結婚相手を交換したいと言いますが、あの男はやめた方がいいですよ?

イセヤ レキ

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結婚相手を交換したいと言いますが、あの男はやめた方がいいですよ?

3 あの男だけはやめた方がいいですよ?

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「ミランダ、貴女の願いは極力叶えてあげたいけど、あの男……いえ、あの方だけは駄目よ」

「何故ですかっ!?妹の恋路を邪魔したいのですかっ!?」

妹が潤んだ瞳で私に縋り付く。



自分が結婚する相手も、妹の恋した相手も、悪く言いたくはない。

ミランダをあの男に会わせたらこうなるんじゃないかと思って、あの男の話題は極力避けてきたのに。

バレないように、ひた隠して来たのにっっ!!



「……ミランダ、こんなこと言いたくはないけれど……あの男の良いところは、顔だけよ?」

馬鹿正直に言ってしまった。

「そんなことありませんわ!」



そんなことあるんですよっっ!!



「いいですか、ミランダ。ここだけの話、あの伯爵令息の趣味はギャンブルにお酒に女遊びです。領地改革も下へ……あまり上手ではなく、無駄な投資をしてお金をドブに捨てるような方なのです。今は貴女に愛を囁いたとしても、明日はわからない、そんな男なのですから」



あんな男に妹を嫁がせたら、妹は毎日泣き暮らすに決まっている。

隠し子だって何人いるんだかわかったものではない。



「……でも、あの方は私との出会いを運命だと、君しか考えられないと仰って下さいましたわ」

「あのね、ミランダ。私はきちんと情報ギルドに調べさせて……」

「その情報が間違えている可能性も、ゼロではありませんわ」



妹にそう言われ、私はうぐ、と言葉に詰まる。

それは……そうだ。

イケメンと聞いていたクルトがチビハゲデブだったのだから。


しかし、仮にチビハゲデブだったとしても……あの伯爵令息よりはマシな筈だ。それは、私に懇願してきたご両親の様子を見れば間違いないだろう。



「ミランダ、貴女にはまた素敵なお相手を探し……」

「嫌ですわ!私はあの方と一緒になりますっ!!」



私はその後、何度も説得を試みたが妹の決意は固かった。

伯爵家からは、私への謝罪文と共に、息子がミランダ嬢を大層気に入り、ミランダと結婚出来ないならこの家から出ていくと脅された、リュシー殿の妹君ならきっと同じように美しく賢いであろうから、申し訳ないが息子と妹のミランダを結婚させてくれないか──そう記された手紙が同封されていた。



顔だけ男の伯爵令息とミランダの組み合わせなんて、泥舟の予感しかしない。



けれどもこちらは力のない貧乏男爵家で、あちらは破綻しそうだけれども長く続く名門の伯爵家だ。

こちらに拒否権なんてない。



私が頭を抱えている中、ミランダからとうとう部屋から一歩も出ない、ご飯も食べない、という強硬手段を取られた私は、断腸の思いで妹の希望に応えたのだった──。
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