喰らう虎

イセヤ レキ

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華美な服飾を好み、豪華な食事を求め。
興味のない夜会にも出る様にして、時を待つ。

私は様々な種を仕掛けた。
一つだけでいい、どれかの種が見事に咲き誇ってくれるならば。

私しか知らない白虎の情報を、わざと一つずつ白虎(かれ)の前で長兄に明かしていく。


白虎の唾液には、他人をも治癒する力が宿る事。
いつか兄が白虎を不要だと思い処分しようとした時に、他の使い道を思いつく様に。


白虎の妖力は、術式によって大分減らされている事。
解呪すれば、回復力も勿論、この比でないであろう事。
いつか兄が致命傷を負った時、白虎を解呪してその回復力に期待する様に。


白虎の命がもう長くないらしい事。
白虎への執着心を捨てさせ、他の獣を隷属させる事が利益だと感じる様に。


私が長兄に暴露すればする程、白虎はその表情を無くした。
そして、月日は流れ‥‥彼が私に対して発する言葉は、『喰ってやる』のみとなった。



そんな私と白虎の様子を間近に見た長兄が、私を信用し出したと感じたのは、3年程過ぎた頃。
長かったのか、短かったのは、わからない。



美雨メイユイ、白虎を使って皇子を討とうと思う」
兄は、この3年の間に、次男にこの自治区の統治を任せて自分は中央へ勤めに出ていた。

「お兄様。それより先に、宰相では?」
皇子は宰相の傀儡だ。



皇子は最近、宰相に意見を述べる様になってきた。
その為、邪魔に感じた宰相が、クーデターを起こす。
おそらくは成功するだろう。
宰相につき恩を売って、幾分か中央での権力を整えたら、次は宰相自身を葬る。



長兄はそう言って、冷たい微笑を浮かべた。


私は少し考えて、「そうですか」とだけ言った。
情勢は目まぐるしく変わっている。
国も、自治区も、隣国も、‥‥そして、私と白虎を取り巻くものも。

最終目的は白虎の解放。
それはどんな情勢に傾こうが、確実に為されなくてはならない。
それこそが、私の存在意義。





☆☆☆





結論から言うと、長兄は宰相にしてやられた。
白虎は、皇子を葬り去ったが、その姿を見られてしまったのだ。
白虎が李家に隷属するものであるのは、周知の事実。

長兄は宰相に罪を1人で負わされ、国軍が李家の治める自治区に攻め入る事となった。



白虎の牢の前で、私は長兄と言い争いをする。
長兄は、李家の危機に顔を真っ青にさせている。
そんな場合ではないのに、この人も人間らしい表情が出来るんだなと、眺めている自分がいた。


「お兄様、白虎を解呪すべきです。白虎が隷属しているからこそ、李家の罪となるのです」
「いや、もはや、白虎の首を渡すしかあるまい‥‥!!」
「白虎を渡してどうなさいます。白虎の首を渡すから、私を許してくれと命乞いでもなさいますか?皇子を葬り、それで許されるとでも?」
「しかし、過去に白虎を隷属していたというだけで、どんな扱いを受けるものか‥‥」
「なれば、白虎が真実、李家の敵である事を知らしめれば良いのです」
「‥‥何だと?」
「白虎は恐らく、解呪すればまず一番に周りの人間を襲います。それだけの事をしましたから。私が解呪すれば、私を襲うでしょう。ですから、お兄様は逃げて下さい。私が死んだら、その骸は中央にお届け下さい。真実、白虎が李家の敵であると、しらしめて下さい」
「ふぅむ‥‥」
いつも冷静沈着な長兄が、揺れている。
国軍は、すぐそこまで迫っていた。
チャンスは今しかない。
「試せば、お兄様は死を免れ、また李家にチャンスが訪れるかもしれません。しかし、試さねば‥‥ここで、李家は潰されるだけです」
長兄は、焦っていた。
たからこそ、判断ミスをしたのだ。



「そうか。‥‥では、お前に任せよう。しかし、一つだけ‥‥」


ザシュン

そんな音が聞こえ、私の脇腹が急に痛み出した。


「お前に逃げられては、叶わん。虎の好む血を流したまま、解呪するが良い」

長兄はそう言い、私を残して一度牢の前から立ち去り、今度はその手に術式の事が書かれた本を片手に戻って来た。

美雨メイユイ、早くしろ!!国軍がすぐそこまで来ている!!」

私に本を投げ付け、自分は馬に跨がり、何処かへと駆けていった。




私は、感動に打ち震えながら、その本を拾い上げる。
拾う際に脇腹に痛みが走ったので、逆に安心した。
大丈夫、痛みを感じているうちは、まだ死なない。


目的のページを探しながら、白虎に話しかけた。

「白虎、今扉を開けるけど、もう少し食べずに待っててね。私が解呪するまで、待っててね」

美雨メイユイ‥‥』
懐かしい声が、脳裏に聞こえて泣きたくなった。
久しぶりに牢の外で白虎と対面する。

愛しい白虎の美しい毛並みは、見るも無残に薄汚れ、非衛生的だった。
それでも、その背中を安心させる様に、そっと撫で続ける。


「やっと‥‥貴方を、自由にしてあげられるわ‥‥」



私は見つけた解呪のページを何回か繰り返し読み、拍子抜けした。

あんなに、あんなに、苦労して見つけた解呪の方法‥‥それは、「李家の血を引いた者が、水晶を額から取り除く」だけだった。




いつでも、私なら白虎を自由に出来たのに‥‥!!!



真実を知ってあまりの衝撃に心が軋んだが、よく考えればいざ解呪する、という時にあれこれ必要、というよりはよっぽどマシだったとも考えられる。

何せ、今は時間がない。




私は急いで、白虎の額に指を伸ばした──






☆☆☆






それから、一ヶ月が過ぎた。
李家は滅ぼされ、60年程続いた自治区は再度国に取り込まれた。
国軍は中央に徐々に引き返し始め、自治区の民はさほど混乱に陥る事なく、李家の消滅を受け入れている。


そして、李家の娘ひとりが消えた事実は、周知の事実であっても取り立てて騒がれる事なく、歴史からも消える事となる‥‥





李家の、山と言える程の広大な領土。
その山中奥深く、人間の足では到底辿り着く事の出来ないひとつの洞窟がある。

その洞窟には沢山の敷布が並べられ、一組の男女が裸で睦み合っていた。


「んっ‥‥!!」
美雨メイユイ、傷痕だけは残ってしまったな‥‥綺麗な肌だったのに、残念だ」
「はぁ、ん、そこばかり、舐めない‥‥で」
美雨メイユイは脇腹が感じるのか?‥‥あぁ、物足りなくなっただけか。気付かないで済まなかった」
「白虎ぉ‥‥焦らさ、ない、で‥‥」
「あぁ、可愛い美雨メイユイ、大丈夫だよ、今日も沢山‥‥喰らってあげるからね」


白髪の紅い眼をした端正な男がそう言いながら、女の濡れそぼった蜜壺に己の楔を後ろから打ち込んだ。

「あぁ‥‥!!」
真っ白な胸がふるんふるんと震え、女は悦に浸る。

「何度味わっても、美雨メイユイココは美味すぎるな。また早々に導かイかされそうだ」

パン パン パン パン パン パンッ
男はリズミカルに、女の最奥と浅めの好いところを突いていく。

「白、虎、それ、だめぇ‥‥!!」
「何故?」
「すぐ、いっちゃ‥‥!!」
「‥‥あの男・・・の時は一度もイってないのだから、これ位平気だろう?」
そして首筋に軽く噛みつく。

男の嫉妬はそのまま楔を更なる強固なモノへと変化させ、それは女の更なる快楽を生み出す。

「だって、まさか、白虎が‥‥!!」


‥‥人型を取れるなんて、聞いてないし!!!!!




美雨メイユイは、心の中で叫んだ。





☆☆☆





出血過多により気を失った美雨メイユイが目を覚ますと、そこは見知らぬ洞窟の中だった。
傍には、何故か大量の自分の服が置かれている。

‥‥???

ボーッとする頭を振り、記憶を呼び覚ます。


私、何でこんなところにいるんだろう‥‥?
確か、脇腹刺されて、白虎解放して、私の人生終わりましたって感じた気がするのに。

「白虎は無事だったのかな‥‥」

思わず呟くと。

美雨メイユイ。気付いたのか」
男の声が耳に入った。

思わず驚いてその場から飛び退くと、脇腹が悲鳴をあげる。

「っ‥‥!!」
「大丈夫か?急に動くからだ」

男は屈み込む美雨メイユイに近付き、傷口を確認した。

「‥‥」
美雨メイユイは、目の前の、まだ自分と同じ歳の頃の白髪の男を見て、すぐに気付く。



「‥‥貴方、白虎‥‥?」



紅い眼を向け美雨メイユイと視線をあわせた男は、満足げに微笑んで肯いた。

「白虎、何で‥‥!?」
美雨メイユイは、聞かずにいられなかった。

いくら白虎を助ける為とはいえ、酷い仕打ちをした私を助けたの、とか。
何故前から言っていた通りに、私を食べなかったの、とか。
そんな事ではなく・・


「貴方、おじーちゃんだって言っていたのに‥‥!!」

‥‥それ位、若い姿の白虎が衝撃的だった。





☆☆☆





300年も生きた白虎は、美雨メイユイの考えていた事なんて、お見通しだった。
まさか自分を捕らえた李家の人間を気に入るとは思ってもいなかったが、白虎にとって美雨メイユイは、目にした時から可愛い大切な存在だった。
美雨メイユイが初めて男に処女を捧げた日、白虎は自分の胸に巣くうのが嫉妬であると、すぐに気付いた。
気付けば必死で男の精液を掻き出していた。
そして、自分の舌に感じる美雨メイユイを見て、下半身に熱が生じていた。

美雨メイユイが自分の為だけを考え、行動しているとわかっていたから、そんな彼女に日々愛おしさは増すばかりだった。
美雨メイユイと男との行為を目にする度、その男に自分を重ねた。
李家の命で一番嬉しかったのは、その男を殺して良いと言われた時だった。

美雨メイユイを目にすると、自然とペニスが勃起する様になって焦る。
李家の人間を傷つけられない、という縛り・・に初めて感謝した。
美雨メイユイと部屋が別れたのは辛かったが、いつか彼女に襲い掛かりそうで、心底自分に恐怖した。
白虎は、妖力で人型も取ることが出来る。
解呪されたら、その時は美雨メイユイがどんなに嫌がろうとも、喰らって喰らって喰らい尽くすだろう。

自分の理性が、美雨メイユイに忠告をする。
‥‥だが、そんな白虎の気も知らずに、美雨メイユイは最終的に解呪した。





☆☆☆





毎日毎日、白虎は甲斐甲斐しく美雨メイユイの世話をした。
脇腹を念入りに舐め、3度の食事を運び、トイレの為に洞窟の外に連れ出した。
暇さえあれば、脇腹を舐めていたせいか。
美雨メイユイの脇腹は、1週間でほぼ完治したのだ。


「ん、もう全然痛くないよ、白虎は凄いね」
「そうか、それは良かった。私はもう、我慢の限界だったんだ」

にまさかそんな目で見られているとは露とも思わない美雨メイユイは首を傾げる。

「お前を‥‥喰いたい」
「私を?‥‥うん、白虎の為なら、いいよ」

美雨メイユイは、目をキュ、と瞑って応えた。
「出来たら‥‥あまり、痛みを感じない様にして欲しいの」
「わかった」
「あの、ひとおもいに‥‥お願いします」
「‥‥わかった」


くちゅ‥‥
いきなり胸の先端を舐められて、美雨メイユイは驚きと気持ち良さでビクリとした。

「ちょ、ちょっと白虎、そんなところ舐めなくても‥‥」
「夢だったんだ。お前の全てを、舐めて‥‥堪能したい」
「‥‥そっか。わかった」


ちゅ ちゅ ちゅぱ ちゅぱ
「~っ‥‥ぁ、は、ぁ‥‥」
ぺろ ぺろ ちゅ べろんっ
「ん、ぁ‥‥あ、ふ、ぅ」
「‥‥足を広げて」
「‥‥白虎、そこは、舐めなくても‥‥」
「何を今更。前は男と会う度舐めてやってただろう?」
「‥‥う、うん‥‥じゃあ‥‥」

べろんっ べろんっ くりくりっ
「あ、あぁんっ!!」
「ん、美味い。いつもココは、舐めても舐めても溢れてくる」
「~っ!もうっまだ食べないの!?」
「‥‥美雨メイユイが、そう言うなら‥‥後ろを向け。違う、四つん這いだ」
「え?え?」
「‥‥入れるぞ」
「え?‥‥っっあああんっ!!!!!」

凶悪なまでに膨張した肉棒を一気に突き立てられた。
はふ、はふ、と呼吸がままならなくなる。

涙目で、キッ!と後ろを振り返り
「白虎!いきなり何するの!!」
と怒れば、白虎は
「?ひとおもいにヤレ、と言ったのは美雨メイユイだろう?」
と答えた。
「な‥‥!!」
「あぁ、想像していた以上に善すぎる。‥‥動くぞ」

白虎はすぐに律動を開始し、美雨メイユイはすぐに快楽にのみ込まれて行った‥‥






☆☆☆





白虎に喰われる日々が永遠に続くと思い始めた、ある日。

二人に、転機が訪れた。


「‥‥子供の、鳴き声が聞こえるな」


白虎とともにそこへ向かえば、まだ生まれたばかりの赤ん坊が捨てられている。


「なんて事を‥‥!!」

美雨メイユイはしばらく泣いた後、白虎に言った。

「白虎、お願い。私、この子を育てたい‥‥」
美雨メイユイが、そう望むなら」

白虎は賛成してくれたが、山の中にはミルクもない。
仕方なく、白虎は狩人と称して山で捕らえた獲物を街まで売りに行き、それらで得た金品で子供に必要な物を揃え始めた。

初めての子育ては、二人にとって、喜びであり、幸せな試練であった。
そのうち、育てる子供も徐々に増えて行った。
街では育てられずに山へ捨てに行く貧しい人間は少なくなかったからだ。

子ども達を育てていくうちに、住処を洞窟から、街近くの山の麓に移動した。
更に子ども達が増えると、街から助成金を貰い、家は孤児院として扱われる様になった。



白虎はくとら様、美雨みう様、どちらにおいでですかー?」
小さな子供が、山に向かって叫んでいる。
「駄目だよ、この時間はまだまだ2人っきりでラブラブしてるから、戻ってこないって」
もう少し年長の子供がケラケラ笑う。
「そうですか‥‥あの、この前この辺りで虎を見た人がいるらしくて‥‥心配で」
「あ、それ全く心配ねーわ。つか、その虎見た人って誰?兄貴達に、伝えとかなきゃ」
「え?ええと‥‥確か、配達の‥‥」



二人の間に子供を授かる事はなかったが、沢山の子ども達に囲まれ、二人は幸せに暮らしたという。



それから何十年経った今でも、孤児院の中庭には二つの墓地が仲良く並び、そこは常に花で溢れている──
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