3 / 19
結婚相手を交換したいと言いますが、あの男はやめた方がいいですよ?
3 あの男だけはやめた方がいいですよ?
しおりを挟む
「ミランダ、貴女の願いは極力叶えてあげたいけど、あの男……いえ、あの方だけは駄目よ」
「何故ですかっ!?妹の恋路を邪魔したいのですかっ!?」
妹が潤んだ瞳で私に縋り付く。
自分が結婚する相手も、妹の恋した相手も、悪く言いたくはない。
ミランダをあの男に会わせたらこうなるんじゃないかと思って、あの男の話題は極力避けてきたのに。
バレないように、ひた隠して来たのにっっ!!
「……ミランダ、こんなこと言いたくはないけれど……あの男の良いところは、顔だけよ?」
馬鹿正直に言ってしまった。
「そんなことありませんわ!」
そんなことあるんですよっっ!!
「いいですか、ミランダ。ここだけの話、あの伯爵令息の趣味はギャンブルにお酒に女遊びです。領地改革も下へ……あまり上手ではなく、無駄な投資をしてお金をドブに捨てるような方なのです。今は貴女に愛を囁いたとしても、明日はわからない、そんな男なのですから」
あんな男に妹を嫁がせたら、妹は毎日泣き暮らすに決まっている。
隠し子だって何人いるんだかわかったものではない。
「……でも、あの方は私との出会いを運命だと、君しか考えられないと仰って下さいましたわ」
「あのね、ミランダ。私はきちんと情報ギルドに調べさせて……」
「その情報が間違えている可能性も、ゼロではありませんわ」
妹にそう言われ、私はうぐ、と言葉に詰まる。
それは……そうだ。
イケメンと聞いていたクルトがチビハゲデブだったのだから。
しかし、仮にチビハゲデブだったとしても……あの伯爵令息よりはマシな筈だ。それは、私に懇願してきたご両親の様子を見れば間違いないだろう。
「ミランダ、貴女にはまた素敵なお相手を探し……」
「嫌ですわ!私はあの方と一緒になりますっ!!」
私はその後、何度も説得を試みたが妹の決意は固かった。
伯爵家からは、私への謝罪文と共に、息子がミランダ嬢を大層気に入り、ミランダと結婚出来ないならこの家から出ていくと脅された、リュシー殿の妹君ならきっと同じように美しく賢いであろうから、申し訳ないが息子と妹のミランダを結婚させてくれないか──そう記された手紙が同封されていた。
顔だけ男の伯爵令息とミランダの組み合わせなんて、泥舟の予感しかしない。
けれどもこちらは力のない貧乏男爵家で、あちらは破綻しそうだけれども長く続く名門の伯爵家だ。
こちらに拒否権なんてない。
私が頭を抱えている中、ミランダからとうとう部屋から一歩も出ない、ご飯も食べない、という強硬手段を取られた私は、断腸の思いで妹の希望に応えたのだった──。
「何故ですかっ!?妹の恋路を邪魔したいのですかっ!?」
妹が潤んだ瞳で私に縋り付く。
自分が結婚する相手も、妹の恋した相手も、悪く言いたくはない。
ミランダをあの男に会わせたらこうなるんじゃないかと思って、あの男の話題は極力避けてきたのに。
バレないように、ひた隠して来たのにっっ!!
「……ミランダ、こんなこと言いたくはないけれど……あの男の良いところは、顔だけよ?」
馬鹿正直に言ってしまった。
「そんなことありませんわ!」
そんなことあるんですよっっ!!
「いいですか、ミランダ。ここだけの話、あの伯爵令息の趣味はギャンブルにお酒に女遊びです。領地改革も下へ……あまり上手ではなく、無駄な投資をしてお金をドブに捨てるような方なのです。今は貴女に愛を囁いたとしても、明日はわからない、そんな男なのですから」
あんな男に妹を嫁がせたら、妹は毎日泣き暮らすに決まっている。
隠し子だって何人いるんだかわかったものではない。
「……でも、あの方は私との出会いを運命だと、君しか考えられないと仰って下さいましたわ」
「あのね、ミランダ。私はきちんと情報ギルドに調べさせて……」
「その情報が間違えている可能性も、ゼロではありませんわ」
妹にそう言われ、私はうぐ、と言葉に詰まる。
それは……そうだ。
イケメンと聞いていたクルトがチビハゲデブだったのだから。
しかし、仮にチビハゲデブだったとしても……あの伯爵令息よりはマシな筈だ。それは、私に懇願してきたご両親の様子を見れば間違いないだろう。
「ミランダ、貴女にはまた素敵なお相手を探し……」
「嫌ですわ!私はあの方と一緒になりますっ!!」
私はその後、何度も説得を試みたが妹の決意は固かった。
伯爵家からは、私への謝罪文と共に、息子がミランダ嬢を大層気に入り、ミランダと結婚出来ないならこの家から出ていくと脅された、リュシー殿の妹君ならきっと同じように美しく賢いであろうから、申し訳ないが息子と妹のミランダを結婚させてくれないか──そう記された手紙が同封されていた。
顔だけ男の伯爵令息とミランダの組み合わせなんて、泥舟の予感しかしない。
けれどもこちらは力のない貧乏男爵家で、あちらは破綻しそうだけれども長く続く名門の伯爵家だ。
こちらに拒否権なんてない。
私が頭を抱えている中、ミランダからとうとう部屋から一歩も出ない、ご飯も食べない、という強硬手段を取られた私は、断腸の思いで妹の希望に応えたのだった──。
62
あなたにおすすめの小説
『完璧すぎる令嬢は婚約破棄を歓迎します ~白い結婚のはずが、冷徹公爵に溺愛されるなんて聞いてません~』
鷹 綾
恋愛
「君は完璧すぎる」
その一言で、王太子アルトゥーラから婚約を破棄された令嬢エミーラ。
有能であるがゆえに疎まれ、努力も忠誠も正当に評価されなかった彼女は、
王都を離れ、辺境アンクレイブ公爵領へと向かう。
冷静沈着で冷徹と噂される公爵ゼファーとの関係は、
利害一致による“白い契約結婚”から始まったはずだった。
しかし――
役割を果たし、淡々と成果を積み重ねるエミーラは、
いつしか領政の中枢を支え、領民からも絶大な信頼を得ていく。
一方、
「可愛げ」を求めて彼女を切り捨てた元婚約者と、
癒しだけを与えられた王太子妃候補は、
王宮という現実の中で静かに行き詰まっていき……。
ざまぁは声高に叫ばれない。
復讐も、断罪もない。
あるのは、選ばなかった者が取り残され、
選び続けた者が自然と選ばれていく現実。
これは、
誰かに選ばれることで価値を証明する物語ではない。
自分の居場所を自分で選び、
その先で静かに幸福を掴んだ令嬢の物語。
「完璧すぎる」と捨てられた彼女は、
やがて――
“選ばれ続ける存在”になる。
当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!
朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」
伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。
ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。
「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」
推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい!
特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした!
※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。
サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )
女避けの為の婚約なので卒業したら穏やかに婚約破棄される予定です
くじら
恋愛
「俺の…婚約者のフリをしてくれないか」
身分や肩書きだけで何人もの男性に声を掛ける留学生から逃れる為、彼は私に恋人のふりをしてほしいと言う。
期間は卒業まで。
彼のことが気になっていたので快諾したものの、別れの時は近づいて…。
折角転生したのに、婚約者が好きすぎて困ります!
たぬきち25番
恋愛
ある日私は乙女ゲームのヒロインのライバル令嬢キャメロンとして転生していた。
なんと私は最推しのディラン王子の婚約者として転生したのだ!!
幸せすぎる~~~♡
たとえ振られる運命だとしてもディラン様の笑顔のためにライバル令嬢頑張ります!!
※主人公は婚約者が好きすぎる残念女子です。
※気分転換に笑って頂けたら嬉しく思います。
短めのお話なので毎日更新
※糖度高めなので胸やけにご注意下さい。
※少しだけ塩分も含まれる箇所がございます。
《大変イチャイチャラブラブしてます!! 激甘、溺愛です!! お気を付け下さい!!》
※他サイト様にも公開始めました!
完結 女性に興味が無い侯爵様 私は自由に生きます。
ヴァンドール
恋愛
私は絵を描いて暮らせるならそれだけで幸せ!
そんな私に好都合な相手が。
女性に興味が無く仕事一筋で冷徹と噂の侯爵様との縁談が。 ただ面倒くさい従妹という令嬢がもれなく付いてきました。
捨てられた者同士でくっ付いたら最高のパートナーになりました。捨てた奴らは今更よりを戻そうなんて言ってきますが絶対にごめんです。
亜綺羅もも
恋愛
アニエル・コールドマン様にはニコライド・ドルトムルという婚約者がいた。
だがある日のこと、ニコライドはレイチェル・ヴァーマイズという女性を連れて、アニエルに婚約破棄を言いわたす。
婚約破棄をされたアニエル。
だが婚約破棄をされたのはアニエルだけではなかった。
ニコライドが連れて来たレイチェルもまた、婚約破棄をしていたのだ。
その相手とはレオニードヴァイオルード。
好青年で素敵な男性だ。
婚約破棄された同士のアニエルとレオニードは仲を深めていき、そしてお互いが最高のパートナーだということに気づいていく。
一方、ニコライドとレイチェルはお互いに気が強く、衝突ばかりする毎日。
元の婚約者の方が自分たちに合っていると思い、よりを戻そうと考えるが……
婚約破棄から始まる、ジャガイモ令嬢の優雅な畑生活
松本雀
恋愛
王太子から一方的な婚約破棄の書状を受け取ったその日、エリザベートは呟いた。
「婚約解消ですって?ありがたや~~!」
◆◆◆
殿下、覚えていらっしゃいますか?
あなたが選んだ隣国の姫のことではなく、
――私、侯爵令嬢エリザベートのことを。
あなたに婚約を破棄されて以来、私の人生は見違えるほど実り多くなりましたの。
優雅な所作で鍬を振り、ジャガイモを育て、恋をして。
私のことはご心配なく。土と恋の温もりは、宮廷の冷たい風よりずっと上等ですわ!
前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる