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結婚相手を交換したいと言いますが、あの男はやめた方がいいですよ?

5 意外と良い人?

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──もしかして、今まで天敵だと思っていた男はクルトだったの!?



彼がクルトだとしたら、とにかくまず昨日の妹の非礼について謝罪をしなければならない。

クルトとの面会を希望し時間を空けて貰うのはまた大変な労力であるが、このオークションさえ終われば話し掛けるくらいのチャンスはある。



オークションで競り落とした者達は、必ずオークションが終わった後に開催者と話さなければならないからだ。



私は狙いのものを5個中3個競り落とし、クルトがこの場を去る前に先回りして裏方へと回り込む。

じっとクルトが会場を後にするのを待っていると、幸いにも仮面を外したクルトが向こう側からトコトコと歩いてくるのが見えた。



狸みたいで可愛い、と思えなくもない。

テカって光る肌は張りがあり、ニコニコとした顔はとても温厚そうだ。

少なくとも、私は好感が持てる。



クルトの横には私が天敵だと思っていた、いつも札を上げるクルトの部下と思しき男性が並んで歩いていた。

彼が仮面を外したところを初めて見たのだが、驚く程の眉目秀麗な容姿をしている。



──成る程、だから情報ギルドがイケメンだと間違えたのね。



私はひとり納得しながら、二人が私の前を通り過ぎようとした時に思い切って声を掛けた。



「……あの、すみません。もしかして、ザイック商団のクルト様でいらっしゃいますか?」

私が声を掛ければ、二人は同時にくるりと振り向いた。

私はまっすぐ可愛らしい狸さん……ではなく、親近感を抱かせるクルトに近寄り、深く頭を下げる。



「私はヒラクスナ男爵家の長女、リュシーと申します。昨日は妹のミランダが、折角頂いたお時間を無駄にしてしまい大変申し訳ありませんでした……!」



私が頭を上げると、クルトはいいよ、と言うかのように軽く手を振る。

私はこの反応にホッとした。


しかし、横にいたイケメンは怒りを含んだ低い声で呟く。

「……彼の時間がどれほど貴重か、貴女にはわかっているのか?」

「はい。本来ならば、今この瞬間にも財を成す方です。この私の行動も、無礼な行いをした我が家の人間には二度と時間を割いて頂くことはなく、謝罪の機会さえないと思ったが為の行動です」

「まぁ、本人ではないようだしそんなに責めたら可哀想だよ。それより君、最近オークションや投資で頭角を現している貴族令嬢だと聞いて凄く気になってたんだ」



私は首を捻った。

「いえ、それは私のことではないと思いますが……」

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