ささげ名を

兎守 優

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死合わせな邂逅

ここにあるよ

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 シノの離れていく腕を捕まえようとしたら、前に頭から転がってしまった。
「なんの用だ、?」
「失礼しやす。え? あ、お邪魔かぁ」
「おい、笹垣。俺がこの子に手を出すわけがないだろう。人並みの節操ぐらい、持ち合わせている」
「そうでした。ガキですもんね~」
「ガキ! なんかわるいの!」
「まー、悪いとかでなくて、"大人"にならないと愛してもらえないってこと」
 「笹垣。なにを言い出すんだ」とシノが立ち上がった。ひんやりした水のにおいがした。
「俺は咲麻が子どもだからといって、愛していないとは言ってないが?」
「いや~、自分で危険を回避できないぐらい‪柔 やわくて緩い人間って見てて、ムカムカするんですよねえ」
「…………お前の役目はなんだ」
 ササガキとシノはにらめっこを始めた。僕はシノを応援した。
「いいか。役目を果たすことだけ考えろ。余計なことはするな」
 負けたのはシノだった。
「お前は頭を冷やせ。今日は俺のところで寝させる」
 ちがう、シノは勝った。ササガキが部屋から出ていったから。僕はうれしかった。シノといっぱいすきをしていられるから。
 シノもよろこんでいる。そう思ったけど、そうじゃないみたいだった。
「愛がどこにあるのか、分からないんだ」
 なにを教えてくれるんだろう。シノの話をもっと聞きたくて耳を向けた。
「愛が有るのか無いのか。そう言うならきっとどこかに存在しているはずなんだ」
「愛ってどんなもの?」
 今日は難しい話なのかな。わからないがいっぱいになる前に聞きたくなって、シノが話す間に割り込んでしまった。でも、シノは『おとなしくしていろ』とか『静かにしていろ』とかは言わなかった。「ここが」と胸に握りこぶしを当ててシノは言う。
「苦しくなったり、締めつけられたり、変……いや、きゅっとなったりするものだ」
 初めてだ、僕が答えられるお話は。うれしくて、うれしくて、言葉が口からぽーんと出ていった。
「じゃあ、愛はここにあるよ、シノさま」
 シノはわからない顔をした。どういう意味だって顔が言ってる。だから、頭のてっぺんにシノの手を乗せる。それから胸の真ん中を押さえた。
「シノさまの手、ここがきゅっとなるから」
 急に冷たい目になった。顔が白く見える。振り払われるかもしれないと思ったけど、シノはただ、ため息と一緒に、小さく言葉を吐いただけだった。
「……そうか」
 またわからなくなった。でも、わからないって言えなかった。シノを困らせたくなかったから。
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