句同じなのは、偶然なのか。

同じ言葉しか書かれてないところまで似ている。

まさか、ストーカーと勇者は同一人物?

「セス様?いかがなさいましたか?」

「セス、気分が悪いか?」

何の反応がない僕にセルウィーとパパが顔を覗き込んでくる。

「ちょっと気になったんだ。何で何十枚も同じ言葉しか書かないのかなって思って」

正直な感想を述べた。

「人間の…勇者の考えなど分かりませんが。色々な言葉をいくつ並べて伝えるよりも同じ言葉を伝えれば、嫌でもその言葉を耳にすれば、相手の記憶に残せるのではないでしょうか」

セルウィーは言いたくないのか、顰め面で話す。

「セスの記憶に残そうとするとは、やはり不快だ」

パパも眉や額の辺りにシワを寄せ、とても不愉快そうな顔をする。

整っている分、怖い。

「大丈夫!僕、忘れる。それに、200年経ってるからもう勇者はいないし。血縁や住んでいた国はパパが消したから、大丈夫だよね!」

「ああ、そうだ。可愛いセスが安心して暮らせるぞ」

不愉快そうな顔をしていたパパが、僕の言葉で喜色満面していた。

「分かりませんよ。人間は虫の様に、幾らでも湧いて出ますから」

セルウィーがくいと眼鏡のブリッジを押し上げながら、冷静な口調で言う。

「セルウィー、セスが不安になる事を言うな。沸いたらまた、消せばいい」

「パパ…簡単に封印される僕って、弱いんだね」

不安な気持ちになった。

「セスは弱くない!勇者が卑怯な手段を使ったからだ。勇者の奴が正々堂々勝負すれば、セスは楽に倒せる」

パパは僕の気持ちをすぐに察し、安心させようとする。

が気になる言葉が聞こえた。

正々堂々勝負すれば、勇者が負けるの!?僕じゃなくて‼︎

「ゆ、勇者はそんな弱くないと思うけど…」

「セス様が勝ちますよ、邪神ですから」

セルウィーが断言する。

「え、邪神?」

【人間にとって災いをなす神(ウィ○ペディアより)】

僕が邪神‼︎

僕が実は、魔王の息子でも邪神に転生していた事にびっくりした。

「魔王様より強いお方、セス様に敵う者は居りません」

セルウィーは誇らしげに言う。

「ですから、セス様に敵わないから勇者はセス様を倒すのでなく封印したのでしょうけど」

勇者に対して、「勇者しか封印が出来ないのも本当、忌々しい」と容赦無く吐き捨てる。
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