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死合わせな邂逅
愛の存在証明
しおりを挟む僕が大きなあくびをしたら、「もう寝ようか」とシノは言った。寝る準備の仕方は覚えた。ほめてもらいたくて、お布団を出して敷いたがキレイに敷けなくて、斜めになってよれてしまう。シノはちゃんとしてないお布団のことは気にしないで横になった。僕も同じくごろんと転がる。
「もう少しこちらにおいで」
二人で転がるにはお布団は小さすぎた。シノの言うように、くっつくと不思議だ、ぴったり僕とシノがはみ出ないで収まった。
「おやすみ。サクマ」
「おやすみ、シノさま」
今日は一緒に隣で寝られてうれしいはずなのに、僕は頭がぐるぐるして、胸がそわそわして落ち着かなかった。どうしてシノはあんな顔をするの。眠れないから眠れるまで考えた。
僕の胸がきゅっとなった、シノの顔を思い浮かべる。あった。初めて見た優しい顔。どうしたら、そうなってくれるんだったっけ。あの言葉の響きを必死に探して、口にしてみる。
「アイシテル……?」
水の音とにおいがいっぱいする場所でその顔を見た。そうだ。僕が好きなシノが一番よろこんでくれること。
眠りに落ちるか落ちないか、揺れている最中、ささやきが聞こえた気がしていた。愛がどうのという、聞きたくない響きだったから、夢だと思い込んだのだが。
「見張りはどうしていた」
隣で眠っていたはずの咲麻が居なかった。レインコートも傘も、使われておらず、そのままだ。外はもうもうと視界が白む土砂降りで、家中にまとわりつく湿気が立ち込め、体が重い。胸がひどく痛み、目の前が真っ暗になった。
ここに、愛が在ったのだと突きつけられる。忘れようとしていた気持ち、ふたをしていた想いが決壊して激流になってあふれ、押し寄せてくる。
愛なんて、愛なんて。注ぐものではなかった。何度失っても、癒えることはない。慣れることのない、喪失に打ちひしがれる胸の痛み。これがこの苦しみこそが、道野樹志音への罰なのだ。
道野樹の屋敷は慌ただしく、空気はピリリと張り詰めていた。誰も主に声をかけることすらできないほど、事態は深刻だった。
「検討はついてやす」
屋敷の者で、志音に唯一、対等に物を言えるのは笹垣だけだ。
「さっさと言え」
「お社に行ったにちがいないですよ」
「そうでなかったらどうする!」
響き渡る怒号に、屋敷の者たちの肩が跳ねる。皆、志音に気圧され、命令に従う以外、まともに口を聞くことができなかった。しかし、先代の目付役が老衰で息を引き取ったあとに程なくしてやって来た、彼はちがった。最初から主に対してそういう態度だったのだ。
「坊ちゃん。よく考えてください。昨晩の失態は俺のせいじゃないでしょう?」
今晩は俺のところで預かる。そう笹垣に言ったのは志音だ。
「逃げられたくなかったら常時、枷でもはめて繋いどけばいいんですよ」
主に従順でありながら、噛みつく使用人など彼以外にはいない。志音は静かに怒りを瞳に湛えて、笹垣に告げた。
「キササゲの森以外を屋敷の者総出で探させろ」
「わかりやした」
踵を返した笹垣の袖口から、飾りが落ちた。彼はそのまま気づかずに志音の部屋を出ていってしまう。透明な雫と花がついた銀色の耳飾りを志音は手に取り、無言で握りしめた。
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